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iPhone/iPod touch Game Devシリーズセミナー 第8回レポート

日本のゲーム業界は「Sea Change」できるか?

2010年03月23日 16時00分更新

文● 倉西誠一

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GeoDefenseはタワーディフェンス系のシミュレーションゲーム

 大前さんのパートは、「GeoDefense」(iTunes Storeで見る)を作った方のセッションを追いかけるという内容が中心でした。なので、僕のつぶやきだけを見ると、まるで大前さん御自身のことのように読めてしまうかもしれませんが、違います。

 かなり突っ込んだ部分もあって、最初は「分かんないかも?」と思いましたが、杞憂でした。勉強になりました。なんというか、帰朝講演! という感じ? 楽しかったです。

 また、突っ込んだ内容が多かったためか、かなりの数のRTもいただいた気がします。みなさん、注目されていたのは、以下の2点でしたね。


大前「女性ゲーマーにいかにアプローチするかという方法論が確定してきたという印象がある。ディスクベースからネットベースに販売が移行してきた過程で、女性ゲーマーが増え、目立つ存在になった」

大前「ゲームデザインを科学的に分析して改善する方法論が確定したという印象もある。統計がとれるユーザーコミュニティという武器を得たから。お客さんに喜んでもらえるものは何かということを、統計ベースでちゃんと計測している」

 女性ゲーマーについては……すいません、ちゃんと説明もされて、スライドもあったのですが、僕のメモが中途半端でorz あのスライドだけでも公開されないかなぁと思ったりします。2点目は、ある意味、今回のセミナーの中で、ソーシャル部分に関する結論となったものですね。新さんの御発言にあったことも呼応しています。


「コンシューマより俺たちの方が上だと、Facebookの基調講演は言いたそうだった。コンシューマと比較すると、俺たちは客のデータもとっているし、よほど研究している、と」

 これが根拠なんだなという感じです。そういわれると、確かにそんな気がします。これまで、ゲーム業界はそのものズバリのマーケティングができていなかったということでしょう。


以下、倉西のつぶやき・大前さん御登壇部分

大前「iPhoneのセッションではよく幅さんの隣に座っていたが、どうやらネタはかぶらずに済みそう」

大前「KH2Oは昨年設立しました。フロムソフトウェアをやめてiPhoneのゲームを作ろうと思い、会社を興しました。現在、4人で最初のタイトルを作っています。まだ一本もリリースしていません」

大前「マンゴースパイダーロールは、見た目とは裏腹に実はうまい。エビの天ぷらを巻いたカリフォルニアロールにマンゴーの切り身を乗せ、さらにそのうえに飛び子を乗せているもの」

大前「iPhone GAMES Summitは15セッションあった(2日間で)。コンシューマは技術よりの話が多いのだが、こちらは`こういうことを試みてみた結果、どうだった』というような反省会のようなことをやるものが多かった」

大前「去年はiPhoneのセッションが満席だったと聞いたが、今年はそれほどでもなかった、ソーシャル系のセッションに行こうか悩んだが、ここに張り付いた」

大前「人が多かったのは、UnrealエンジンのiPhone版(対応?)についてのセッション。ただ、内容はやや期待外れだった」

GeoDefense Swarm

大前「GeoDefenseから続編の『同Swarm』(iTunes Storeで見る)に至るサクセスストーリーについてのセッションがあった。このセッションに、すべてのセッションのポイントが要約されていると感じた」

大前「まず、GeoDefenseというアプリをなぜ作ったのか、その目的と手法がはっきりしている。実に戦略的で、よけいなことをせず、ゴールに一直線に向かう。リスクをとらないということも徹底している」

大前「セッションを聞いた結果、iPhoneでアプリを作って儲けるという意味では、これが王道ではないかと感じた。ただ、これは2009年のサクセスストーリーである。2010年、この通りでいいかどうかはわからない」

大前「GeoDefenseを作った目的は、大金がほしい。何百万ドルも稼ぐポテンシャルもある市場で、うまくやれば10万ドル、1万ドルも稼げるが、ほとんどの人は数ドルだろう、と。会場で示されたグラフは非常に極端だった。Doodle JumpとGeoDefense以外は売れていない」

大前「ビジネスはコストと収入のバランスをとることだ。小さなコスト、リスクで、大きな収入を得たい」

大前「コスト、リスクを最小化する。コストとは、開発にかかる時間、スタッフ、ツール等。それに対して、まず小さいチームでやること、目標を設定すること、ツール類等はありものを使うことで最小化を図る」

大前「開発は一人でやることにした、仕事があるから余暇の時間を使って。自分ができるスキルの分析した。また、現金はそんなに持っていないので、投資はMacを買ったくらい」

大前「デザインについては、geo-Styleをパクることにした。これならプログラミングでできるし、自分のアートに関するスキルでも描けて、さらに人気がある」

大前「また、ゲーム性についても、自分が知っているところでやることにした。タワー・ディフェンスが大好きで、よくわかっているので、ここでやることにした。ゲーム性についての目標は、小さく(堅実に?)定めるのがいい」

大前「アプリは作れても、PRなんかできるわけがないし、やりたくないので、自分ではやらない。ただ、必要なものなので、開発にかけた時間の4割程度はPR活動に割くという風に見積もっていた」

大前「セッションでここまでの話を聞いて、余暇でやっていると言いながら、ビジネスとして考えているんだなということを感じた」

大前「アプリの収入の30%は、まずアップルが持っていく。数%はPRエージェンシーに支払う。数%はMacを買うなどの必要経費、残りが利益となるようにしたいとリリース前に考えた」

大前「初日は500、600くらいのダウンロード数だった。PR会社を雇ってやった結果、What'sNewで紹介されてぐんと数字は上がったが、また下がって、今度はスタッフのおすすめに入ってまた上がって安定し、毎日1000本くらいダウンロードされるようになった」

大前「この流れを見て言えると、App Storeのスタッフのレコメンドがやはり強いようだ。また、ホリディ対策も有効。特にクリスマスギフトのタイミングが重要なようだ」

大前「結果として、アップルの取り分を除いて、約2270万円稼いだ。PR会社にはこのうちの6%を支払い、Macの値段は2000ドル(約18万円)程度。残りはすべて利益になった」

大前「PRエージェンシーとは出来高で契約していたのがよかった」

大前「重要なのは、デザインとPRだ。目を引くデザインでPRがメディアを引っぱり、メディアに載ればアップルが反応し、アップルがPRしてくれればアプリが売れてお金になる。たくさん儲かってよかったよかったという話」

大前「GeoDefenseはものすごくうまくいった。では、続編(GeoDefense Swarm)はどうするか? 現金はある、GeoDefenseのファンはいて、メディアにも興味を持ってもらっている」

大前「90%は再利用で作ろうと決めた。また、続編は早く投入する必要があるので、時間をお金で買おうとも考え、デザイナーを一人雇った。また、ゲーム性を確認するために一人、スタッフを雇った」

大前「PRは熱狂的なファンにどーんと大きく宣伝して、その人たちを盛り上げ、一気に売上を上げようという作戦を考えた。その通り、GeoDefense Swarmはリリース時にどーんといって、どーんと落ちた。ただ、好きだった人たちにきちんとリーチした結果、大きな収益を上げた」

大前「iPoneアプリで成功するのに一番最初に必要なのは、面白くて売れるゲームを作りましょうということ。それ以外のすべての要素は、それに対するかけ算の変数である。ゲームにゼロではない価値があれば、かけ算の結果は出る」

大前「iPhoneアプリで成功するための秘訣(?)。(1)2万本売りたいか、20万本売りたいかでやることは明確に変わる。これを意識しておこう。(2)自分の強みや弱みをしっかり評価、分析し、大きなリスクをとってまで始めることはないようにしよう」

大前「(3)チームを作れ。開発だけでなく、ビジネス面もカバーするチームを作るのがよい。(4)自分の顧客に集中する。その人たちのためにゲームをデザインする。(5)すでに公開されているプログラムを使おう」

大前「PRはTriplePointというエージェンシーが担当した。余暇でやっているような人間の企画を出来高で受けたというのは、珍しい例だろう」

大前「セッションの最後は、稼いだお金で彼女と極楽な感じで旅行に出ている写真だった。君たちもこうなりたいだろう? という感じで、セッションはしめくくられた」


この後の大前さんのお話について、メモは残っているのですが、うまくつながりません。なので、断片的なものになります。


大前「メインカンファレンスでは、iPhone関連はほとんど見当たらなかった。ソーシャル&オンラインがメインでも20くらい。技術系のセミナーがかなり減り、ビジネスとゲームデザインの話が充実してきていたという印象がある。家庭用現行機の技術論は出切った印象がある」

大前「パワーを注ぎたいポイントが変わってきたのではないか。例えば、大型のゲームというビジネスモデルから脱却したいなど。大きな予算、売上をコントロールする話が、去年は多かったが、今は小さく産んで大きく育てるための方法論が模索されている」

大前「これも、来年には成功事例があがってくるのではないか。去年はiPhoneが、まさにそうだった」

大前「女性ゲーマーにいかにアプローチするかという方法論が確定してきたという印象がある。ディスクベースからネットベースに販売が移行してきた過程で、女性ゲーマーが増え、目立つ存在になった」

大前「ソーシャルなものであれば、ユーザーに統計的にアプローチもできる。ディスクベースのころは、そのアプローチができずに四苦八苦していた」

大前「ゲームデザインを科学的に分析して改善する方法論が確定したという印象もある。統計がとれるユーザーコミュニティという武器を得たから。お客さんに喜んでもらえるものはなにかということを、統計ベースでちゃんと計測している」

大前「iPhone(アプリ)ビジネスのやり方は確定されたのではないか。セッションに人が来ないのは、iPhoneアプリでは儲からないからではなく、儲け方がわかってしまったからではないか。コンシューマも手法が整理されているので、粛々と行われている印象がある」

大前「ソーシャル&オンラインの分野は、まだ、それが確定していないということなのではないだろうか。まだ、混沌としている」

大前「面白いゲームを作り、顧客をいかに作り、キープするかということが、iPhoneアプリに限らず、ゲームビジネス全体の成功条件となっているとなっている。これは既存のゲームの販売戦略と基本は変わらない。小手先の要素に惑わされずに図太くやっていきましょう」

大前さん、降壇。新さん、御挨拶「アメリカでは、デベロッパーがメディアにリリースを直接送っても載せてくれない。PRエージェンシーを使う必要がある。コンシューマでは、およそ1タイトル5万ドルが目安」

「科学的に分析するということが、今年のキーワードだったと思う。どんどん分析して、それをお金にしていくんだということ。それが分かっているかどうかで、大きな差が出ている。そうした点で、日本のメーカーは周回遅れになっているという認識がある」

「このシリーズは、また2、3ヵ月後に再開すると思います。講演者探しに苦労しそうですが」イベント終了

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