数学ベイビーからスプツニ子の誕生まで
―― じゃ、ここからスプ子さんの話に移りましょう。ご両親も数学者なんですよね?
スプ子 はい。二人はマンチェスターで知りあったんですよ。同じ数学の研究をしていて、論文を二人で書きつつ、愛を育み、そのまま私を持って帰ったと。
―― じゃあ生まれたのは日本?
スプ子 うん、東京。数学ベイビーなんですよ。身近に数学があったから、子供の頃は将来数学者になるって思ってたんです。数学大会とかに出たりして。
―― なんですかそれ?
スプ子 日本のアメリカンスクールや、インターナショナルスクール対抗で競争をするんです。5回出たんですけど、全部優勝して。
―― げっ……。
スプ子 高校の3年をやらずに飛び級して、ロンドン大学のインペリアル・カレッジ※の数学部に入りました。大学を卒業したのも二十歳で、ちょっと早かったんですけど。
※ インペリアルカレッジ : 現在はロンドン大学から離脱。略称はImperial College London。正式名称は Imperial College of Science, Technology and Medicine
―― それ普通に天才って言いませんか?
スプ子 数学っ子だったんです。高校はつまらなかったので、早く終わらせて好きなことをやろうと。
―― まいったなあ。なんだか僕は緊張してきましたが。
スプ子 でも、高校を卒業して変になっちゃうんです。親元を離れてロンドンに行くと、変なものも見るし、変な音楽も聴くし、変な人にも会うしで、だんだん変になってくるんですよ。
―― 変になってきた兆候はどの辺で自覚しましたか?
スプ子 もともと変だったんですけどね。高校生の頃には、アーティストになりたいと思ってました。でも親は数学者だったし、数学もできてしまったので、美大に行く、アートをやるという選択肢はなかったんです。ただロンドンへ行くと独りになるし、その変な部分が開花しちゃうわけです。「私はアートしかない!」って。それでスプツニ子が誕生したんです。
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