いまやブロードバンドといえば「光」というのが定説だが、コストパフォーマンスを考えれば、ADSLも捨てがたい。電話回線さえあれば利用できるADSLの手軽さは、企業にとって意外と重宝できるサービスだ。
ブロードバンドの立役者
しかし、契約数は減少傾向
2000年初頭に一世を風靡したADSLは、日本のブロードバンドの推進役といえる。従来のアナログ電話が利用する周波数帯の枠を取り去り、銅線の伝送能力を最大限にまで利用するADSLは、今までと異なるレベルのインターネットスピードを実現した。低価格なYahoo! BB登場や伝送技術の改良による速度の向上(最終的には理論値50Mbpsまで行った)、そしてサービス競争による料金の低廉化などを経て、2006年には1452万契約数を実現した(総務省 総合通信基盤局調べ)。
しかし、その後のFTTHの台頭により、DSLの加入者数自体は減少傾向が続いている。2008年の9月にはFTTHとDSLの加入者数が逆転し、DSLの加入者は純減している状態だ。もとより、DSLはFTTHが本格的に普及する前の「つなぎ」と考えられていた経緯もあるので、致し方ないところだろう。
とはいえ、DSLのメリットは決して消えたわけではない。
優れたコストパフォーマンス
再評価されるADSL
まず大きいのが利用料金だ。黎明期からADSLサービスのホールセールを行なっているイー・アクセスは「本当に光回線は必要ですか?」というサイトを展開し、光ファイバとADSLのコストや料金を比較している。
これを見ると、確かにADSLの月額利用料は3000円程度だが、FTTHになると7000円近くに跳ね上がり、倍の開きがあることがわかる。まして12MbpsのADSLであれば、2年間で約11万円もお得になるとの試算も載っている。最近、よく目に付くマイクロソフトによる「BBキャンペーン for Windows Live」であれば、なんと12Mbpsながら月額1480円で利用できる。このメリットはコスト削減時代に再評価すべきポイントといえる。
また、FTTHに比べて、導入までの期間が短く、大掛かりな工事が不要なため、移転やレイアウト変更も安価に済む。最近、台頭しているワイヤレスブロードバンドに比べると、安定した通信と物理的な接続の安定感といったメリットもある。
もちろん、光ファイバには高速・大容量という特徴があるが、ご存じのとおり上流になると複数の加入者と共有することになるのはADSLと同じ。特に集合住宅で共用する場合は、帯域共有の影響が特に大きくなる。そのため、必ずしも体感的に劇的な差が出るとはいいにくい。
こうした現状についてイー・アクセスは「(ADSLサービスの)加入者数は前年と比較すると微減していますが、昨今の経済環境により安価なADSLが見直されており、解約率が低下傾向にあるなど根強い需要があります」(広報部)とコメントしている。
実際の使い道としては、やはり光ファイバのバックアップ回線として利用する場合が多い。確かにADSL自体はスループットや安定性という点では光ファイバに劣るため、メインは光ファイバを据え、バックアップとして広帯域かつ低価格なADSLを使うというのは非常に理にかなった使い方といえる。法人向けのADSLで高いシェアを誇っていた旧アッカ・ネットワークスを吸収したこともあり、現在のイー・アクセスは、こうした光回線のバックアップ回線でADSLを使っているユーザーがかなり存在する。「昨今の経済環境により、『専用線』から『光+ADSL(バックアップ回線)』に乗り換える場合も多いようです」(広報部)という状況だ。今や多くのルーターやファイアウォールが、ブロードバンド回線の冗長化に対応しているので、ADSLのバックアップ利用も容易に行なえる。
このようにコスト削減を考えるのであれば、ADSLの再評価はありだ。最新の料金プランをチェックし、導入を検討すべきであろう。
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