共通性を持たせたレンズユニットの絵作り
――現在のラインナップでもA12 50mmとS10 24-72mmでは、それぞれAPS-Cと1/1.7型サイズという相当大きさの違うイメージセンサーを採用しています。レンズの違いがあるにせよ、この2つを「GXR」というカメラとしての共通性を持った絵作りにまとめあげるのは大変だったのでは?
牧:共通性は意識して持たせるようにしました。
清水:GXR自体の絵作りのコンセプトは確立していました。ある指標があり、それに合わせてイメージセンサーの違いがでないように合わせ込んでいきました。
――現在のラインナップのなかにコンシューマ寄りの「CX」からGR DIGITALのようなプロ向けを意識したものまであります。それぞれ並べてみるとかなり違いが見られますがGXRはどちらの方向の絵作りなのですか?
清水:GR DIGITALのレンズ特性はCXを遥かに凌いでいます。その特性を活かすようにノイズリダクションのかけ方や彩度などもナチュラルな方向の絵作りになっています。GXRもそれを受け継ぐ形の絵作りの方向性になっています。
福井:CXでは印象に残りやすいようにメリハリをつけた絵作りになっています。それに対してGR DIGITALではできるだけ見たままの自然な絵作りをしています。基本的にはGXRも同じ考え方でやっています。
しかしGXRで若干異なるのは、デジタル一眼レフのイメージをもって使用するユーザーもいるだろうと想定し、他社のデジタル一眼レフの絵作りなども参考にしてGR DIGITALとは少し変えています。しかし基本的にはGR DIGITALと同じ路線になっています。
――カメラユニット個別の話を伺います。S10 24-72mmは「GX200」のレンズユニットに「GR DIGITAL III」の1/1.7型イメージセンサーを組み合わせたものですか?
福井:基本的にレンズはGX200と共通のものです。ただGX200ではノイズの低減等の要望がありました。そういった部分を改善すると言う意味でイメージセンサーや画像処理エンジンを変更したものがS10 24-72mmとなります。
今回は画素数を追いかけると言うわけではなくイメージセンサーの素子そのものの良さを活かすような開発を行ないました。
――たしかにコンシューマー向けに1000万画素以上あっても使用用途によってはオーバースペックになってしまいますね。
福井:われわれはGR DIGITALを発表した当時から、高画素だけが画質を決める要素ではないと思っていました。センサーの製造メーカーとそのようなやりとりをしていて、今の時代になってユーザーの意識や製造メーカーの意識も段々変わってきているのではと思っています。
――もう1つのカメラユニットA12 50mmではAPS-Cサイズのイメージセンサーを搭載しています。このレンズとイメージセンサーの組み合わせになった経緯は?
福井:APS-Cサイズのセンサーを選んだ経緯は、今まで使用してこなかった大型のセンサーを使用してみたいというのがあり、検討していくなかでAPS-Cが適当ではないかということになりました。
――従来の1/1.7型サイズからAPS-Cサイズの間には4/3インチサイズのセンサーなどもありますが、検討はされましたか?
福井:検討はしました。しかし最終的には画質が重要で、A12の単焦点レンズと今までよりも大型のセンサーを何種類か組み合わせたとき、どの組み合わせがわれわれが提供すべき画質を持ったものになるのかと評価して、最終的にAPS-Cサイズとの組み合わせが一番だろうという判断になりました。
今回のこのカメラユニットは特にレンズ性能にこだわりました。絞り開放で周辺部分でもほとんど歪みのない画質を持っています。言うなればデジタル的な要素、例えばレンズ以外でも画像を作っていけるというところもありますが、GR LENSを搭載したカメラユニットに関してはできるだけそういう部分は排除して、よりアナログ的なレンズ性能を重視した絵作りをしています。
――A12 50mmはAFの反応速度が遅く感じるのですが?
牧:イメージセンサーが大きく、レンズを繰り出す量も多いため、それだけ制御に時間がかかります。その結果、S10 24-72mmと比べてしまうと遅くなってしまいます。
福井:AFの構造も全体繰り出しという構造をとっているので、それも遅くなる要素ではあります。しかし、インナーフォーカスにするよりも画質的には向上するので今回は画質を優先しようということでこのような構成になりました。
牧:マクロレンズとして、至近距離での撮影に対応したという事情もあります。7cmまで寄ったとき、レンズの繰り出し量も相当なものになるのでその分時間もかかってしまいます。
――最短撮影距離だけを比較するとS10 24-72mmのほうは1cmまで近寄れるため、拡大率的にも上になってしまいます。カタログスペックだけで見比べたとき、A12 50mmの存在が薄くなってしまうように感じるのですが。
福井:S10 24-72mmでも十分なマクロ性能は持っているのですが、A12 50mmを使用することで背景がきれいにボケた写真や、背景から対象が浮いたような写真が撮れます。今までとはまるっきり違った世界を見てもらいたいと思います。
またその逆に、いい写真は大きいイメージセンサーのものじゃないとダメだと思っているユーザーに、ストリートスナップなどで小さいサイズのS10 24-72mmを使用してもらうことで、軽快さや撮られる側の人物の自然な表情が撮りやすいことなどに気づいてもらいたい。
というような思いもあり、違う性質のものをそろえることでユーザー自身が気づいていなかった写真のスタイルを広げてもらう狙いもあり、2つの性質の異なるカメラユニットをラインナップしました。
清水:A12 50mmのカメラユニットはAPS-Cの撮像面とレンズの位置が固定されているため、メカ的ながたつきが無い状態で、最適なポイントで画質のチューニングがされていると言えます。
――先日、新しいカメラユニットの発表がありましたが、特にAPS-Cサイズのセンサーと組み合わせた28mmの単焦点カメラユニットには興味が尽きません。
福井:やはり要望の強い28mmの焦点距離を次にやろうということになりました。
――APS-CサイズのセンサーはA12 50mmと同じものを使用されるのですか?
福井:そのときの状況によって変わってしまいます。
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