SVG表示はFirefoxよりも高速に？
JavaScriptの実行速度も向上させる。IE9のJavaScriptエンジンは、「Chakra」というコードネームを持つ。また、JavaScriptなどから操作するDOM(Document Objet Model。ウェブブラウザーや表示されているページをオブジェクトとしてアクセスするための仕様)も、高速に処理ができるようにする。
こうした高速化や機能追加により、複雑なAjaxを使わずにHTML5だけで、高品質で高速なウェブアプリケーションの開発が可能になるという。デモでは、JavaScriptで記述した物理シミュレーションを使い、SVGで描画した球が重力に従って落ちるグラフィックスを見せた。同じコード(SVG、HTML、JavaScript)を同時にFirefoxでも動かして、IE9のほうが高速であることを見せた。
GPUによる高速処理のデモ。JavaScriptで物理シミュレーションを行ない、IEのロゴの形に並べた円をSVGで表示、重力に従って落ちる様子を見せた。写真左のIE9では、ほとんどの円が落ちたのに対して、右のFirefoxは、まだ多くの円が落ちきっておらず、IEの形が残る
ただし、IE9自体はまだ開発途上にあり、たとえば、CSSの「Acid3テスト」も、100点中55点までしか到達しない。また、HTML5の仕様もまだドラフト状態であるため、しばらくは定期的にプレビュー版を公開するという(HTML5は2012年3月までに正式勧告する予定)。またSVGやCSS3、HTML5に関しては、互換性を高めるためのテスト仕様をW3Cに提案するとしている。
現時点ではAcid3テストも55までしか通過できない
IE9はFirefoxやGoogle Chrome、Operaなど、最近の高速化したウェブブラウザーに対するマイクロソフトの回答となる。しかし、対象としているHTML5が現時点ではドラフト状態であり、各ウェブブラウザーも対応を進めているところだ。HTML5の仕様が固まり始めるまでは、このレースは一層激しさを増していきそうだ。
