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創業当初は実はFortinetではなかった!?

ケン・ジーCEOが語ったFortinetのぶれなかった10年

2010年03月16日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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3月15日、UTM市場のトップを走るフォーティネットの創業者CEOであるケン・ジー氏とのインタビューが実現した。創業から10年を経た同社のこれまでを振り返ってもらうとともに、この時期にIPOを実施した狙いや経営ポリシーを聞くことができた。

10年間同じ目標を持ってきた

 複数のセキュリティの脅威を1台のハードウェアで遮断するUTMの市場を切り拓いてきたのが、ご存じフォーティネットだ。当初、「アンチウイルスファイアウォール」といわれニッチだった製品ジャンルだが、現在ではファイアウォールを置き換える本命のゲートウェイセキュリティ製品として、市場を大きく変えつつある。このフォーティネットを創業したのが、ネットスクリーンでCEOも務めたケン・ジー(Ken Xie)氏である。

米フォーティネット CEOケン・ジー氏。物静かにフォーティネットの技術の優位性を語る

 市場を拓いてきたフォーティネットの戦略は、シンプルで特徴的だ。1つ目はやはり汎用CPU+ソフトウェアではなく、ASICという半導体をベースにUTMを作り込んでいる点が挙げられる。「FortiGateの特徴はASICで高いパフォーマンスを確保すること。1つのASICを開発するのに、大きな投資と2年近い年月をかけている」(ジー氏)とのことで、FPGAやソフトウェアと異なり、修正のできないASICだけに実に手間ひまをかけている。しかし、その結果マルチコアのCPUを振り回す他社製品に比べ、ASIC分のパフォーマンスを稼いでいるわけだ。

 2つ目は他社からOEMされたエンジンではなく、ASICからソフトウェア、サービスに至るまで完全に自社開発を貫いている点だ。「現在、1250人の従業員のうち、600人がR&Dに関わっており、そのうち400人がエンジニア。彼らは新しい機能を作り続けている。また、24時間インターネットの脅威を監視する体制も確立している」(ジー氏)。こうした体制により、年々変わっていくセキュリティの動向や脅威について行けるという。まさに技術指向の企業体質自体が競争力の源泉のようだ。

 また、新製品や新ASICが登場するたびにアピールされるスループットも同社のこだわりの1つだ。なぜそこまでパフォーマンスにフォーカスするのか? 「UTMはネットワークに挟み込んでインラインで利用するものだから、遅くてはいけない。しかもトラフィックはどんどん増えていくので、パフォーマンスは落とせない」とジー氏は述べる。

最新のFortiGate-1240Bでも40Gbpsというファイアウォールスループットを実現している

 もちろん、セキュリティアプライアンスだけに検出精度には力を入れている。「私たちのUTMはパフォーマンス、セキュリティ、そして品質などあらゆる点が評価されている。また、ICSAなどの第三者機関によって、セキュリティ強度の認定も受けている。オープンソース系のソフトウェアを用いている他のUTMベンダーとの大きな差別化は、こうしたところにも現れていると思う」(ジー氏)とのこと。

 ASICベースのアプライアンス、自社開発体制、パフォーマンスへのこだわり、そして妥協のない検出精度。こうした戦略や製品コンセプトは創業以来、変わっていない。「グローバルでビジネスを成長させるためには、オープンなコミュニケーションと結果を重視したチームが重要だ。そして、私たちは長い間、同じ目標に向かって進んでいる。1つのことを長く続けると、その道を極められる」と、ぶれない経営の進め方についてジー氏はこう語った。

最初は4つの機能しかなかった

 FortiGateの第一弾が投入されたのは、今から8年前の2002年。「日本で最初に製品を発表したときは、ファイアウォール、VPN、IPS、アンチウイルスの4つの機能しかなく、とてもパーフェクトと呼べる製品ではなかった」とジー氏は振り返る。しかし、7年後の現在、ジー氏の息子とも呼べる「FortiGate」はすでに10の機能を持ち、WAN高速化やアプリケーションファイアウォールまで統合しつつある。そして、DBセキュリティやWAFなど新しい子どもたちも順調に育っている。

 特にアプリケーションファイアウォールの分野は、昨今のUTMやセキュリティ市場ではホットな領域だ。これはFacebookやSkype、Salesforceなど同じポートを用いる異なるアプリケーションを識別・制御する技術。これに関しては「アプリケーションファイアウォールは創業当初からフォーカスしてました。それが証拠にFortinetも創業当初は、実はAppSecureという名前だったのです」(ジー氏)という秘話を明かしてくれた。

 そして、2009年12月。フォーティネットはいよいよIPO(新規株式公開)にこぎつけた。長い不況の最中、シリコンバレーでは約2年ぶりのIPOになるが、「市場で資金を調達するのが目的ではない。あくまで顧客からの信頼を獲得するためのもの」とジー氏は語る。2010年の具体的な製品計画は明らかにしなかったが、「最新のセキュリティ技術を、とにかくいち早く製品に取り入れていく」(ジー氏)とのこと。大きな問題となったガンブラーもいち早くブロックしたとのことで、今後もその力量に期待できそうだ。

インタビューに参加したケン・ジー氏、ワールドワイド バイスプレジデントのパトリス・ペルシェ氏(中央)、日本法人社長の新免泰幸氏(右)

 仮想化、クラウドコンピューティング、グリーンIT、PCI DSSなど、業界はいろいろ変化しているが、ジー氏は流行に巻き込まれていないようだ。(今のところ)パフォーマンスを落としてまで仮想アプライアンスを提供する計画もないようだし、IPOで得たキャッシュで大型の企業買収を進ようとするつもりでもない。大きく変わるセキュリティの業界のなか、腰を据えたビジネスが同社を成功に導いているようだ。

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