このページの本文へ

SEO成功で売り上げ減「せんべい」をキーワード分析 (2/3)

2010年03月16日 11時00分更新

文●Web Professional編集部

  • この記事をはてなブックマークに追加
本文印刷

「せんべい」に関東と関西の違い

 「せんべい」は上位表示されると売り上げが減る、特殊なキーワードなのだろうか? グーグルのキーワード調査ツールGoogle Insight for Searchで理由を調べてみた。

Google Insight for Search

「せんべい」で検索しているのは東北地方が多い

 Googleの検索ボリュームでいうと、「せんべい」が82に対して「煎餅」は25。ユーザーは「せんべい」で検索することが多く、その意味で「せんべい浪漫」というサイト名は正解だ。また、「せんべい」に対して「南部せんべい」や「草加せんべい」、「せんべいや」などのキーワードが関連していることから、ユーザーは購入目的で「せんべい」を検索していることがわかる。

 注目なのは地域別の検索ボリュームだ。「せんべい」を検索している地域は、青森(1位)、岩手(2位)、山形(3位)、新潟(5位)、秋田(6位)と東北地方が並ぶ一方、東京、大阪、神奈川などの都市部は上位10件に現れない。また、「せんべい」を検索しているのはどちらかというと東日本が多く、西日本では三重(4位)が目立つくらい。SEO成功で売り上げが減った理由はどうやらこの辺りにありそうだ。

 実は、今屋の「せんべい」はおもに関西で作られている「甘味せんべい」なのだ。材料は小麦粉、砂糖、卵などで、クッキーに近い。もともと中国から伝わった「煎餅」は、小麦粉に水を加えて練り、鉄板で焼く菓子の総称であり、甘味せんべいは、中国伝来の煎餅を受け継いでいる。

 一方、草加せんべいや歌舞伎揚げなど、うるち米を原料に、醤油や塩で味付けされる米菓せんべいは、古くから関東で作られている。同じ「せんべい」でも、関東と関西では指し示すものの意味が異なるわけだ。今屋のネットショップでSEOの成功が売り上げ減をもたらした原因も、関東と関西の違いと解釈できるだろう。

 まず、今屋で製造・販売されている柴舟などのせんべいは、関西に多い甘味せんべいの一種だ。ところが、Webで「せんべい」を検索しているのは米所の東北地方を中心に東日本が多く、検索されている「せいべい」は「米菓せんべい」のことだと考えられる。SEOで「せんべい」に対して上位表示されても、米菓せんべいを探しているユーザーにとって、今屋の甘味せんべいは目的とは異なる。SEOの成功が売り上げ減をもたらしたのは、せっかく上位に表示されても、今屋の「せんべい」は、ユーザーが求める「せんべい」ではなかったから、と考えられるだろう。

 では、「せんべい」で2ページ目に表示されていたときはなぜ注文があったのだろうか? 「せんべい」で検索しても米菓せんべいばかりが出てきて、1ページ目に甘味せんべいは見あたらないとき、2ページ目に今屋の甘味せんべいが出てきたら、「やっとあった!」というのが関西で生まれ育ったユーザーの気持ちだろう。今屋のネットショップが2ページ目にあったときに注文があったのは、こういうユーザーの目的を達成できたから、と考えられる。

 しかし、関西のユーザーも「せんべい」(甘味せんべいの意味で)をWebで探すことはある。「せんべい」で上位表示されたなら、関西のユーザーからの注文が増えてもよさそうなのに、注文がなくなったのはなぜだろうか? この場合も関西のユーザーの気持ちを考えてみる。甘味せんべいを探すために「せんべい」で検索したとき、米菓せんべいばかりが出てきたら、「醤油味のお米の菓子は『おかき』や」と思い、別の機会に米菓せんべいを探すときは「おかき」を使うように学習するだろう。試しにGoogle Insight for Searchで「おかき」の検索ボリュームを調べたのが次の画面だ。

「おかき」で検索しているのは近畿地方が多い

「おかき」で検索しているのは近畿地方が多い


 案の定、検索ボリュームが多いのは奈良(1位)、福井(2位)、京都(3位)、兵庫(4位)、大阪(5位)など西日本が中心で、関東地方では栃木(10位)だけが10位以内に入る。検索ボリュームの比率は「せんべい」が82に対して「おかき」が17で少ないが、「あられ」を検索しているのも関西が多いことから、どうやら関西のネットユーザーは「せんべい」、「あられ」、「おかき」を使い分けているとわかる。

Web Professionalトップへ

この記事の編集者は以下の記事をオススメしています