このページの本文へ

前へ 1 2 3 4 5 次へ

情報処理学会 創立50周年記念全国大会に行ってきた

生みの親が東大で語った「ニコニコ動画」と「初音ミク」の全て

2010年03月11日 20時00分更新

文● 榎本 統太(@t2enonu)

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

パネルディスカッション#2
CGMでコンテンツビジネスは可能か?

後藤 濱野さんが主張している「N次創作を前提したコンテンツプラットフォーム」について説明してほしい。

濱野 「マイクロペイメント」と呼ばれる、「ネット上のデジタルコンテンツを買うために直接お金をやり取りする仕組み」が必要だと20年前から議論されてきたが、まだ実現していない。しかし、今その実現に一番近い場所にあるのがニコニコ動画だろう。

 ニコニ・コモンズのツリー(引用関係を明示する機能)で各素材の貢献度を定量化し、「誰にどれだけ払えばいいか」が計算できれば、ニコニコ動画のプラットフォーム上だけでN次創作を前提とした直接課金や分配が可能になるのではないか。世界的にも類を見ない仕組みになるはず。

「二次創作の二次創作」(N次創作)の各段階に応じて作品の人気度を数値化することで、その「貢献度」に応じた課金が出来るのではないかと濱野氏

後藤 ニコニコ動画のマネタイズとマイクロペイメントの状況は?

戀塚 マネタイズそのものはプレミアム(有料)会員からの課金でやっていける形になってきたかな、と思う。創作のプラットフォームとして考えた場合、プロとアマチュアが完全に混在する方向に進むとしたら、そこにお金の流れを作らなくてはいけない。そうなると、「段階的」ではなく「滑らか」なマイクロペイメントの仕組みが必要になると思う。

後藤 ピアプロもいろいろ考えているのでは?

伊藤 我々は2つの世界に住んでいる。「感謝」や「恩」などで成り立つ世界と、お金を媒介とする「経済」の世界。昔から芸術家の間では「お金を取るとやましいから寄付する」とか、そういうことは議論されていた。

 お金の出し入れだけが作品に対するリスペクトの方法か、というと、違うと感じる。感謝とかコミュニケーションとか、そういう接点でも満足できる。どうしたら違和感なく感謝の気持ちを伝えることができるかを常に考えている。

マイクロペイメントの仕組みをどうやって取り入れるべきかも話し合われた

後藤 VOCALOIDは(ヤマハにとって)直接的ではないにせよ、実際に大きなお金を生んでいる事実があると思うが。

剣持 2つの観点がある。ひとつは自分自身も「祭」に参加するユーザーとして、コンテンツを構成する要素それぞれがわかりやすい形で分離して、使いやすく準備されている仕組みがあれば便利だし、必要だと思う。

 もうひとつは、VOCALOIDのVSQファイル(歌声データ)がどうなっているか、どこをどう直せばどうなるかがわかる仕組みがあるといいと思う。私たちは楽器を売る立場なので、そういうツールを使っていただく方向を考えている。

議論はこれから「オフライン」で続いていく

 いよいよ本題の「CGMの未来」を語ろう……というところで延長した時間も尽き、今後の議論は残念ながら「オフラインで」行なわれることに。会場の撤収作業中も各パネリストの周りには参加者が集まり、熱く語り合う様子が見られた。

 CGMカルチャーのキーマンが一堂に会した今回のシンポジウムは、日々進化する各サービス/コンテンツの歴史と現在の姿をはじめて整理・比較して「これがCGMだ」という全体像を示してみせた。「情報処理学会」というアカデミックな場でCGMが取り上げられたことの意義は大きい。このシンポジウムをきっかけに、CGMの学術的な研究や産学連携も進んでいくことだろう。

 ニコニコ生放送とUstreamでの視聴者も合わせて6000人以上が「参加」したこのシンポジウムは、閉会後の今もネット上で活発な情報交換が続いている。各パネリストが発表したスライドや、当日配信された動画のアーカイブも整備が進み、継続的な議論を進めるための資料は揃っている。Twitterのハッシュタグ「#cgmgenzaimirai」であなたもこの熱気を体験し、議論に参加しよう。「CGMの未来」は、あなた自身がこれから作っていく「未来」なのだ。

登壇者からそれぞれの「未来」に向けたコメント

剣持 VOCALOIDの品質をもっともっとよくしていきたい。

伊藤 CGMは地方の会社や個人にとっては非常にいい傾向。東京に来られなくてもいい。コンテンツの多様化によって、作る側にやさしい世界ができればなと思う。

戀塚 ニコニコ動画をたまたま作ってしまって、いつでも「祭」ですごく楽しい状況になっている。こういうものをもっと育てていきたい。

濱野 「ミクが喋る」ことに興味がある。VOCALOIDが自分の代わりにどんどん喋ってくれるようになるといい。

後藤 CGMはスポーツや料理のように「誰でもできる」ものになってほしい。普通の人がスポーツや料理をどれだけ楽しんでも、プロには影響しない。コンテンツ作りを楽しめるような環境を考えたい。


前へ 1 2 3 4 5 次へ

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン