久しぶりに更新されたAtermのフラッグシップ機
同社のブロードバンドルーターAtermシリーズには、Gigabit Ethernetを搭載し、無線LAN規格11n/a(5GHz帯)と11n/g/b(2.4GHz帯)に対応したシリーズWR8500Nがあった。WR8700Nは久しぶりに更新されるAtermシリーズの最上位機種である。
今回最上位の座を譲ったWR8500Nも5GHz帯と2.4GHz帯の両方に対応している。といっても、同時に使える無線周波数は5GHz帯か2.4GHz帯のどちらか一方であった。
一方、WR8700Nは同時に11n/aと11n/g/b全ての通信ができる。まさに無線LAN規格が一台に詰め込まれた、全部入りワイヤレスブロードバンドルーターに仕上げられている。
外部インターフェースは昨年発売されたWR8150Nと同じように、有線LANポートはWAN用に1つ、LAN用に4つのポートを持つ。1000BASE-TXとなり、100Mbps超のブロードバンド回線に対応した仕様になっている。
そのほかWR8300Nで新たに加わった「ECOモード」も搭載されECOボタンを押すことで省エネできる。WR8700Nの場合、無線LANを停止し、有線LANの通信速度を100Mbpsに制限、さらにLED(POWERランプを除く)も消灯して、消費電力を最大54%カットできる。
またWAN側回線に合わせてルータの動作モードを自動設定する「らくらくネットスタート」、無線LAN子機との接続を自動設定する「らくらく無線スタート」、Wi-Fi標準のWPSにも対応しており、無線LAN端末側の準備ができたら本体のらくらくボタンを押すことで簡単に無線LANがつながるようになる。
これらの機能はAtermシリーズで古くから搭載されている機能で、無線LAN機器に詳しくない一般ユーザでも簡単に接続できるようになっている。
11n/aと11n/g/b同時利用
WR8700Nの最大の特徴は11n/aと11n/g/b同時利用である。下の画像をみていただけるとわかるのだが、4つのSSIDが見える。11n/aと11n/g/bのそれぞれでマルチSSIDでの利用ができるのである。初期値のSSIDでは最後が「A」で終わっているのが11n(5GHzデュアルチャネル)、「AW」で終わっているのが11a、「G」で終わっているのが11n(2.4GHzデュアルチャネル)、「GW」で終わっているのが11gである。
本体のLEDには「AIR1」と「AIR2」という無線周波数の状態を示すLEDがあり、AIR1が2.4GHz帯、AIR2が5GHz帯の状態を表示している。緑点灯が通信可能を意味し、緑色の早い点滅で通信データ送受信を表している。
今回WR8700Nの特徴として11n/aと11n/g/bの同時利用を挙げているが、一般家庭で利用されている多くの無線LANルータは11n/g/b対応である。「これでも特に不便を感じない」という読者がいるかもしれない。
しかし11n/g/b で使用している2.4GHz帯では、無線LANが通信に使用する20MHzという周波数範囲を最大4つまでしかとることができない。11nのデュアルチャネルを利用した場合4つの内の2つが使われるため、空きチャネルは2つという具合に、実は余裕がない。
そのため自宅の周辺で無線LANを利用している家庭があれば、少なからず使用している周波数が重なり干渉しているのである。無線通信における干渉とは、大勢が話している中で会話するようなもので、情報が聞き取りにくい状態となる。
人であれば声を大きくして「ゆっくり」話すことでなんとか会話をすることができる。これが無線LANの場合も同じで、通信速度を自動的に低速に落としてデータの送受信を行う「自動フォールバック」という機能が働く。つまり雑音のないクリアな環境であれば、さらに通信速度が上げられるのである。
ブロードバンドインターネットが普及し、「ひかりTV」「アクトビラ」「NHKオンデマンド」といったネット経由の放送配信サービスの立ち上がっている。家庭でもネット経由の放送を受信する機会が多くなっているのではないかと思う。
ハイビジョン放送では大量の動画データを一定の速度を下回ることなく受信する必要があるので、2.4GHz帯では電波の干渉という不安要素がある。
これは無線LANだけではない。2.4GHz帯はISMバンドと呼ばれる周波数帯で電子レンジなどにも使われている。そのため、電子レンジを使うと2.4GHz帯のほぼ全域に干渉する。
実際筆者の家でのことだが、電子レンジを使うととたんにワイヤレスマウスの動作がおかしくなる。ワイヤレスマウスも2.4GHz帯を使っているため影響を受けているのである。無線LANの11n/g/bだけ無事というのは考えにくい。
電波の干渉を受けて通信速度が低下すると、それは映像の途切れや、コマ落ちという現象につながる。そこで映像などの送受信には5GHzの利用が考えられるのである。
5GHz帯は屋内の利用に限定した周波数帯も含めて全部で19の通信チャネルがある。2.4GHz帯の3つに比べるとかなり余裕があり、干渉を受ける可能性が低い。加えて電子レンジを利用しても影響がない。
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