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新生活に選ぶこの製品、このサービス 第3回

キヤノン「PIXUS MP640」を例に、イマドキの複合機を解説

紙の便利さを再認識、実用主義で選ぶ「この春の複合機」

2010年03月17日 09時00分更新

文● 秋山文野、写真●小林 伸

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実用主義プリンターに求められる機能とは?

 プリンター選びの一番の基準は、これまで「写真プリントの美しさ」だった。各社が多色インクや写真用紙といった独自の取り組みを導入し、画質を競っていた。これが重要な選択ポイントであるのは、現在でも変わらない。

 とはいえ、普及クラスのローエンド機でも、画質が大きく向上し、今や「美しい写真プリントは標準機能」のひとつとなったと言っていい。

 この記事では、より実用的なプリントを主軸に据えて、複合機を俯瞰してみるが、生活の中で利用シーンの多い普通紙への文字印刷の品質はどうか、かつ実用的な書類作りをサポートするユーティリティーまで考えてプリンターを選びたいというのが筆者および編集部の提案だ。


染料系/顔料系? 黒の種類にこだわる

 普通紙における「文字印刷」の美しさを決めるポイントのひとつに、文字や線のにじみ具合がある。ディスプレー上でせっかくきれいに仕上げた書類が、印刷するとなんだかぼんやりした感じに見えたりする。実はこれインクや紙の違いから生じる違いなのである。

 インクジェットプリンターで利用されるインクには、大きく分けて染料系と顔料系の2種類がある。それぞれに特徴があるが、普通紙に出力する機会が多いのであれば顔料系の黒インクが選べるかどうかをまず確認したい。染料系インクは色の再現性が高く、光沢や発色がいい反面、専用紙でないとにじみやすい。顔料系インクは、粒子が大きく、紙の繊維にしみこみにくいため、普通紙でもくっきりとした出力ができる。

黒×2、マゼンタ、シアン、イエロー各色で計5色の独立インクタンク式。黒は顔料系と染料系の2種類があり、大きいインクタンクが顔料インクとなる

 最近のプリンターでは、二種類の黒インクを用意する機種が増えてきた。写真プリントに利用する染料系の黒、通常の書類作成に利用する顔料系の黒だ。独立インクタンクで染料/顔料2種類の黒を使い分ける「W黒(ダブクロ)」なら、用途に合わせて黒にメリハリをつけられるのだ。

 ビジネス用途として多い、モノクロ書類の普通紙印刷、はがき/封筒のあて名など、人に見せる文字をくっきり鮮やかにプリントするならにじみの少ない顔料インクを使いたい。

左が染料系インク、右が顔料系インクを使用。普通紙では太い線、濃い線の周囲ににじみがでることがある。湿度が高いときにも注意しよう


ファーストプリントとドラフト品質にこだわれ

 会議の直前に書類の間違いに気付いた、出かける直前に地図やメモをプリント……など、プリンターの利用シーンの中に「急いで印刷」のニーズは結構ある。実用派プリンターを選ぶのであれば、A4普通紙の印刷時間、とりわけ1枚目の印刷にどれだけかかるかにもこだわりたいものだ。

 キヤノンは、A4普通紙文書の印刷可能枚数測定に関する国際標準規格ISO/IEC 24734に基づいた1分間当たりの印刷可能ページ数「ipm」で印刷スピードを示している。Excel/Word/PDF文書の印刷という、実用に即した基準で見る。昨年秋に登場した「PIXUS MP640」の場合、普通紙カラーで約8.1ipm、普通紙モノクロで約9.2ipmとなっている。

 さらに速く、ページ数を多く印刷したいなら低解像度で利用するインクの量も抑えた「速度優先」モード(いわゆるドラフトモード)で印刷するわけだが、いくらスピード重視でも画質があまりにも落ちては困る。ドラフト印刷時の画質もチェックしたい。

 写真はPIXUS MP640の速度優先モードで印刷したサンプル。カラー書類でも多少色が薄いかな? と感じる程度ではないだろうか。一方で印刷時間は22秒(A4のPDF文書を5ページ出力した場合)も短縮されている。速くてもキレイ、なのだ。

左が「速度優先」を選択し、ドラフトモードで印刷したもの。標準印刷よりやや色が薄く(網点が荒い)、黒が締まっていないかも? という程度

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