2月25日、三機工業とシスコシステムズ(以下、シスコ)はビルの新築・リニューアルにおける「統合ネットワーク」の分野で提携した。従来独自のシステム・プロトコルを採用していたビルディングオートメーション(BA)のIP化をシスコが強力に推進する。
ビルに必要な第4のインフラとは?
「統合ネットワーク」とは、ビルディングオートメーションと情報システムをIP上で統合したシステムで、空調、給排水、電気に続く「第4のインフラ」と位置づけられる。三機工業とシスコは、今回は統合ネットワークの提供で提携し、ビルの新築およびリニューアルにおいて、建物の資産価値を向上させる。なお、三機工業は三井グループの建設総合設備会社。
発表会の冒頭で挨拶を行なった三機工業 代表取締役社長 有馬修一郎氏は「統合ネットワークの提供により、利用者の生産性向上、安全性の確保、コスト削減、環境対策の4つの分野でメリットを提供します」と両社の提携をこう解説した。
続いてシスコシステムズ 副社長の平井康文氏が、今回の提携について説明した。同社は「スマートコネクティッドコミュニティ」というコンセプトを基に、交通、安心・安全、エネルギー、医療、教育、スマートビルディング、スポーツ&エンタテインメントなどの分野において、既存インフラのIP化を進めている。このうち、今回の三機工業との提携は「コネクテッド・リアルエステート」という不動産分野でのIP化を指すという。
「もともと照明やエレベータ、監視、空調などのビジネスオートメーションは、独自のプロトコルとシステムで動いていました。これをIPベースのオフィスオートメーションを融合させます」(平井氏)というのが、大きな目的だ。もとより三機工業はビル内のLAN配線においてシスコの製品を使っていたという経緯が、今回の協業のきっかけになった背景だという。
導入時に最大で50%のコスト削減
次に三機工業の上野敏男氏が具体的なソリューションについて説明した。まず同氏は「従来、BAの分野では異なったメーカー、異なった設備でネットワーク化を行なってきた。しかし、近年ビル設備もIPネットワークに移行している」という現状を説明。設備が異なる幹線ネットワークを統合することで、導入コストを50%削減できるという。また、レガシープロトコルの機材は、ゲートウェイの装置を用いることで、IPネットワークに巻き取っていく。
具体的なソリューションとしては、IT機器の省エネ化をIPカメラを用いたセキュリティの強化、IP電話システムやデジタルサイネージなどが挙げられた。特にグリーンITに関しては、シスコの「GreenWise」を用いた電力消費の見える化や電力制御技術を用いることで、情報機器の電力量の30%、ビル全体の電力量の6%を削減する効果があると見込んでいる。
サービスは2010年の4月に立ち上げ、初年度で10億円。2012年度で50億円の受注を目指す。