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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第42回

新VAIO Z開発者インタビュー

「あきらめない価値」を追求したモバイル 新VAIO Z

2010年03月01日 12時00分更新

文● 西田 宗千佳

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難産だった「三角スイッチ」

ダイナミックハイブリッドグラフィックスの三角スイッチ

ダイナミックハイブリッドグラフィックスの三角スイッチ

 Zシリーズでは象徴的な機能として、独立GPUと内蔵GPU(新ZではCPU内蔵に変更)を切り換えつつ、パフォーマンスとバッテリーライフの優先度を変えられる「ダイナミックハイブリッドグラフィックス」という機構が採用されている。これは、Zシリーズのコンセプトである「パフォーマンスとモビリティの両立」を目的としたもので、もちろん今回も健在だ。

 従来機種は「SPEED」(独立GPU)と「STAMINA」(内蔵GPU)の2段階でだったが、新VAIO Zでは「AUTO」(自動切り替え)を追加した3段階になった。

金森「『自分で(動作を)切り換えられる』という機能は、前モデルでも非常に評判がいいものでした。しかし一部のユーザーの方は、結局どちらかのモードだけに固定して使う場合も多かった。そこで新VAIO Zでは、オートモードをつけてみました」

「特に今回は、GeForce GT 330Mと1GBのビデオメモリーを搭載することで、GPUが大きくパワーアップしています。Core iシリーズの内蔵GPUも性能アップしましたが、例えばCUDAを使ったGPGPUでのパフォーマンスは大きく違います。新モデルではそこがポイントになるでしょう」

鈴木氏

「オートモードだけでいいかというとそうでもない。『自分で切り換える』ことにこだわる方が多いのがVAIO Z」(鈴木氏)

鈴木「オートモードだけでいいか、というとそうでもない。『自分で切り換える』ことにこだわる方が多いのがVAIO Zです。なので、3モードにしたわけですが、その実現がまた難題で……」

「最初はボタンで切り替え、といったことも考えたんですが、動作の確実性を考えるとスライドスイッチの方がいい。しかし、『確実に切り換えができる3モードスイッチ』は難しいんです。単純に横スライドではダメ。だけどそういう仕組みはパソコン業界にはなかった。自動車のシフトレバーくらいなんじゃないでしょうか」

「そこでデザイナーが、『なら3角にしてしまえばいい』とアイデアを出しました。でも、そんな汎用スイッチはないんです。しかも、スイッチは平らな場所にあるのではなく、ヒンジ部の曲面にかかったところです。デザイナーから指定された時には、『ええっ?』と言ってしまいましたよ(笑)。これだけで、メカ設計の人間は2ヵ月くらい悩んでます」

三角スイッチは平面にあるのではない

三角スイッチは平面にあるのではなく、若干曲面になった部分にある

鈴木「私もスイッチの動作具合を確かめるためだけに、日帰り出張を繰り返したくらいです。先方に『今日はなにしに来たんですか?』と言われて、『ん? カチャカチャしにきた』って答える(笑)」

 その結果、新Zシリーズのアイデンティティともいえる「三角のモードスイッチ」が生まれた。ずらせば必ず「どこかのモード」に止まり、動かすにはきちんと「力を掛けてずらす」ことが必要なので、意図せずに誤動作することはない。スライドさせる時の感触にも、気持ちよい高級感がある。だが、このスイッチの感触も、いろいろと苦労があったようだ。

鈴木「我々はいいものを作ったと思ったんですが、昔オーディオをやっていたエンジニアは、特に厳しい。『もっとシュッ、カシャッと』『まだ渋い』とか、感覚的な言葉で言われるんです(笑) 。でも、そういった感覚をとり入れて、快適なものを実現しました」

 昔のオーディオ機器、中でも高級な製品は、スイッチやスライドの感触でも気持ちよさや高級感を演出し、それをブランド価値につなげていった部分がある。製品寿命が短くなり、価格競争に陥りがちなデジタル機器では、そういった「感覚」を失いがちだ。VAIO Zのように機能と高級感で差別化を狙う製品では、そういった部分を大切にしたい、という意識の現れといえる。

新Zと旧Z

新Z(右)と旧Z。ハイパフォーマンスモバイルの頂点に立ち続ける貴重なシリーズだ

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