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池田信夫の「サイバーリバタリアン」 第106回

クラウドが変える21世紀の資本主義

2010年02月24日 12時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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在来メディアを没落させる固定費の呪縛

 インターネットの世界では「3度目の正直」がある。かつてオラクルが「ネットワーク・コンピュータ」を提唱したときはうまくいかず、その後の「アプリケーションサービス・プロバイダー」(ASP)も短命に終わったが、ほとんど同じものが今「クラウド・コンピューティング」として流行している。それが今度こそビジネスとして成り立つのかどうかはまだ何ともいえないが、ベンチャー企業にはチャンスを提供している。

Amazon EC2

たとえばAmazon EC2に代表されるクラウドサービスを用いることで、新しいWebサービスを展開する上での初期投資は大幅に削減される

 資本主義の根幹にあるのは、資本によって企業をコントロールするメカニズムである。このシステムは、資本設備が企業のコアであるような製造業には適していた。製造業でボトルネックになっているのは工場などの物的資本なので、それを所有している株主が資本の使い方を決めることが効率的である。民主党の提案している公開会社法のように労働者を経営に参加させると、資本を浪費して賃金に分配し、企業の業績が落ちることが多い。

 このように大きな資本が必要なことが、製造業の参入障壁になっていた。たとえば、あなたが自動車技術をもっていても、自動車メーカーを創業することは不可能だ。莫大な資本が必要だからである。同じ意味で、新聞社や放送局を今から創業することも不可能だ。このようなインフラ独占によって高い収益を上げることが、20世紀の資本主義のビジネスモデルだった。

 しかしインターネットによって状況は大きく変わった。いま新聞やテレビが経営難に陥っている最大の原因は、輪転機や中継局などの古いインフラが不要になったことにある。同じサービスがウェブではるかに低コストでできるのに、古いインフラにこだわって電波利権や再販制を守ろうとして、高コストで自縄自縛に陥っているのだ。

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