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日本法人ならではの契約形態も

Azure日本上陸 ~10年前から開始されたMSのクラウド戦略~

2010年02月23日 09時00分更新

文● 吉川大郎/TECH.ASCII.jp

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日本はどうなる?
大場氏が語るWindows Azure

大場章弘氏

マイクロソフト 執行役 デベロッパー&プラットフォーム統括本部長 大場章弘氏

 オブライエン氏が世界的な動向を語った後は、マイクロソフト 執行役 デベロッパー&プラットフォーム統括本部長 大場章弘氏が国内におけるWindows Azureの展開を、具体的に、かみ砕いて説明した。

 「クラウドだけではなく、(ソフトウェアを)どのように使っていくか、エンドポイントを含めてやっていくのが、会社(マイクロソフト)が目指しているところ」と前置きした大場氏は、「3スクリーン+クラウド」を推進するテクノロジーについて、さらなる解説を加えた。

3スクリーン+クラウドの構成図

3スクリーン+クラウドの構成図

 大場氏が示した3スクリーン+クラウドの構成図では、下位のレイヤーから上位のアプリケーションに至るまで、オンプレミスとクラウドが見事に一対となって位置づけられている。「同じものを同じレイヤーで連携させ、機能の拡張がしやすいアーキテクチャになっている」(大場氏)。どちらかを選択するのではなく、オンプレミスとクラウドを組み合わせ、バランスを取る形で使いやすくIT投資を下げたシステムが構築可能というわけだ。

 また、これらの開発に関しては、マイクロソフトのVisual StudioやExpression Studioが用意されている。開発者は、今まで投資してきたVisual Studio、.NETのスキルを、そのままクラウド環境に当てはめていくことができる……という展開である。しかも、開発に関しては.NETのみならず、オープンソースのテクノロジーも活用可能だから、間口はずっと広がるというわけだ。

Windows Azure Platform

3スクリーン+クラウドの説明のあとは、Windows Azure Platformの説明も行なわれた。

マイクロソフトのメガデータセンター

マイクロソフトのメガデータセンター

 オブライエン氏が冒頭で触れたとおり、マイクロソフトはワールドワイドにインフラを展開している。大場氏はその詳細を少しだけ紹介した。現在同社は、世界6個所=各リージョンにバックアップを含めて“メガデータセンター”を設置している。さらに、これらデータセンターのほかに、CDN(Contents Delivery Network)のキャッシュサーバーも散在している。メガデータセンター、CDNのキャッシュサーバーともに、セキュリティ上の理由から詳細な場所は伏せられているが、今後も各地に増設していく予定だという。

Azureを、日本人の誰が、どう使っている?
紹介された4つの典型事例

 Windows Azureの仕組みや展開は分かったが、実際の事例はどうなのだろうか? 大場氏が紹介した事例は以下の4つで、それぞれ利用パターンが異なっている。

goomo
EC機能と連携する動画配信サービス。Windows Azureにおける大容量保存の特性や、SilverlightによるUIが特徴。
ソフトバンク クリエイティブ、リード・レックス
キャンペーン展開など季節性の高いWebページを構築。Web上のCMS(Contents Management System)をWindows Azure上に構築した
宝印刷
XBRL(eXtensible Business Reporting Language=財務報告を電子化するために策定された言語)を活用した上場企業の情報開示支援サービスを構築。機密性の高いデータはオンプレミスに置き、公開はWindows Azure上で行なう。
富士通システムソリューションズ
ERPパッケージのクラウド化。Microsoft SQL Serverで構築されていたERPを、そのままWindows Azureに移行した。マイグレーションの例。


 上記4事例は、大規模運用、瞬間的に増加するリソース要求への対応、オンプレミスとクラウドとの組み合わせ、オンプレミスからのスムーズなマイグレーションと、まさにマイクロソフトの「ソフトウェア+サービス」で謳われている特徴を具現化した事例と言えよう。このほか大場氏は、ソニーやNEC、日立製作所など、多くのWindows Azure採用企業を紹介した。

Windows Azure採用決定企業

Windows Azure採用決定企業

ビジネス上のインフラも整備された

 Windows Azureは日本でも本格展開が開始されたわけだが、具体的には以下の点で日本への対応が始まっている。

日本法人との契約が可能に
国内から安心して契約できる体制作り

購入ポータル
申し込んですぐに使える日本語購入サイト
日本円による決裁
パートナー向けWebサイトのオープン
契約・手続き
マイクロソフト日本法人との契約
請求書払いに対応
特別プラン
初期特別プラン(無償利用枠を提供)
MSDNプレミアム特典
BizSpark(スタートアップ企業への優遇政策)との連携


 特に料金体系については、単なる利用料モデルだけではなく、“お値打ちパック”的なものも用意されるとのことだ。また、技術者に向けた情報提供も始まっている。

技術者に向けたサポート

日本語サイト
サービスの概要紹介
FAQ整備
事例の掲載
技術文書
MSDNコンテンツ拡充
技術ホワイトペーパーの翻訳・公開
TechDaysセッション資料をストリーミング付きで公開
問い合わせ・サポート
購入時の問い合わせ、サービス状況確認、開発サポートを提供
購入時のカスタマーサポートは日本語での対応


 大場氏が最後に示したのは、Windows Azureの多面的な展開だ。先日お伝えした「ITAP for S+S」(関連記事)といったコンサルティング分野から、開発分野を基軸にしたAzure専任のクラウドテクノロジー推進部の創設、さらにはボリュームライセンス体系の整備(2010年中に行なわれるように準備中)、すでにマイクロソフトの外でいくつか立ち上がっているユーザー会・開発コミュニティのサポート、無償ハンズオンの開催や勉強会キットの提供、マーケットプレイス「PinPoint」の展開(2010年秋)、パートナー各社と連携したプロモーション展開など、2010年は矢継ぎ早に、そして全方位的にAzure運動が展開されることになる。

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