Active Directoryの構造を理解しよう
ディレクトリを構成するフォレスト、ドメイン、ツリーとは?
2010年03月02日 09時00分更新
英語と日本語の造語能力
「ディレクトリサービス」がわかりにくいのは、その言葉にも責任があるように思う。「ディレクトリ」のイメージがわかないのだ。だいたいにおいて、英語は新しい言葉を生み出す能力(造語能力)が低い。英語の専門用語には、以下の4つのパターンがある。
- 既存の語に専門的な意味を込める(例:Directory)
- 略語を作る(例:TCP/IP)
- 愛称を使う(例:IPマスカレード)
- 新語を作る(例:Packet)
圧倒的に多いのは、既存の語の流用と略語である。ただし、既存の語を流用すると、本来の意味に引きずられてかえって理解しにくくなることがある。たとえば、Windowsのログイン直後の画面は「デスクトップ」と呼ばれ、個々のアプリケーション領域は「ウィンドウ」であり、背景は「壁紙(wall paper)」と呼ばれる。窓(ウィンドウ)の背景が壁紙というのはよいとしても、机の上には壁紙はないだろう。こういうところでつまずく初心者は意外に多い。そのせいか、最近のWindowsでは「壁紙」ではなく「背景」という言葉が使われている。
一方、略語を使うとどうなるか。正確ではあるが親しみにくいし、同じ略語が多数登場することもある。たとえば「CD」だ。キャッシュディスペンサー、コンパクトディスク、クリスチャン・ディオール、中日ドラゴンズ、チェンジ・ディレクトリなど、実に多くの意味がある。
最近、Linuxコミュニティを中心によく使われるのは、「愛称」である。たとえば「IPマスカレード」は、「NAPT(ネットワークアドレス&ポート変換)」の意味で広く使われている。「マスカレード」は「仮面舞踏会」の意味である。既存の語の流用に近いが、日常的ではない語を使うところが違う。
誤解がなく覚えやすいという意味では、新語を作ることはもっとも効果的である。荷物を意味する「Pack」に「小さい」を意味する接尾語「et」を付加した「Packet」が代表例だ。ほかには、仮想化技術で使われる「Hypervisor」は、以前よりOSやCPUの用語としても使われていた「Supervisor(監督)」と、スーパーよりも上位を示す接頭語「Hyper」の組み合わせだ。もっとも、新語が造られるケースは数少ない。英語の新単語を作るには古代ギリシャ語やラテン語を流用することが多いが、こうした古典に精通した人が減っているからだろうか。
状況は日本でもあまり変わらない。明治期に大量の西洋文化を輸入したときは、漢字の造語能力を利用して新しい言葉を次々と作った。「科学」「経済」「情報」など、現在では一般的な用語も少なくない。しかし、漢文の知識を持つ人が減った現在、外国語をそのままカタカナにするか、英語にいったん翻訳してから略語にすることが増えている。最初から英語にしておいたほうが世界に普及させるときに便利だという事情もある。積極的に日本語で専門用語を作っているのは、TRONプロジェクトくらいではないだろうか。
(次ページ、「マイクロソフトの資格と称号」に続く)
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