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“趣味の古銭”で1億円、50歳・脱サラ店長の挑戦 (2/3)

2010年02月18日 11時00分更新

文●三浦たまみ

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コインへの“思い入れ”から商機を見いだす

 石塚さんは1999年、50歳の誕生日を迎えたのを機に、会社の割増退職金制度を利用して自主退職。その1000万円を元手にネットショップをオープンしました。「やるからには上を目指したい」と、600万円ほどの初期投資をかけて開業した店はいま、年商1億円を超えるショップにまで成長しています。

「当時、2人の子供が大学を卒業し社会人になっていたこと、ローンが完済していたことなどが退職を後押ししたんです。あとは妻と2人の生活費さえ稼げればいい。ならば、自分が本当に興味を持っていること、好きなことを商売にするべきだと思ったんです」

 コインという商材に目をつけたのは理由があります。実は石塚さんの亡父がコイン店を経営しており、幼い頃からその背中を見て育ったから。趣味性の強い商材ですが、石塚さんにとっては非常に近しい存在だったのです。学生時代には店の手伝いをしていた時期もあり、自然にコインに関する知識も蓄積されていました。

「サラリーマンになってコインからは遠ざかっていましたが、かつてはデパートに出店していたコイン屋がどんどん撤退するなど、もともと小さなマーケットがさらに小さくなっているのは感じていました。親父さんが1人で構えていた店が、後継ぎがいないまま途絶えてしまうケースも見てきました。参入すれば勝算はあると思ったし、コインの面白さを1人でも多くの人に広め、微力ながらも業界を活性化させていきたいという思いもありました」


趣味性の強い商材こそ、店への“信頼”がものを言う

 コインや古銭は誰もが買う商材ではないものの、コアなファンが広く全国に存在しています。そのため、実店舗を構えるよりも、ネットを利用して商圏を広げるのに適していました。

「実店舗って、薄暗い店内で店主が『一見さんお断り』という雰囲気を醸し出しているような怖いイメージがありませんか(笑)? ネットショップだからこそ気軽に立ち寄れる、ハードルが低くなる面があると思うんです」

 実際、オープン当月の売り上げは30万円以上と、上々のスタート。コインを買う場所がなくて困っていたという地方在住者の声などもあり、石塚さんはネット販売に手応えを感じます。競合するネットショップはありますが、いまだにカード決済を導入していない店も多く、まだまだネット販売=片手間のケースは少なくないそうです。

「コインには1枚数十万円以上する高額なものもありますから、まずはお店に対して信頼感をもってもらうのが不可欠。商売をやる以上、カード決済の導入は最低限必要なことだと思いましたし、それ以外にも、コイン販売には本来必要のない古物商の許可をとったり、日本貨幣共同組合に加入するなどして、開業当初からお店に対する信頼づくりは心がけていました」


 コインという商材は、たとえば同じ硬貨でも発行年などによって価値が異なるため、商品ごとに1つ1つ写真を掲載する必要があるなど、販売には意外と手間がかかります。次回は、趣味性の強い商材ならではの販売の工夫についてお伝えします。

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