「操作性能向上」がiPadのカギになるか
じゃあ、リビングなどでパソコンを使わない人には、iPadは価値がないものなのだろうか? 筆者はそうは思わない。カギは「操作性」だ。
iPhoneは便利な携帯電話であり、筆者も毎日使っているが、どうしてもイライラする点もある。いろいろ考えてみたが、その原因は3つに集約されそうだ。そのうちの2つは、iPadで改善される可能性が高い。それは「画面サイズ」と「スピード」である。
iPhoneは最新型の「iPhone 3GS」になって、相当にスピードアップした。だがそれでも、すべてのシーンで遅くならないわけではない。例えば、大きめのウェブページをスクロールする際に、描画が間に合わず「市松模様」が表示されることがある。また、写真を切り換える際などにも、画像が一度「低解像度」で表示されてから、そののちに正しい解像度で表示される、という現象が起きる。これらは、パワーが限られた機器でできるだけ動作を止めず、スムーズな動作をさせるための工夫といっていい。
だが、ハンズオンイベントで触ってみた限りにおいては、iPadではこの種の現象を見かけることがなかった。特に写真に関しては、低解像度表示はまったく現れなかった。これは意外とすごいことだ。
iPadのディスプレー解像度は1024×768ドットで、iPhoneのそれに比べて4倍以上広い。低価格な機器ではグラフィックチップやメモリーに割けるコストが限られるため、解像度が向上すると動作速度が遅くなることもある。だがiPadはむしろ、iPhoneよりもずっと速くなっていた。
iPadに使われているプロセッサーは、アップルオリジナルの「Apple A4」だ。その詳細は公開されておらず、ロジックに関してどのような進化が起きたのかはわからない。しかし、唯一公表されている技術情報である「クロック周波数」が1GHzであることから、仮にiPhone 3GSとまったく同じ構成のLSIであったとしても、クロック周波数が向上した分(400MHz分と言われている)だけ高速化されている、と考えられる。
とはいえ、今の技術動向から予測すれば、単にクロックだけを上げたとは思えない。iPhone用アプリがそのまま動作していることを思えば、おそらくはiPhone同様にARM系のCPUコアと、PowerVR系グラフィックコアを混載したチップであり、消費電力や処理能力、生産性などで独自性を出している、と考えるのが妥当だ。
「操作感」を根拠とするのは少々非科学的だが、筆者はA4の正体を、「よりマルチコア・並列処理性能を高めたARM/PowerVR系」ではないか、と予想している。トップスピードはさほど上がらないが、モバイルで求められる「並列処理時のもたつき」を抑えやすい、というマルチコアの特質を考えても、アップルがMac OS XでマルチコアCPU活用を効率化する技術開発に長けている点を考えても、そう外れていないのでは……と思う。
むしろ興味深いのは、ここでA4を作った以上、今年の夏までには登場すると予想されている「次世代iPhone」でも、A4系チップが使われるのではないか、ということだ。とすれば、こちらもiPad同様、なにがしかの形で「動作の高速化」が計られることになるだろう。
iPad操作性向上の鍵は「画面の大きさ」
プロセッサー以上に操作性の面でプラスなのが、「画面の大きさ」だ。特に煩雑な操作を強いられる、文書作成などのプロダクティビティー系アプリケーションやゲームなどでは、思いのほかこれが有効だろう。
iPhoneを使っていてよくあるのは、ソフトキーボードや指によって「画面上の大切な部分」が隠れてしまうことだ。iPhoneのサイズでは致し方ない部分があるが、イライラすることに代わりはない。だがiPadでは、画面サイズにかなり余裕があるため、こういった事態が起きにくい。
例えば日本語入力時には、iPhoneの場合「ソフトキーボード」「変換候補」で画面の大部分を専有されることになるため、肝心の編集画面が狭くなる。だがiPadでは、上の写真のようにずいぶんと余裕がある。iPhoneでは細くてタップしづらい変換候補列も、十分なサイズがあるので軽々タップ可能。
ソフトキーボードのキーサイズも、ご丁寧なことにMacBookのそれと同じになっている。だから、相当に指が太い人でも、「タイプしにくい」ということはあるまい。慣れてもどこか使いづらいと感じるiPhoneでの「コピー&ペースト」も、iPadではそれなりに楽にできた。
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