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T教授の「戦略的衝動買い」 第86回

MoMA認定・大人のボールペン「Thesi」を衝動買い

2010年02月11日 12時00分更新

文● T教授

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カッターのようなデザインが生む「大人の余裕」

 AURORAは1919年創業の伝統ある企業だが、時に極めてデザインコンシャスな商品を発売する。1970年代にルーツを持つThesiもそんな商品のひとつだ。

 Thesiは重さがたったの15g、厚さが5mm強で、横から見ると金属のストローを押しつぶしたような扁平な形をしている。この斬新なデザインは、円形が当たり前だったボールペンの形状に大きな衝撃を与えた。

Thesi

極めてスリムなThesi。実際の長さは137mm(実測)重さはたったの15gだ。ほぼ中央側面にある黒いスライダーがボールペンを押し出すボタンだ。ボールペンを収納するにはその右側にある小さな金属ボタンを押す

Thesi

Thesiを握って側面のスライダーを親指の爪先で滑らせると、オルファやNTカッターの様に斜めにカットされた先端からスリムな芯が出てくる

Thesi

斜めにカットされたシャープな先端部分は、筆者の愛用しているリチャード・サッパー氏のデザインによるLAMYの「Dialogueボールペン」にも通じるモノがある

Thesi

リフィルの交換もLAMYのDialogueに似ている。先端部分の小さなスイッチを押しながら、スライダーを滑らせると、繰り出しユニットとリフィルが一緒に取り出せる

Thesi

Thesi本体(左端)と繰り出しメカユニット(中央)、専用リフィル(右端)

 長時間の筆記では、指先のホールド感や安定性において、一般的な円形のボールペンに一日の長があるだろうが、ごく普通の筆記においては筆者はほとんど使い勝手の差を感じない。超軽量で薄く、しかし極めて堅牢な構造を実現しながら見た目も優れているThesiは、持ち歩く筆記具における理想型のひとつだろう。

 すでに、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久保存モデルに指定されている。

 筆記具開発の目的をホールド感や長時間の使用感だけにしてしまうと、デザインはほぼすべて同じ方向を向いてしまう。とはいえあまりにも飛び過ぎた「デザインのためのデザイン」ゆえに使いにくいというのも論外だ。

 すでに何百年もの歴史を持つ筆記具の世界も、「使い勝手がすべて」な積み上げた納得の上に成り立つものだけでなく、それとは一線を画した大人の遊べる「別の選択」があってもいいはず。

Thesi

Thesiは本体の厚みが5mm強しかないので、薄い手帳などとの相性は抜群だ

Thesi

多くの「こだわり」あるボールペンをコレクションしているが、Thesi(右端)は形状の割には比較的クセの少ないノーマルなタイプだ。Thesiに比較してかなり重量級で、長時間の筆記は本気で避けたいLAMYのDialogue(右から6本目)とはメカニカルなデザイン的には共通点は多い。しかし別物だ

 Thesiは、一見してシャープなカッターのようなデザインだが、そんな「遊び」と「必要なムダ」、そこから生まれる「大人の余裕」を感じさせる深い筆記具だ。筆者としては「仕事以外もデキるお姉様」にぜひとも使ってほしい。

Thesi

自宅の机の上では、ペン立て代わりにミニチュアの椅子を利用している


今回の衝動買い

アイテム:AURORA「Thesi ニューヨーク近代美術館永久保存モデル
定価:2万6250円(ただしデッドストックとして約半額で購入)


T教授

T教授

 日本IBMから某国立大芸術学部教授になるも、1年で迷走開始。今はプロのマルチ・パートタイマーで、衝動買いの達人。

 

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