標準バッテリーでの長時間動作
低騒音も魅力的
超低電圧版CPU搭載ノートということで、気になるバッテリー駆動時間についてもみてみよう。付属バッテリーは7.2Vのリチウムイオン。容量はR8の公称5.8Ahから、R9になって公称6.2Ah(=44640mWh、実測では41760mWh)と増加しているものの、バッテリー駆動時間はR8の約8時間から、約7.5時間と短くなっている(JEITA測定法1.0による。いずれもカタログ値)。
Windows 7の電源管理で「省電力モード」を選んだときと、パナソニック独自の電源管理機能(Panasonic電源プラン拡張ユーティリティ)で「標準」を選んだときで比較してみた。なお、ベンチマークテストには「BBench」を使用。いずれの場合も、Windows Media PlayerでH.264動画のエンドレス再生(音声も出力)と無線LAN経由で5秒置きのウェブページ表示、連続的なキー入力を行なった。バックライト輝度は設定幅の中央としてある。このテストの条件設定ならHDDは停止せず、無線LANアダプターへの電力供給も止まらない。タスクマネージャーを見ていると、CPU負荷は10~40%であった(特にウェブブラウザーでのFlash動画表示が高負荷)。
95%充電状態からはじめ、残量が5%となって自動的に休止状態に移行するまで、Windows 7電源管理「省電力」では約2時間36分、同様にパナソニック独自の「標準」で動かしたところ約2時間38分であった。モバイルユースの中でも、そこそこパワーを必要とする利用シーンを想定したため、カタログ値のおよそ3分の1という結果になったが、モバイルユースでここまで高負荷が続く状況も少ないはずだ。カタログ値の半分程度は利用できるだろう。
なおバッテリーテスト中の動作音だが、新たに開発された空冷ファンそのものが本体の奥深く(キーボード直下)に設けられたため、騒音が効果的に抑えられ、排気口を後部に配することで風切り音もほとんど聞こえなかったのが印象深い。空冷ファンはしっかりと回転していて、手をかざせば結構な風量(パナソニックによればR8の約3倍の風量)が感じられるのに、騒音は皆無である。
魅力といえば、同社のオンラインショップ「マイレッツ倶楽部」限定の直販モデルについても触れておきたい。CPUにより高速なCore i7-640UM(1.20GHz)を搭載し、メモリー2GB、500GB HDDを内蔵したモデルが19万7450円からとなっている。ボディカラーもシルバーかブラックから選択でき、追加オプションでは液晶天板のカラーを「オレンジコンポート」「グリーンジェイド」「ピンクスプラッシュ」など11色から選べる。店頭モデルの予想実売価格が17万5000円前後であることを考えると、価格差の少ない直販購入も考えたいものだ。
ビジネスでの安心感 使い勝手を高める工夫が各所に
結論から言えば、「非の打ち所がない高性能モバイル、ただし価格は除く」と言うことになるのだが、さすがにR6から4代経過しただけのことはある。
R9では、OSがWindows 7 Professionalとなり、BIOS画面からの修復セットアップで32bit OSか64bit OSを選べる、いわゆるセレクタブル方式を採用している。もちろん実態は再インストールなので、HDDの内容はいったんすべて消去されるが、専用ユーティリティーのセットアップまで、数ステップの操作で自動的に行なわれるのは便利だ。データをUSBメモリーなどに保存するようにすれば、1時間ほどで32bit/64bit OSの切り替えができる。
また、BIOSではCPUの仮想マシン機能「Intel VT」は最初から有効となっており、Windows XPモードもインストールされた状態となっている。複雑な設定は必要なく、数ステップのセットアップを実行するだけでXPモードを使えるようになっている。
R9の場合、画面解像度が狭いのでXPモードの常時利用は実用的ではないが、USBメモリーなどでのデータ交換の際に、必ずXPモードを経由するようにしておけばセキュリティー的にも安心感が増す。Windows 7はこれら付加機能もあって、XPと比べればOSが必要とするHDD容量も大きいが、R8の160GBより大きい、250GB HDDを内蔵するので問題ではない。
Let'snote R9に唯一、問題があるとすれば、ネットブック並みの大きさなのに(重さは軽いが)、価格はネットブックの4倍もするということだろうか。パソコン販売店の店頭に、手ごろな大きさのモバイルノートを探しにきたさほど詳しくない消費者から見れば、細部の作りこみや品質は見えてこないものである。Let'snoteのように国内設計・生産による徹底した品質管理体制や短納期を実現する一方で、安価なノートの約4倍もの高額商品になってしまうと、筆者のような個人事業者や一般コンシューマーは手をだしにくい。
企業ユーザーの信頼を得るための高品質だが、そろそろこの高コスト体質は改善してはもらえないものだろうか。実際に、R8ではポートリプリケータ用コネクタやモデム機能を省略した廉価モデルも登場していた。これ以上削るところがないのはわかるのだが、長きに渡って培われてきた「コンパクトで軽量」「頑丈で静か」「バッテリーで長時間使える」などの優れたモバイルノートのコンセプトに、「手頃な価格」という項目も加えてほしいものだ。
「なぜワイド液晶ではないのか?」や「なぜスリムデザインではないのか?」を説明するよりも、手頃な価格で幅広い消費者にその良さを体感させたほうが早いのだ。
Let'snote R9 の主な仕様 | |
---|---|
CPU | Core i7-620UM(1.06GHz) |
メモリー | 2GB |
グラフィックス | CPU内蔵 |
ディスプレー | 10.4型 1024×768ドット |
ストレージ | HDD 250GB |
無線通信機能 | IEEE 802.11a/b/g/n |
インターフェース | USB 2.0×2、アナログRGB出力、10/100BASE-TX LANなど |
サイズ | 幅229×奥行き187×高さ29.4~42.5mm |
質量 | 約0.93kg |
バッテリー駆動時間 | 約7.5時間 |
OS | Windows 7 Professional 32bit/64bitセレクタブル |
価格 | オープンプライス(予想実売価格 17万5000円前後) |
筆者紹介─池田圭一
月刊アスキー、Super ASCIIの編集を経てフリーの編集・ライターに。パソコン・ネットワーク・デジタルカメラなど雑誌・Web媒体への企画提供・執筆を行なう一方、天文や生物など科学分野の取材記事も手がける。理科好き大人向け雑誌「RikaTan」編集委員。デジイチ散歩で空と月と猫を撮る日常。近著は「失敗の科学」(技術評論社)、「光る生き物」(技術評論社)、「これだけは知っておきたい生きるための科学常識」(東京書籍)、「科学実験キット&グッズ大研究」(東京書籍)、「やっぱり安心水道水」(水道産業新聞社)など。
この連載の記事
-
第133回
PC
Skyrimも快適? GeForce内蔵Ultrabook ASUSTeK UX32VD -
第132回
PC
写真やゲームをより美しく見せるナナオの液晶 FS2333 -
第131回
PC
デジカメとスマホを手軽に連携する無線LAN SDカード FlashAir -
第130回
PC
無線とタッチで使い勝手が進化したペンタブレット Intuos5 -
第130回
PC
スレートPCをCore i7で蘇らせたオンキヨー TW3A-A31 -
第129回
PC
店頭モデルも4コアCPUに パワーアップしたLets'note B10 -
第129回
PC
小型でも強力GPU搭載のゲームPC Alienware X51を検証 -
第129回
PC
Ultrabookと一緒に持ち歩きたい 超小型マウス「Cube」 -
第129回
PC
14型のUltrabookはアリか? デザイン重視のENVY 14 SPECTRE -
第128回
PC
WiMAXモバイルルーターの決定版!? Aterm WM3600Rを試す -
第127回
デジタル
高速SSDで起動・復帰が速いUltrabook Aspire S3-951 - この連載の一覧へ