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週刊 PC&周辺機器レビュー 第43回

Core i7搭載で1kgを切る本格派モバイル Let'snote R9

2010年02月12日 12時00分更新

文● 池田圭一

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標準バッテリーでの長時間動作
低騒音も魅力的

付属バッテリーとACアダプター

付属バッテリーとACアダプター。バッテリーの容量はR8よりやや増えているが、駆動時間はやや減少している

 超低電圧版CPU搭載ノートということで、気になるバッテリー駆動時間についてもみてみよう。付属バッテリーは7.2Vのリチウムイオン。容量はR8の公称5.8Ahから、R9になって公称6.2Ah(=44640mWh、実測では41760mWh)と増加しているものの、バッテリー駆動時間はR8の約8時間から、約7.5時間と短くなっている(JEITA測定法1.0による。いずれもカタログ値)。

Windows 7の電源管理を独自に拡張

Windows 7の電源管理を独自に拡張。さらに詳細な節電設定ができる

PC情報ビューアー

「PC情報ビューアー」でバッテリーの情報をチェック。温度や積算充電指数(満充電した回数)なども表示される

 Windows 7の電源管理で「省電力モード」を選んだときと、パナソニック独自の電源管理機能(Panasonic電源プラン拡張ユーティリティ)で「標準」を選んだときで比較してみた。なお、ベンチマークテストには「BBench」を使用。いずれの場合も、Windows Media PlayerでH.264動画のエンドレス再生(音声も出力)と無線LAN経由で5秒置きのウェブページ表示、連続的なキー入力を行なった。バックライト輝度は設定幅の中央としてある。このテストの条件設定ならHDDは停止せず、無線LANアダプターへの電力供給も止まらない。タスクマネージャーを見ていると、CPU負荷は10~40%であった(特にウェブブラウザーでのFlash動画表示が高負荷)。

高負荷をかけたバッテリーテスト中のR9

高負荷をかけたバッテリーテスト中のR9

 95%充電状態からはじめ、残量が5%となって自動的に休止状態に移行するまで、Windows 7電源管理「省電力」では約2時間36分、同様にパナソニック独自の「標準」で動かしたところ約2時間38分であった。モバイルユースの中でも、そこそこパワーを必要とする利用シーンを想定したため、カタログ値のおよそ3分の1という結果になったが、モバイルユースでここまで高負荷が続く状況も少ないはずだ。カタログ値の半分程度は利用できるだろう。

 なおバッテリーテスト中の動作音だが、新たに開発された空冷ファンそのものが本体の奥深く(キーボード直下)に設けられたため、騒音が効果的に抑えられ、排気口を後部に配することで風切り音もほとんど聞こえなかったのが印象深い。空冷ファンはしっかりと回転していて、手をかざせば結構な風量(パナソニックによればR8の約3倍の風量)が感じられるのに、騒音は皆無である。

本体背面の排気口

本体背面の排気口。高負荷時も騒音はしない

 魅力といえば、同社のオンラインショップ「マイレッツ倶楽部」限定の直販モデルについても触れておきたい。CPUにより高速なCore i7-640UM(1.20GHz)を搭載し、メモリー2GB、500GB HDDを内蔵したモデルが19万7450円からとなっている。ボディカラーもシルバーかブラックから選択でき、追加オプションでは液晶天板のカラーを「オレンジコンポート」「グリーンジェイド」「ピンクスプラッシュ」など11色から選べる。店頭モデルの予想実売価格が17万5000円前後であることを考えると、価格差の少ない直販購入も考えたいものだ。


ビジネスでの安心感 使い勝手を高める工夫が各所に

 結論から言えば、「非の打ち所がない高性能モバイル、ただし価格は除く」と言うことになるのだが、さすがにR6から4代経過しただけのことはある。

 R9では、OSがWindows 7 Professionalとなり、BIOS画面からの修復セットアップで32bit OSか64bit OSを選べる、いわゆるセレクタブル方式を採用している。もちろん実態は再インストールなので、HDDの内容はいったんすべて消去されるが、専用ユーティリティーのセットアップまで、数ステップの操作で自動的に行なわれるのは便利だ。データをUSBメモリーなどに保存するようにすれば、1時間ほどで32bit/64bit OSの切り替えができる。

「コンピューターの修復」でのOS再インストール画面

「コンピューターの修復」でのOS再インストール画面

32bit版か64bit版かを選べる

32bit版か64bit版かを選べる。セットアップには約1時間かかる

 また、BIOSではCPUの仮想マシン機能「Intel VT」は最初から有効となっており、Windows XPモードもインストールされた状態となっている。複雑な設定は必要なく、数ステップのセットアップを実行するだけでXPモードを使えるようになっている。

 R9の場合、画面解像度が狭いのでXPモードの常時利用は実用的ではないが、USBメモリーなどでのデータ交換の際に、必ずXPモードを経由するようにしておけばセキュリティー的にも安心感が増す。Windows 7はこれら付加機能もあって、XPと比べればOSが必要とするHDD容量も大きいが、R8の160GBより大きい、250GB HDDを内蔵するので問題ではない。

R9ではXPモードもインストール済み

R9ではXPモードもインストール済みだが、さすがに1024×768ドットの画面では、OSモードでは狭い。アプリケーションモードで使うべきだろう

 Let'snote R9に唯一、問題があるとすれば、ネットブック並みの大きさなのに(重さは軽いが)、価格はネットブックの4倍もするということだろうか。パソコン販売店の店頭に、手ごろな大きさのモバイルノートを探しにきたさほど詳しくない消費者から見れば、細部の作りこみや品質は見えてこないものである。Let'snoteのように国内設計・生産による徹底した品質管理体制や短納期を実現する一方で、安価なノートの約4倍もの高額商品になってしまうと、筆者のような個人事業者や一般コンシューマーは手をだしにくい。

 企業ユーザーの信頼を得るための高品質だが、そろそろこの高コスト体質は改善してはもらえないものだろうか。実際に、R8ではポートリプリケータ用コネクタやモデム機能を省略した廉価モデルも登場していた。これ以上削るところがないのはわかるのだが、長きに渡って培われてきた「コンパクトで軽量」「頑丈で静か」「バッテリーで長時間使える」などの優れたモバイルノートのコンセプトに、「手頃な価格」という項目も加えてほしいものだ。

 「なぜワイド液晶ではないのか?」や「なぜスリムデザインではないのか?」を説明するよりも、手頃な価格で幅広い消費者にその良さを体感させたほうが早いのだ。

Let'snote R9 の主な仕様
CPU Core i7-620UM(1.06GHz)
メモリー 2GB
グラフィックス CPU内蔵
ディスプレー 10.4型 1024×768ドット
ストレージ HDD 250GB
無線通信機能 IEEE 802.11a/b/g/n
インターフェース USB 2.0×2、アナログRGB出力、10/100BASE-TX LANなど
サイズ 幅229×奥行き187×高さ29.4~42.5mm
質量 約0.93kg
バッテリー駆動時間 約7.5時間
OS Windows 7 Professional 32bit/64bitセレクタブル
価格 オープンプライス(予想実売価格 17万5000円前後)

筆者紹介─池田圭一

月刊アスキー、Super ASCIIの編集を経てフリーの編集・ライターに。パソコン・ネットワーク・デジタルカメラなど雑誌・Web媒体への企画提供・執筆を行なう一方、天文や生物など科学分野の取材記事も手がける。理科好き大人向け雑誌「RikaTan」編集委員。デジイチ散歩で空と月と猫を撮る日常。近著は「失敗の科学」(技術評論社)、「光る生き物」(技術評論社)、「これだけは知っておきたい生きるための科学常識」(東京書籍)、「科学実験キット&グッズ大研究」(東京書籍)、「やっぱり安心水道水」(水道産業新聞社)など。


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