調子に乗ってカメラや表情をいじってみちゃう
絵も描いたし、シナリオ通りに音声も入れた。プレビューしてみるとヌルヌル動いてくれている。とっくに終業時間も過ぎているし、そろそろエンコードして帰ろうと思ったのだが、プレビュー動画を見ていると、思った以上にのっぺりしていることに気付かされてしまった。
物語はもちろんだが、人の心を動かすのはカメラワークと表情だ。アニメでも映画でも、その2つをおろそかにしている話はどこか上滑りして見える。シナリオは全部でたかが3分とはいえ、脚本の執筆に3時間、音声の収録に1時間もかけてしまったのだ。カメラくらいどうにかしたってバチは当たらないだろう。
まず話しているキャラクターごとにカメラを切り替えてみることに。スクリプトモードから「カメラエディター」を起動し、「自動ズーム」にチェックを入れる。するとしゃべっているキャラクターを自動でアップにしてくれる。誰かが同時に話しているときはすっとカメラを引いて2人を映してくれるようになる。漫才形式だ。完璧だ。
ところが人の欲というのはきりがないもので、もっと近くにカメラを寄せたい、右から左にカメラを引っ張りたい(パンさせたい)、と思いはじめてしまう。思ったら最後、自動ズームのチェックを外し、カメラを移動させたり、ズームしたり、画面を回転させたりと効果を試しはじめる自分がいた。
ようやくカメラワークを終えたと思ったら、煩悩に動かされるまま表情に取りかかる。いくら魂をこめたといってもやはり一枚絵だ。そのままでは能舞台と同じで観るものの想像力にすべてをゆだねるしかない。純文学や伝統芸能であればそれでもいいかもしれないが、今回の動画は分かりやすく伝える必要があるのだ。
セリフ(スクリプト)を選んで「エモーション」というタブを開いてみると、30種類の感情がずらりと並んでいる。やや怒りめのセリフのエモーションを選び、怒った顔をダブルクリックすると、キャラクターが怒り顔でしゃべってくれるようになった。
ふたたびプレビューを見て、口角を上げる。監督冥利に尽きる。これでもう動画は完成だ。あとは帰って夕ごはんの支度でもしようじゃないか。
(まだまだ続く)