自然の流れで「非マニアック」の正統派アプローチを採った
―― そこまで情熱を持ってブログを更新するモチベーションは、どう保っているんですか?
黒川 もう好きなんだろうね、単純に。それに読者やメーカーの方にも喜んでもらえるというのが、モチベーションになっていると思います。ブログを通して色々なメーカーの社長と話をする機会が増えたんですよ。社長から「黒川くんには缶詰業界をもり立てる影武者となって働いてもらいたい」と言われたこともあって……「影武者」ってちょっと言葉のチョイスを間違えてると思うんですけど(笑)。趣味で始めたとはいえ、やっぱり人の役に立てるのはうれしいですね。
―― 缶詰blogを読んでいても感じたのですが、すごく正統派のアプローチですよね。ニッチな趣味を極めたサイトやブログはサブカル視点の人が多くて、それが味になっていたりします。缶詰だったら「味はどうでもいい。それよりレアっぷりや、細かい突っ込みどころが好き」みたいな感じで。これは意図的ですか?
黒川 たしかに缶詰仲間と話していると、マニアックな視点のも多いかも。それを否定するわけじゃなくて、やっぱり好みなんですよね。自分は自分で「こういうふうにしよう」と考えたわけじゃないですが、メーカーの話を聞いていると、どういう理念に基づいて作っているのか知りたいという興味が一番強くわいてくるんです。それで今みたいなコンセプトになっているのかなと思いますね。一方で、このスタイルでやれるのは自分しかいないなという気持ちもあったりします。
―― それはバックグラウンドにライター業があるからこそですかね。慣れていないと「知りたくなったから取材にいこう」となりにくいですし。
黒川 あ、それはありますね。普段から分からなかったら取材に行けばいいやと思いますもんね。行ったら行ったで、いい缶詰があったら「もっとアピールすれば、話題を集めるのに」という気持ちもわいてきて、しっかり紹介したいというふうにもなります。やっぱり、缶詰業界は歴史的に華々しいPRをしないところがありますから、「よし、俺が」という思いも芽生えたりして。
―― ただ、ブログって基本は無報酬ですよね。それでも本業と同じように手間をかけて取材するというのは、すごいことだと思います。なにか戦略みたいなものがあるんですか?
黒川 「くらぶアミーゴ」は、誰かに見つけてほしいという気持ちもこめて、旅行記やエッセイを書いたりしましたが、缶詰blogに関しては特に考えていませんでした。お金になるなんて思いもなかったですし、現在は色々な商業誌で缶詰に関する記事を書かせてもらっていますけど、それでも生活費の足しになる程度。「缶詰博士で生計をたてよう」なんて無理な状況ですからね。
取材に行くのもブログを書くのも全部持ち出しでメーカーには「缶詰業界のために私利私欲を捨てて頑張ってくれてる人だ」くらいにしか思われていないでしょうから。メーカーから試食の缶詰が送られてくるようになったのはうれしいですけどね(笑)。
だけど正直、何かしらの方法で収入が得られる仕組みを作れたらいいなとは、最近考えてもいます。ビジネスの道筋が何もないところに切り込んでいくわけだから、うまく道を造らないと手間をかけてもお金が入る構造になりません。ここは難しい部分ですよね。
この連載の記事
-
最終回
トピックス
アンサイクロペディア“中の人”が語る、ユーモアの難しさ -
第99回
トピックス
マスコミが報じない“カルト”を記事に 「やや日刊カルト新聞」 -
第98回
トピックス
「もし森ガールが森へ入ったら」アサイさんの超地道な努力 -
第97回
トピックス
死刑は必要? 冷静に考えるためのWeb資料室「刑部」 -
第96回
トピックス
NTT研究者が“錯覚”サイトにかける純粋な感情 -
第95回
トピックス
ネットの「熱さ」、現代アートに――藤城嘘とカオス*ラウンジ -
第94回
トピックス
諸君!革命的美人ブロガー安全ちゃんに刮目せよ! -
第93回
トピックス
探検コムの「広く浅く」が深すぎる! -
第92回
トピックス
金髪ギャル語でニュートリノ、Shoさまが熱い! -
第91回
トピックス
「計画断水」知ってる? ネットで日本の昭和を振り返る -
第90回
トピックス
電子書籍を紙で売る! 「コトリコ」挑戦への道 - この連載の一覧へ