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コスト削減100本ノック 第28回

繊細で慎重な戦略が求められはじめた

【28本目】コスト削減から社員が“嗅ぎ取る”会社の危機

2010年02月10日 09時00分更新

文● 吉川大郎/TECH.ASCII.jp

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この会社に未来はない!
コスト削減から社員が“嗅ぎ取る”会社の危機

 実はこのアンケート、自由回答欄も設けられていて、その回答が、より先鋭的にコスト削減とモチベーションの関係を浮き彫りにしている。

 たとえば第1弾問5の、コスト削減で退職(転職)を考える理由に関しては、会社の状況が分かってしまった、未来に希望が持てない、収入が落ち込んだ……など、「この会社どーなの? 大丈夫?」といった意味合いの言葉が、自由回答欄に並んでいた。

 つまり、単に“モチベーションの低下”といっても、「なーんか、やる気なくなっちゃったなー」という愚痴レベルではなく、「この会社にいたら危ないのかも。希望はなさそうだ」という深刻な意味合いが含まれている。自分の未来と会社の未来を重ねて見られない状態というのは、社員と会社の双方に危機的な状況であると言えよう。

 ただ、だからといってコスト削減施策が必ずしも現場のモチベーションを奪い取ってしまうというわけではない。自由回答欄の中には、業務が効率化された! といった内容のものや、社長の遊行費が減ったのでヨシ! という、ちょっとアブないが歓迎するものまであって、すべてのコスト削減が後ろ向きに捉えられるというわけではなさそうだ。

 いずれにせよ、救いなのは前述したとおり経営層もコスト削減による社員のモチベーション低下についての懸念を持っていること。そういう意味では、両者にモチベーション低下に対する危機意識のズレは見られない。ということは、今後の課題としてモチベーションを下げないコスト削減の方法が模索される可能性は高いと言えそうだ。

コスト削減策は今
曲がり角を迎えている

今回の調査でモチベーションにフォーカスしたのは分かったが、そもそもコスト削減をテーマに選んだのは何故だろう? 塚元氏は、あるひとつの仮説を立てた。

塚元氏 2008年のリーマンショック以降、「コスト削減」という声が大きくなり、各企業は至上命題でやってきました。また、リストラや給与削減といった現場で、コスト削減という言葉を多く耳にもしました。コスト削減は、当初は間接費用の削減という形で行なわれてきましたが、昨年あたりから現場レベルに落ちてきています。リストラや“派遣切り”もそうでしょう。今現場では何が起こっているのか? それを知るために調査を開始しました。

編集部 しかし設問項目を見ると人員削減などシビアな内容にはあまり触れていません。それは何故ですか?

塚元氏 あまりシビアなところを聞いてしまうと、回答数が低くなってしまいます。仮説は仮説として、まずは広義的に聞いていこうということになりました。特に現場がどの程度コスト削減を肌で感じているのか? ということも知りたかったですし。

編集部 結果が出てどうでしたか?

塚元氏 仮説からは大きくブレていませんでしたね。現場の細かいところまでコスト削減の動きが波及していました。即効性のある、直接的なコスト削減が行なわれていますね。社員もそれに対して切迫感が大きくなっていて、モチベーションの低下に結びついています。

 コスト削減が大きな流れになったのはリーマンショック以降で、まだまだその方法についてまで認識が進んでいない状況です。モチベーション対策も含めたコスト削減策を、これからどうしよう、というタイミングが、今だと言えるでしょう。

 社員の心を暗くするようなコスト削減は危ない。特にカラーコピーの全面禁止や通信費の削減(会社の携帯電話を取り上げて携帯電話代金を自己負担にする=第1弾 問1)など生活感あふれるコスト削減は、モチベーション低下に直結する。「会社は前に進んでいる! このコスト削減は業績アップに直結している!」と感じさせるコスト削減策=希望を生み出すコスト削減策が、いま望まれているのではないか。

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