このページの本文へ

四本淑三の「ミュージック・ギークス!」 第15回

著作権は自分で決める 音楽家・まつきあゆむの方法論

2010年02月06日 12時00分更新

文● 四本淑三

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

結論は「MP3でも全然泣ける」というキャッチフレーズ

取材に使わせていただいた、自宅兼スタジオの様子。左がいつも使っているパソコンデスク

―― 「一億年レコード」に至る流れもその辺から?

まつき インターネットという武器を手に入れて、前からやっていたスタイルにそれがフィットした結果「一億年レコード」が出来上がったんじゃないかと思っています。そもそも次の作品はCDで出したくないという気持ちがあったんです。でも、他にどうやっていいか分からん、というところにTwitterやUstreamがあって。

―― CDで出したくなかったのはなぜ?

まつき ほとんどiTunesで聴いていたので、好きな音楽をCDで買いたいと言う気持ちがなかったですね。

―― でも「一億年レコード」にはCDのようなアートワークも付いてますよね?

まつき 音楽がCDでもレコードでもMP3でも有効なように、アートワークも紙媒体だろうがPDFだろうがJPEGだろうが、感動するものはする、というコンセプトで作ったんです。「どう、これ壁紙にしたいだろ?」くらいの気持ちで。

―― アルバムもダブルアルバム構成で、物理メディアを意識してますよね。

まつき 持っていた価値観は全部棄てていないということです。それが「紙じゃないと出来ないことではない」とは大々的に言って行くけど、紙が素晴らしくないとも思ってないから、その良さを出したかったんです。

▲ 1億年レコードのプロモーションビデオはYouTubeに投稿されている

―― CDで出さなかったことへの反応はどうですか?

まつき もちろん批判もいっぱいもらいましたよ。ひとつは音質の問題なんですが、ぼくの最終的な結論が「MP3でも全然泣ける」というキャッチフレーズになったんです。CDかMP3かを気にして音楽を聴くのは面白くないから。それでパソコンを持ってない人が、わざわざパソコンを買ってから「一億年レコード」を買ってくれたりもしましたから。

―― それすごいですね。オリンピックを観たいから地デジ対応テレビを買うような。

まつき もうひとつは、モノとしての概念の問題ですね。モノとして手に入れるワクワク感が欲しいという人たちに、違う可能性をどう提示して行くか。

―― でも手に入れる儀式感はありましたよ。申し込んだけど、すぐにはメールの返信が来なくて、まつき君まだ寝てるのかなー? なんて想像したり。

まつき 「一億年」レコードのダウンロード開始直後は、アクセスが集中してなかなか落とせなかったんです。でも、それって人が(レコード屋に)たくさん並んでるってイメージじゃないですか。それも含めて良かったと思うんですよ、「一億年レコード」の思い出として残るから。インターネットが実は肉体的に使えるメディアだったなと。

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン