動画配信だけでなく、インターネットサービスを網羅的に
まずはDivX TVの説明から入ろう。簡単に言うと、テレビでインターネット上のコンテンツを見られるサービスである。日本のユーザーであれば、アクトビラを思い浮かべればいい。
DivXで動画配信と言うと、過去に同社が無料で提供していた動画共有サービス「Stage 6」を思い出す人がいるかもしれない(関連記事)。Stage 6はDivXコーデックを使ってネットでも高画質の配信が可能になる点を世に知らしめたいという意向が強く働いていた。一方、DivXではビデオフォーマット・再生環境・配信の仕組みという基本的な部分をDivXが準備し、ライセンスを通じ互換性にも配慮する点に重点が置かれている。コンテンツに関しては、専門の事業者が用意し、DivXは裏方に徹する。
DivX TVを利用するためには、テレビなど機器側にDivXデコーダーやDRM機能などを含む専用のICチップを搭載する必要がある。DivX TVのユーザーインターフェースはインターネット上にあるDivX TVのサーバー側に置かれており、ライセンス企業(テレビメーカー)の要望に合わせてDivXがカスタマイズする。例えば、画面上に企業やブランドのロゴを追加したり、レイアウト変更などが可能。テレビメーカー側の開発工数も、自社の製品の操作メニューの中に、DivX TV専用ブラウザーを呼び出すための項目を追加するなど、最小限で済むという。
サービス開始にはまだ間があるが、現状で70社を超すコンテンツプロバイダーが協力する意志を示している点も注目だ。映像配信だけでなく、Googleの写真共有サービス「Picasa」、RealNetworksの音楽配信サービス「Rhapsody」、「Twitter」なども含まれている。
冒頭に述べたように、動画配信サービスの数は増加傾向にあるが、大企業からベンチャーまで数多く選択肢が存在する現状を考えると、テレビメーカーが個別に対応していくのは大変だ。開発に投資したもののサービスが数年で閉じてしまうというリスクもある。ポータルの形で一括してコンテンツを提供することで開発側の負担は減る。家電機器への搭載で培った互換性の高さ、長期に渡ってサービスを提供できる企業としての体力などもウリにできるというのがDivXの主張だ。
なお、テレビ側にウェブブラウザーを搭載し、完全なウェブサービスとして提供する選択もあると思うが、DivX TVのアプローチは異なる。「専用にする理由はパフォーマンス」とのこと。アクトビラなどを使ってみれば分かるが、テレビの限られたCPU性能ではこういったアプリケーションを快適な速度で動作させるのは難しい。Flashひとつとっても、家電機器で動かすのはなかなか大変だ。UIのカスタマイズ性も低く、メーカーがこだわったデザインを追求することが難しい。