サーバOSが誕生するまで
そもそも、初期のコンピュータにはネットワーク機能は存在していなかった。コンピュータを使う唯一の方法は、コンピュータのある場所まで出向いて、データを入力し、プログラムを実行して、結果を受け取ることだった。データ入力にはパンチカードや紙テープが使われ、結果の表示にはプリンタが使われた。のちに、入出力の両方を行なえる「ビデオディスプレイターミナル(VDT)」が発明され、遠隔地から利用できるようになったが、VDTにはデータ処理能力がなかった。このような形態を「ホスト端末システム」と呼ぶ(図1)。「端末」はTerminalの翻訳である。1980年代からコンピュータのネットワーク化が徐々に進んできたが、入出力の中心は相変わらず端末であり、ユーザーから見た場合の違いはあまりない。
1981年にIBM PCが発表されると、PCを端末として利用するためのソフトウェアも登場した。しかし当時のPCのおもな目的はローカルでアプリケーションを実行することであり、現在のようなネットワーク機能は搭載されなかった。PCによるネットワーク機能が利用できるようになったのは、1984年のMS-DOS 3.x用にMS-NETWORKSが登場してからである。PCにネットワーク機能が搭載された最初の目的は、LANによるファイル共有とプリンタ共有であった。ファイル共有機能を提供するコンピュータが「ファイルサーバー」、プリンタ共有機能を提供するコンピュータが「プリントサーバー」だ。
その最初の成功者が、米ノベルによる「NetWare」である。NetWareはHDDアクセスの高速化に加え、一度読み出したファイルをメモリ上に保存して再利用に備える機能(キャッシュ機能)を搭載。これらを効果的に使うことで、見かけ上はローカルディスク以上の性能を実現した。NetWareは既存のどのOSとも互換性がなかったが、それ故に高度な最適化を施すことができたようである。もっともNetWareはOSとしては不完全で、できることが限られていた。管理作業の多くは、NetWareクライアント機能を組み込んだMS-DOSから行なう必要があった。さらに独立したクライアントOSが存在しなかった。一般的には、MS-DOS上でクライアント機能を実行することでNetWareクライアントとして利用した。少ない機能は、限られたサーバー能力を効果的に使うためでもあった。
もっとも、当時はネットワークインターフェイスカードも高価だったし、MS-DOSにネットワーク機能を組み込むのも面倒な作業が必要だった。さらに、ネットワーク機能がメモリを大量に消費したため「ネットワーク機能を組み込むとアプリケーションが動作しない」という笑えない状況にしばしば直面した。
(次ページ、「MSのネットワーク戦略」に続く)
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