日本の携帯電話は安全か?
結論を先にいうと、日本の携帯電話は安全といってよいだろう。まず、日本の第2世代携帯電話は、NTT独自のPDC方式を採用しており、GSMの解読方法が見つかっても直接的な影響はない。
さらに、第2世代携帯電話自体が、そろそろ終わろうとしている。まず、auではすでにPDCから第2.5世代と呼ばれているcdmaOneに移行している。ソフトバンクモバイルは2010年3月31日にサービスを停止し、第3世代携帯電話へ完全移行する。そして、NTTドコモも第2世代携帯電話「mova」を2012年3月31日で終了する予定だ。
第3世代携帯電話の規格では、GSMやPDCとは異なる新しい暗号化技術が採用されている。NTTドコモ、ソフトバンクモバイル、イー・モバイルが採用している「W-CDMA」では、暗号化技術として三菱電機が開発した「KASUMI」を使っている。そして、auの「CDMA2000」が使うのは、無線LANのセキュリティにも採用されている「AES(Advanced Encryption Standard)」だ。どちらもアルゴリズムを公開した暗号でありながら解読する手段が確立していない、現時点では安全とみなされている暗号システムだ。
さらに、第2.5世代および第3世代携帯電話の通信方式には、TDMAではなくCDMA(Code Division Multiple Access)を利用する(図2)。
携帯電話は、音声をデジタル変換に変換して音声データとし、暗号化を行なう。続いて、基地局に送信するため電波に置き換える。これを「一次変調」と呼ぶ。一次変調しただけの電波は、ビットパターンに対応付けられた電波になるため、特定の周波数範囲が使われる。そのため、このままでは暗号化された音声データを盗聴される危険がある。
CDMAでは、一次変調に続いて、一次変調した電波に拡散符号(PNn)をかけ合わせる「二次変調」を行なう。二次変調で拡散符号をかけ合わせることにより、広い周波数の範囲に信号が分散する。
このようにして拡散した電波が、同一周波数でそれぞれの携帯電話と基地局間でやり取りされる。CDMAで無線通信している区間は、いわば常時混信した状態にあり、第三者が電波を傍受しても雑音にしか聞こえない。CDMAという通信技術そのものが暗号化通信といえるのである。
この混信した状態にある電波も、受信側で二次変調に用いた拡散符号を使って逆拡散すると、その拡散符号で拡散した電波だけを元に戻し取り出すことができる。基地局側では通信している携帯電話の拡散符号を持ち、携帯電話はそれぞれが異なる拡散符号を持つ。基地局では受信した電波からそれぞれの携帯電話の情報を取り出すことができ、携帯電話は自身あての信号のみ取り出せるわけだ。
GSMで用いられているTDMAに比べ、CDMAは格段に盗聴の難しい通信システムとなっているのだ。
以上のように、第3世代携帯電話は、新しい暗号アルゴリズムでデータを暗号化され、さらに傍受の難しいCDMAを採用しているため、盗聴されない安全性が確立されているといってよいだろう。
(次ページ、「GSMの暗号方式」に続く)
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