ライブが見えない曲を作ってもいい
――そこから初音ミクで音楽に戻ったのは?
古川P バンドやってた時の先輩が誕生日にくれたんです。でも、もらったはいいんですけど、家のパソコンは古いMacだったんで、しばらくは放置してました。
――Macじゃ動かないですからね。
古川P それまでニコニコは「料理」タブしか見ていなかったんですが、たまたま(初音ミクの動画を)見てこれは面白そうだと。当時は初音ミクってクリプトンが後押しして5~6人でやっているものだと思っていたんですよ。今みたいにたくさんの人がやっているものだと思ってなかったですね。その後、パソコンをWindowsに買い換えたのをきっかけに始めました。それが去年の6月ごろですね。
――まだ半年なんですね。もう古川Pって確固たるブランドを築いているのに。バンドから初音ミクとDTMに切り替えてどうですか?
古川P 女の子ボーカルってやったことなかったんですよ。もともと人付き合いがいいほうではないので、誰にも会わないで1人でやって女性ボーカルできるなんて「なんと俺向きな!」と思ってました。
――バンドの時は何をやっていたんですか?
古川P ギターです。今でこそ、そこそこなんとかなりますけど、当時は弾きながら歌うのが全く出来なかったんです。コーラスしないわ、MCさせたらムダに長いわで、バンドの後半は僕の前にマイクすら置かれてなかったですね。
――そんなに喋るんですか。ギターロックからエレクトロニカ調のスタイルへ移行したのは?
古川P 動機は単純に初音ミクの声質ですね。当初はダフトパンク的なデジタルボイスという認識だったので、曲もピコピコしてたほうが良いのかなと思ってました。そういう曲は素養がなかったので結果的には作れなかったですが……。今までならライブが見えてこない曲を作っても、事務所に怒られるのがわかっていたので抑えてたんですけど、今なら色々ジャンルにこだわらない音楽ができるじゃんと。
――バンドの制約がなくなったところで表現の幅は広がったわけですね?
古川P と思ったんですが、意外と自分に幅がねえなあ、と。自分のことはやれば出来る子だと思ってたんですけど、バンドっぽさから抜けないというか。今のところ自分の中の枠を飛び出したものを作れたという気はしていないです。
――言葉の選び方に特徴があると思うんですが、好きな作家は。
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古川P 中原中也さんですね。それと川上弘美さんが好きですね。ふたりとも毛色は違いますけど。歌詞、という点で言うなら大槻ケンヂさん大好きですね。
――歌詞はかなり考えて作ってますよね?
古川P 曲より詞の方に時間かけますね。文章として読んだときにいかに美しいか、声に出して朗読したとき、メロディに乗せたときに発音としていかに気持ち良いかというのは常に考えています。それでメロディーが変わるのであれば、それも仕方ないと思ってます。
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