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人気ボカロPV作家が語る、どん底からの再出発

2010年01月22日 12時00分更新

文● ASCII.jp編集部

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ブラック会社で鬱になり、そのままネトゲ廃人に

―― 趣味での制作はどのくらい続いたんです?

三重 21歳までの2年くらいだったと思います。そのとき「同人ゲームのオープニングを作りたいな」とふと思いたって、そういう掲示板に書き込んだことがあったんですね。そうしたらなぜか、商業ゲームのメーカーから連絡があって。

―― 晴れてゲームの映像を担当することになったと。お給料ってどのくらいなんです?

三重 雇われたときの初任給は時給にしたらコンビニのバイトより安いくらいでした。時期によっては、それで1ヵ月間会社にカンヅメで作りつづけていて。それでもやりつづけていたんですが、徐々に病んでいったんです。

掲示板のカキコミがきっかけとなり、ゲームのデモムービーなどを作るようになった。だが、その仕事はあまりに過酷なものだった

―― いわゆるブラック会社ですかね。時間に追われるのが一番きつかった?

三重 仕事なので自分がやりたいようにも出来ないし、作りたくないものを作らされることも多くて。今は18禁ゲームのほとんどが凌辱系のものなんです。で、1週間~2週間ずっとそういう絵と格闘するわけですよ。それでも続けていたんですが、後半はもう死んだ魚の目をして、気づけば体重が20キロ近く減ってました。

―― 地獄ですね。

三重 で、次第に動画を作ることが苦痛になってきたんです。一年半くらい作りつづけた、23歳くらいのとき。それで仕事をやめてネトゲ廃人になりまして。ゲームの仕事をはじめたときは、一度大阪から関東に出てきてたんですが、また親戚が住んでいた三重に移って。

―― だから三重の人! そこでニコニコ用の動画を作るようになったという?

三重 いや、もうそのときは病んでますからAfter Effectsを見るのもイヤで、まったく動画は作ってません。三重に引っ越してから2年半くらいはずっとMMO RPGばっかりやってました。黒歴史ですね。

―― そんな中でボーカロイドに出逢ったのはいつごろだったんです?

三重 廃人の後半ですね。初めて聞いたのはたまたま伸びてた「メルト」だったんですがそこではハマらず、ネトゲの知り合いからmp3をZIP圧縮したものを「とりあえず聞いてみろ」と送られてきたのがきっかけになりました。

―― 圧縮ファイルには何が入っていたんですか?

三重 ゆうゆPさんの「白の季節」、そそそPさん(関連記事)の「サヨナラ」が入っていて、白の季節がすごく好きになったんです。バラードが好きなんですよ。それで本格的にボカロを聴きはじめたのが一昨年です。今住んでいる埼玉に引っ越してくる、1ヵ月くらい前ですね。



―― それでもまだ動画を作ろうとは思わなかったんですよね。PVに踏み込むきっかけになったのはどの曲だったんですか?

三重 Shikiさんの「Setsuna」です。Shikiさん自身はもともとBMSで知っていたんですが、まさかボカロを作っているとは知らなかったので。PVを見て「面白い画面だな……」と思っているうちに、作ってみようかという気持ちが芽生えてきたんです。



BMS : コナミのアーケードゲーム「ビートマニア」を模倣した「BM98」という音楽ゲームで使われるフォーマットのこと。BMS形式で楽曲データを配信し、プレイするというスタイルが2ちゃんねるのDTM板・ゲーム板を中心に流行したことがあった

―― どうしてそんな気持ちになれたんだと思います?

三重 好きなように動画を作っていて、それを気に入ってもらっている、という関係に見えたというのが大きいです。再生数がどうかというより、自分が納得できるか。作ってて楽しければオッケー。ウケるかどうかをあまり考えずに作りたいと。

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