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林信行が語る「2010 知っておくべき10のトレンド」【後編】

2010年01月21日 12時00分更新

文● 林信行

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1位 メディアコンバージェンス

 iPhone、Androidの話題を2位に置いてまで1位に選びたかったのが、「メディアコンバージェンス」(メディア融合)というテーマだ。最初はアップルが28日(米国時間の27日)に新デバイスと一緒に発表すると言われている「電子ブック」にしようと思ったが、それでは狭すぎると考えた。


「面白い」のポータルになるTwitter

 実はiPhoneとTwitterが広まった2009年、すでにメディアの壁は決壊している。

 繰り返しになるがTwitterでは、テレビで面白い番組がやっていることをほかのユーザーのつぶやきで知り、あえてザッピングをすることもなくTwitterの話題に合わせてダイレクトにチャンネルを切り替えるというユーザーが増えてきている。そして、テレビを見ながら感想をTwitterに書き込んで、体験を共有するのだ。

 同じTwitterで、今度はUstreamの実況が話題になっていたら、テレビを消して、すぐに放送を見始める。興味がありそうなラジオ番組の話題がでてきたらラジオを、ウェブページのURLが含まれていたら今度はウェブページを読み始める。

 Twitterにハマっている多くの人々は、自分の自由にできる時間の有効な使い道を、常にTwitterで探しているのだ。

 多くの場合、自由時間を最も楽しく過ごせるコンテンツは、テレビ、ラジオ、Ustreamといった、時間軸の点で新鮮なリアルタイムの情報である。

 場合によっては自分の知り合いが関与している親密軸が強いコンテンツや、今、いる場所/実家/職場に関連した空間軸が近いコンテンツ、または自分の趣味嗜好に合致した興味軸が近いコンテンツが気になることもあるだろう。

 いずれにしても、そうした面白い情報を発見するポータル、あるいはポインターがTwitterになりつつある。メディアは異なるフィールドでコンテンツを提供してきたが、もはやその壁が決壊し始めているのだ。


iPhoneでもなくなるメディアの壁

 iPhoneの上でもメディアの壁が決壊しつつある。

 日本のiPhoneでは、新聞紙面をそのまま読める「産経新聞」(iTS)や、「マガストア」(iTS)で売られている雑誌がよく読まれている。最近になって、ここに「TOKYO FM」(iTS)などラジオ局も次々とiPhoneアプリをリリースし始めた。iPhoneは携帯の電波さえ入れば聞けるというラジオにもなりつつあるのだ。

産経新聞。価格は無料

マガストア。価格は無料だが、コンテンツを読むためにはアプリ内で購入する必要がある

TOKYO FM。こちらも価格は無料だが、アプリを使える地域が首都圏に限られる

 これがさらに進んでいる米国では、いくつかのテレビ局もiPhone用アプリを提供して、ニュース番組などをいつでも好きな時間に見られる環境を整えている。

 新聞、雑誌、ラジオ、テレビといった別々のメディアが、ジャンルの壁を越えて、iPhoneのホーム画面を奪い合っているのだ。

 AmazonのKindleの国際展開が始まって、アップルの新製品でもウワサ通り「電子書籍」の流通がキーワードになるとすれば、まっさきに改革を迫られるのは出版業界だろう。ただし、ラジオやテレビといったほかのメディアも、これを対岸の火事として見ていてはいけない。

 日本では、まだ放送と通信の区別にこだわる人もいるかも知れないが、世界ではそんな壁はとうの昔になくなっているのだ。

 ここで現実から目をそらして、音楽業界の後を追うのか、それともまったく違う未来を自ら切り開くのか──。選択をするのは2010年しかない。

 この2010年におけるメディアの対応で、2011年の地上デジタル放送がスタートしたあとのシナリオも大きく変わってくるはずだ。


筆者紹介──林信行


林信行氏

林信行氏

 フリーランスITジャーナリスト。「iPhoneショック」(日経BP)の筆者。大学や企業で講演をしたり、製品/技術開発のブレインストーミングに参加することも多く、製品コンサルタントとしての顔も持つ。ジャーナリストとしては、デジタル技術によって変わる人々のライフスタイルやワークスタイルに大きな関心を持つ。ハード、ソフト、ウェブの技術だけでなく、アートやデザイン、コンシューマーやIT系企業の文化についても取材/執筆活動をしている。

「MACPOWER」「MacPeople」元アドバイザー。著書に「スティーブ・ジョブズ ー偉大なるクリエイティブディレクターの軌跡」(アスキー・メディアワークス)、「アップルの法則」(青春出版)、「アップルとグーグル 日本に迫るネット革命の覇者」(共著、インプレスR&D)など。自身のブログは「nobilog2」。



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