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林信行が語る「2010 知っておくべき10のトレンド」【後編】

2010年01月21日 12時00分更新

文● 林信行

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2位 iPhoneとAndroid

 昨年を通して、日本で最も売れた携帯電話、iPhoneは、2010年を通しても主役の座を守り続けるだろう。おそらくこの夏には、より高速で、写真や動画をより高画質で撮れて、GPSなどの精度も高まった新型iPhoneも出るはずだ。それより先に、アップルが米国で27日(日本時間の28日)に予定している製品発表会で、ひと回り大きい新しいiPhoneが発表される可能性もある。

 本体の動向を別としても、今年もiPhoneは大きな動きを見せることは間違いない。では、何が変わるのだろうか?


アクセサリーの拡大で優位を確保するiPhone

iPhone 3GS

iPhone 3GS

 まず、いよいよiPhone用のアクセサリーが本格的に整備され始めそうだ。昨年、iPhone 3GSと共にリリースされた新OS「iPhone OS 3.0」では、Dock端子につないで使う周辺機器が開発できるというメリットが発表されていたが、これまではそうした周辺機器をほとんどみかけなかった。だが2010年になって、ようやく実際の製品が出てきそうだ。

 意外にも最初に揃ったアクセサリーは、クレジットカード決済ができる装置やバーコードリーダーなど、決済系に絡むものがなぜか多い。

 19日にはついに米モーフィーとフライトシステムコンサルティング、フォーカルポイントの3社の共同プロジェクトとしてFelicaカードのリーダー/ライターが発表された。同製品を使えば、iPhone上のアプリを起動して、iPhoneの背面に備えたSUICAカードの購入履歴を表示できる。また、iPhoneからSUICAへのチャージにも対応する予定だ。

 これまで他社が同様の製品を出してこないことからも、こうした製品の開発には技術以外にもさまざまな障壁があることが予想できるはず。ただ、そんな中でもこの種の製品を出すメーカーが現れたことは歓迎すべきことだ。

いずれにせよ、こうした製品の登場もあり、今後はiPhoneが、流通業や小売店業からも大きな注目を集めそうだ。もし、本体価格が安く、インターネット常時接続機能も備えた汎用のiPhoneが、輸送/配達の管理やキャッシュレジスターの代わりを果たしてくれたら? そう期待している流通/小売り業者は日本にも多い。

 こうした小売業におけるiPhoneの利用を真っ先に率先してみせたのが、米国のアップル直営店「Apple Store」だ。ジャーナリストの松村太郎氏は、今年初めに米国のニューヨークにある「Apple Store Fifth Avenue」を訪れた際、iPhoneを使ったクレジットカード会計システムが導入されていたと自身のブログでレポートしている(関連リンク)。

 今後はこれと同様な、無粋なレジスターいらずの、顧客を待たせないクレジットカード決済が、日本でも、高級ブティックショップなどを中心に採用され始めそうだ。

松村氏がUstreamで撮影したiPhoneを利用するApple Storeの会計システム。iPhoneでバーコードを読み取って、クレジットカードを通すという流れだ

19日には、米モーフィーとフライトシステム コンサルティング、フォーカルポイントコンピュータの3社がFeliCa ベースのモバイル電子決済ソリューションを開発していることを発表した。今年春に発売する予定だ

 こうした法人利用や周辺機器との連携は、Androidに対するiPhoneの優位な特徴と言える。

 というのも、Androidは、まだ法人向けセキュリティー機能などでiPhoneに並ぶレベルには達していないし、スピーカーやカーオーディオシステムといった周辺機器も揃っていない。Androidは、今、まさに製品バリエーションが増えていくところで、周辺機器を作ろうにもルールが決まっておらず、どのように対応したらいいか分からない状況だ。


今年が正念場のAndroid

Nexus One

グーグル自身もAndroidケータイ「Nexus One」をCESで発表して話題を呼んだ

 そうはいっても、今年はAndroidが、去年以上に大きな注目を集める年でもある。特に今年はクアルコムの高速CPU「Snapdragon」を搭載した端末が登場して、ようやくAndroidも実用レベルに達しつつある。日本でも3、4キャリアから、数種類のAndroid端末が発表されることが期待できるだろう。

 ただし、AndroidをITに不慣れな一般ユーザーに勧めるのは、もう少し待った方がいいかもしれない。

 標準搭載機能をそれなりに洗練させている端末もあるが、全体としての使いやすさの洗練度では、まだiPhoneに及ばないところも多い。リリースされているアプリも種類、数ともにiPhoneには遠く及ばず、まだ技術色の濃いアプリが目立つ。実際に「Android Market」で検索し、どんなアプリが揃っているかを確認してから買っても遅くない。

 Androidが大きく飛躍できるどうか、その鍵を握っているのは互換性と利益配分だ。

 まずは互換性だが、さまざまなメーカーから、異なるデバイスが出てきたときにアプリの互換性をどう保つのか。また、シャープなどの携帯電話メーカーがAndroid端末を出すことで、日本が「ケータイ」で突き詰めてきた機能と「スマートフォン」の融合がついに始まるが、その親和性がどれくらい高いものになっているか。

 そして何よりも一番、大事なのが利益配分だ。日本の携帯電話業界でこれから重要な柱となるAndroidを発売するにあたって、キャリアとメーカーでどのように利益を分けるか。

 iPhoneは端末を売ったあとも、App StoreやiTunes Store、サポートサービスの販売などで、メーカーであるアップルが利益を得られる仕組みを設けていた。一方、これまで、日本のメーカーは端末を作ってキャリアに納めたら、それ以後の儲けがないというビジネスモデルだった。しかし端末の開発費用がかさみ始めてきたことで、メーカー側の負担がどんどん大きくなっている。

 Androidの本格的な販売にあたっては、キャリア側からメーカーに売れた端末の台数に見合うマージンなどを、月額基本料金から返すなどの措置があってもいいのかもしれない。いい端末を出しているメーカーであればあるほど、マージンを要求しやすいだろう。

 そうでなければ、キャリア単位での端末販売の拘束を解いて、日本メーカーのAndroid端末を海外でも販売できるようにすべきだ。もっとも、そうなると当然、日本メーカー製のAndroid端末が(日本独自の機能を差し引いた状態で)どれだけ世界に通用する仕上がりになるかも重要な論点になってくる。

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