2010年の10のトレンド
長い前置きを経ていよいよ本題だが、その前にもうひとつだけ言わせてほしい。
世の中の多くのトレンドは、人々に認知されて広まっていくフェーズと、そこから発展していくフェーズがある。2009年はiPhone 3GS、Twitter、Ustreamが普及したという、ある意味、大型トレンドの当たり年だった。今年はこれらのトレンドが深まって発展していくフェーズにある。
それだけに新しいキーワードを説明するというよりは、すでにあるキーワードの新しい見方を紹介しているものが多くなった。見出しだけ見ると、少々つまらない印象を受けるかもしれない。
だが今年、これらの実証済み技術が深堀りされることで、2011年に今のわれわれには想像もつかない未来が拓けていると考えると、かなりエキサイティングなことだと分かるはず。早速、10位から取り上げて行こう。
10位 スナップビデオ
2009年秋には、ビデオ撮影可能なiPod nanoが発売された(関連記事)。その後、iPhoneでもビデオの撮影/加工/編集を実現したアプリが続々登場している。
iPod nanoの動画撮影機能
今から20年前、1990年頃にQuickTimeが登場して以来、動画テクノロジーやビデオ編集ソフトは数多く生み出されてきている。しかし、動画の取り込みや編集には、高速なCPUと大量のHDDスペースが必要な上、実際の作業もメモリー/テープ/HDD/DVDといったように、異なるメディアを行き来する手間がかかっていた。
このため実際にパソコンで「ムービー」を編集しているのは、子供が生まれたばかりの親や、じっくりと趣味に時間を費やすことができるリタイア組だけで、それ以外の層にはなかなか広がりにくいところがあった。
では、最近になってビデオ編集の何が変わったのか。
例えば最新のiPod nanoを見てみると、リアルタイムの映像効果が大きな特徴だ。iPod nanoで動画を撮影しながら、デジタル加工で変形する友達の顔を眺めるなど、面倒な「取り込み/編集/書き出し」というステップを踏まずに、そのままiPod nano単体で動画を楽しむことができる。
リアルタイムの映像効果(撮影/週アスPLUS)
iPhone 3GSでは、「ReelDirector」などのビデオ編集アプリが注目を集めている(iTS)。こちらも今までのビデオ編集とは少し趣が異なる。iPhone 3GS単体で撮影し、ほかの動画と組み合わせたり不要部分をカットしたりして、完成したものをiPhoneの画面上で楽しむ──。やはり取り込みと書き出しのステップが不要になっているのだ。
こうした気軽に撮って、気軽に楽しむ動画について、昨年末、Apple Store Ginzaで開催されたイベントに参加していた「はぴぃ」(@hapi3)さんや「ken」(@ken3tv)さんは「スナップビデオ」と呼んでいた。非常にいい言葉だと思うので、ここでも使わせてもらっている。
もちろん、これまでのビデオカメラでも同様のことはできていた。しかし、多くの機器は撮り貯めた動画から目的の動画を見つけだすのに時間がかかったり、動画を見るには画面や音が小さすぎたり、視野角が狭すぎて友達と一緒に楽しむのには向いていなかったりと、やはりパソコンでの編集を前提としているフシがあった。
2009年に登場したiPod nanoやiPhone 3GSでは、この障壁を乗り越えつつあるように感じる。
もちろん、ビデオカメラでもより少ない手間で動画を取り込めるようにするために工夫が進んでいる。例えば、三洋電機が米国のみで発売している最新型のビデオカメラ「Xacti」には、「iFrame」という動画フォーマットで記録するモードが用意されている。これはMacの動画編集ソフト「iMovie」も対応している圧縮率の高いフォーマットで、取り込み時間の短縮を図っているものと見られる。