あの難波弘之氏も絶賛!?
――で、そのトーンホイールで作られた正弦波を混ぜて音を作るわけですよね?
笠谷 そうですね。ハモンドには9本の「ドローバー」があって、それぞれ9段階の引き出し量を持たせている。それで加算合成をやっているわけです。基音に8個の倍音を足していって音を作るという方式です。Pocket Organにも9本のドローバーがあって、9段階の引き出し量が設定してあります。
――それで本物と同じ音作りが楽しめると。ということはオシレーターも9個使っているということですよね?
笠谷 実際には和音を弾くので、オシレーターは9×指の数ということになるんです。
――それは結構大変な処理じゃないですか?
笠谷 だと思いますね。でも同時発音数の上限は設定していません。指5本で弾けるだけなので。
山崎 試しにやってみたんです。グリッサンドはタッチパネル上では弾けないので、加速度センサの入力からMIDIデータを再生して鳴らしているんですね。その時に10音同時に鳴るデータを作ってみたけど、結構音が飛んでました。結構な負荷はかかっていると思います。
――面白いのはレスリースピーカーの回転を変えられるじゃないですか※1。SLOWからFASTに変えた時の立ち上がりですね。回転スピーカーの慣性がちゃんと表現されていてすごく気持ちいい。
山崎 あれいいでしょ? あの立ち上がりと回転落ちのスピードにはこだわったんですよ。あと本物のハモンドオルガンにはないんですけど、プリアンプを通したときのようなオーバードライブもかけられます。
――ユーザーの反応はどうですか?
山崎 面白がってもらえてますね。マニアックな方ほど特に。そうそう、このあいだ難波弘之氏に会ってPocket Organ C3B3とManetronを見せてきたんですよ。「よくできている!」「レスリーとオーバードライブがすごくいい!」って褒めてくれました。
――おお、それはすごい!
山崎 ただ、最後に一言。「レスポンスが悪い」と。
――それはタッチパネルの宿命ですよね。それを考えるとYouTubeのデモ演奏は相当頑張ってますよね。
山崎 いやー、あれは相当練習しましたから。音は上手く弾けた部分をつないで、映像は当て振りです。プロの演奏家はミリ秒単位のレイテンシーを感じる取るのでしょうがないですね。ただ、他の楽器アプリと比較すると合格レベルのレスポンスは確保してます。
――「BURN」なんかはPocket Guitarも駆使して大変な事になってますが。
山崎 あのギターパートはマネトロンズの松尾さん※2にお願いしようと思ったんですが、弾けないって。それで和音の構成音をバラバラに撮って重ねるという手法で。何か必死さが出ていて面白いと思うんだけど。
※1 スピーカーの回転 : レスリースピーカーはキャビネット内のローターを回転させることで、出力に位相の変化を与えて独特のコーラスサウンドを生んでいる。
※2 マネトロンズ : 山崎さんを中心に結成されたiPhone/iPod touchの楽器アプリを駆使したバンドユニット