Pocket Guitar作者とManetron作者の出会い
――またマニアックなものを作りましたねえ。まず今回はなぜハモンドなんですか?
山崎 前の取材のとき、ソリーナとかミニムーグをやってみたいって話をしたじゃないですか。メロトロンに続く、ビンテージキーボードシリーズの一環ということですね。
――じゃあアプリを鳴らしながら話を続けま(iPod touchを取り出し、Pocket Organ C3B3を起動)……あっ!
(ガシャーン!)
笠谷 ははは。振ると出ちゃうんですよね。リバーブショックの爆裂音。
▲リバーブショックの爆裂音とはこれだ!
――アプリをインストールして最初にこれを聴いて、すでに一本取られた気がしましたね。
山崎 ハモンドの標準装備にリバーブはなかったんですが、あえて入れてみたんです。ジョン・ロードなんかはこれを多用していたし、リバーブユニットをオルガンの中に仕込んだりする人も多かったらしいので。
昔のリバーブはスプリングの共振で残響効果を生んでいたんですけど、ショックを与えるとスプリングが内壁に当たって爆裂音が出るわけです。この音はスタジオにこもって、マーシャルのヘッドを蹴っ飛ばして録りました。さすがに貴重な実機を蹴っ飛ばすわけにはいかなかったので……。
――ところで笠谷さんとはどうやってお知り合いになったんですか?
山崎 僕は「iPhoneアプリで週末起業」(Amazon)という本を書いたんですけど、その取材ですね。
――笠谷さんは山崎さんに会ってどんな印象でしたか?
笠谷 取材を受けた時は、それほど変わった印象はなかったんですが、一緒に仕事をしてみて徐々に……。
――徐々に、なんでしょう?
笠谷 マニアックな人だということが分かってきて。
――ははは。笠谷さんはいま、おいくつでしたっけ?
笠谷 31歳です。
――じゃあなぜ爆裂音が必要なのかとか、ジョン・ロードがどうしたとか言われても分からないんじゃないですか?
笠谷 ディープ・パープルは知っていましたが、まさかあんなことをやっていたとは思わなかったですね。へえ、そうなんだって。山崎さんにあれを見ろこれを聴けと言われて、事前にいろいろと勉強しました。
――笠谷さんは「Pocket Guitar」がヒットした後に、それまで勤めていた会社を退職されているわけですが、この分野になにか勝算を感じているとか?
笠谷 アプリがヒットしたから辞めたというわけではないです。iPhoneアプリに限らず、時間を作って自由に開発がしたいというのと、うちの奥さんがクッキー屋さんを始めたので、それを手伝いたいということもあったんですよね。
――クッキーって、焼いて食べられるクッキーですよね?
笠谷 ははは。もちろん。
――どこかにお店を持つとか?
笠谷 今のところ展示会やイベントに出しているだけなんですが、そっちもそのうち考えるかもしれません。