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第4回 和歌山編

紀州塗500年の変遷とWebの可能性

漆器の「四大産地」紀州をWebで発展させるには?

2010年01月19日 00時00分更新

文● Web Professional編集部

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現在の紀州漆器とは

 シュロ産業から興った日用家庭用品産業と、根来塗に由来する漆器産業は、どちらも弘法大師にゆかりがある、海南市の地場産業である。

 そんな中で今、全国の漆器産業は中国製品におされ気味だ。市内の関連企業数は約160社あるが、年間出荷額は約120億円。角田氏によると、「漆器作家と言われる人はいるが、今では木製の本物と言われる商品を作れる漆器職人は少数になった」という。取材のために訪れた黒江ぬりもの館では「ここにあるものはカシュー塗が多いです」と言われた。

 が、しかし「漆器=輪島塗」と思っている人も多いが、紀州塗は普及品(特にお盆)として全国各地で販売され、また海外にも輸出されており、高級品とは一線を画す漆器として家庭で多く使われている。今、「日本文化が希薄になっており、漆器を使う人が少なくなった(親から子への継承)」(角田氏)「生まれてから死ぬまで」人生の節目には必ず漆器が登場することを知っている人が少なくなってきている。そんな中でいかに漆器を使って貰うか、黒江の漆器産業も手をこまねいているわけではなく個々の企業や組合が色々方策を考え取り組んでいる。たとえば今年で22回目となる「漆器まつり」(毎年11月開催)は盛況で、黒江の漆器産業をアピールする機会になっている。

紀州漆器協同組合青年部が2009年紀州漆器まつりのために制作した「紀州塗スクーター」
紀州漆器協同組合青年部が2009年紀州漆器まつりのために制作した「紀州塗スクーター」

 また、角田氏も、角田清兵衛商店として次のように取り組んでいる。2009年10月に国内生産の自社ブランド「seibee(せいべえ)」を立ち上げ、ネットショップ進出したのだ。

角田清兵衛商店のオリジナルブランド「seibee」。「MADE IN JAPAN」 の安心をお客様にお知らせすると共に、品質管理を企業の社会的責任(CSR)として可視化したトレードマークだ。マークは葉っぱがモチーフで、日本各地の技術を活かした漆器を、「現代の暮らしにあった形でプロデュースする」ブランドにするという。
角田清兵衛商店のオリジナルブランド「seibee」。「MADE IN JAPAN」 の安心をお客様にお知らせすると共に、品質管理を企業の社会的責任(CSR)として可視化したトレードマークだ。マークは葉っぱがモチーフで、日本各地の技術を活かした漆器を、「現代の暮らしにあった形でプロデュースする」ブランドにするという。

 角田氏が考える「seibee」のコンセプトは「愛着感」だ。「最近は中国製の漆器が増え、さらに漆器よりも扱いやすくて安価なプラスチック製品も増えています。便利な反面、物を大切に扱う『愛着を持つ』という感覚を製品に待たなくなったように思います。使い込むことで味の出る感覚。そんな愛着を持った器で食べる食事は、温かで、ずっと美味しいでしょう。手作りにこだわった本物の漆器だからこそ、そんな感覚を楽しめるはずです。『誰でも買える食器』に飽きた方にぜひ使って欲しい」という。

 漆器は英語で「japan」という。seibeeシリーズでは「180年近く漆器を見続けてきた漆器問屋だからこそできる『本物を見極める眼』で商品を開発」し、石川県加賀市の「山中漆器」を採用し、木地師は村井一彦氏、拭漆師は石川憲治氏を起用、材料は欅を使い高品質の国内産にこだわった。「seibeeシリーズに見られる漆独特のツヤは、漆器職人によるこだわりの技術だから表現できるんです。漆器にはあまり見られないシャープなライン。一見シルエット重視に見えますが、口に当たったり、指にかかったりする部分に注目していただければ、自然な表現に使いやすさが込められていることに気づくのではないでしょうか。また、白が基調になっている現代のインテリアにマッチするように、墨、茜、栗の3色を用意しています」と話す角田氏からは、角田清兵衛商店そして海南の漆器産業を盛り上げていきたいという気合いが感じられた。

 また、漆器はプラスチック製品に比べて手入れや保管が難しいと思われがちなので、お客様がいつまでも使い続けられるように業界初の新システム「SBS(seibee-satisfied)メンテナンスシステム」を開発・導入した。角田清兵衛商店の長年の経験を生かし、品質保証、修理、磨き直しなどを一貫した「安心」としてお客様に提供するという。

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