シングルコアのAthlon Neoは力不足か
X100eやEdgeから採用されたVision Proプラットフォームの性能も気になるところだ。X100eでは、AMDが2009年1月にAtom対抗として発表した省電力プロセッサーのAthlon Neo MV-40(1.60GHz)をCPUに、チップセットにはAMD M780Gを搭載する。Windows 7のエクスペリエンスインデックスは、総合値で「3.1」。総合値だけなら、Core 2 Duo搭載のCULVノートである「dynabook MX」(3.2)や、「Acer Aspire 1410」(3.2)と似ているが、細目に目をやると大違いなのがわかる。
CULVノートでは、グラフィックス/ゲーム用グラフィックスが最低の「3.2」で、プロセッサーは比較的高く「4.3」である。一方のX100eでは、最も低スコアなのがプロセッサーの「3.1」で、ゲーム用グラフィックスはむしろ高く「4.9」となっている。
X100eでCPUスコアが振るわないのは、CPUのMV-40がシングルコア/シングルスレッド処理のCPUだからだろう。タスクマネージャーでプロセッサー使用率を見ても、操作のたびに使用率が跳ね上がる。高負荷アプリケーション実行中にほかの操作をおこなうと、ひっかかりが気になることもあった。
一方、エクスペリエンスインデックスからも判るように、AMD M780Gが内蔵するGPU「Mobility Radeon HD 3200」の描画能力は、このクラスのモバイルノートとしてかなり優秀だ。HD動画の再生支援機能を持つこともあって、メディアプレイヤーでH.264 AVC動画を非常にスムーズに表示できている。もちろん、Windows Aeroの透明ユーザーインターフェース表示に何も問題なく、タスクバーでのサムネイル表示やウィンドウの移動など、どれもストレスなく動作していた。ただ、せっかくRadeon HD 3200があるのに、HDMI出力端子がないのは残念だ。
BTO選択での悩みどころはバッテリー?
モバイルノートとして気になるバッテリー駆動時間は、約5.3時間(約5時間)。ただしこれは、店頭販売モデルの標準6セルバッテリーでの値だ。付属ユーティリティー「省電力マネージャー3」の残り時間表示では、「パワー源最適化」設定を選び、バックライト輝度を最低にしたときに約5時間、同じモードでH.264動画再生中は約3時間程度と表示されていた。バックライトの輝度はバッテリー駆動時間にそれほど影響しないようだが、日常的に使うなら4時間程度と考えるとよさそうだ。なお、直販モデルでは3セルバッテリーが標準となっていて、その場合駆動時間は半減する。
このバッテリーの選択は、なかなか悩むポイントではなかろうか。デザインを考えるなら、本体にすっきり収まって液晶ディスプレーが180度開く3セルバッテリーを選びたいが、駆動時間が短い。6セルバッテリーの駆動時間は魅力的だが、本体背面に直径約2cmの黒い棒がくっついた不恰好さが気になる。
もっとも、直販サイトではどちらのバッテリーも単体で購入できる。3セルと6セルの両方を用意し、シーンに応じて使い分けるのもよいだろう。
直販サイトでのオンライン購入時にはほかにも、OS(Windows 7 Home Premium/Professional、Windows XP Professional)、カラーバリエーション(ブラック/レッド/ホワイト)、メモリーやHDD容量、英語/日本語キーボードなどが選択できる。最高構成では10万円以上となるが、最小構成では約6万円程度とネットブック並み。構成も柔軟で、モデル構成がほぼ固定化されていたIdeaPadと比較すると、かなりの自由度がある。
最後になるが、底板を外した状態も紹介しておく。7ヵ所のネジを外すと、底面のほぼ全面を覆うパネルを外すことができ、内蔵HDDやメモリースロットなどが露出する。そのため、内蔵コンポーネントへのアクセスは容易である。試用機は製品とは異なる構成であり、ワイヤレス通信モジュールが全部盛り(Bluetooth、無線LAN/WiMAX、WWAN)状態で、基板上にはSIMカードスロットも見える。
ただし、製品版で購入できるのは、今のところBluetoothと無線LAN(11b/g/n)のみとなっている。レノボに限らず、「SIMスロットは持っているが、日本向け製品では3G対応なし」というモバイルノートは昨今多い。ハードウェア設計がワールドワイドで共通化されているためだ。
今回は短期間の試用ではあったが、OSの起動・終了が高速になるという「Lenovo Enhanced Experience」によるWindows 7への最適化も実感することができた。全体を通しての印象は「X100eはよい意味でも悪い意味でも、やはりThinkPadだ」と言うものである。
エントリーユーザーにとってみれば、国内メーカーのCULVノートなどと比べてとっつきにくさもあるが、ThinkPadに慣れているなら必要な機能をコンパクトに、かつ低コストに集約したX100eの機微に気付くと思う。注文した筆者の場合は、多少ひいき目で見ていることは否めないのだが、とにかく、持ち歩いて仕事をしたくなるマシンである。
ThinkPad X100e(個人/SOHO向け) の主な仕様 | |
---|---|
CPU | Athlon Neo MV-40(1.6GHz) |
メモリー | 2GB |
グラフィックス | AMD M780Gチップセット内蔵 |
ディスプレー | 11.6型ワイド 1366×768ドット |
ストレージ | HDD 250GB |
無線通信機能 | IEEE 802.11b/g/n、Bluetooth 2.1 |
インターフェース | USB 2.0×3(うち1はPowered USB)、アナログRGB出力、10/100/1000BASE-T LANなど |
サイズ | 幅282×奥行き209×高さ26.5mm |
質量 | 約1.5kg |
バッテリー駆動時間 | 約5.3時間 |
OS | Windows 7 Home Premium 32bit版 |
価格 | 5万9850円 |
筆者紹介─池田圭一
月刊アスキー、Super ASCIIの編集を経てフリーの編集・ライターに。パソコン・ネットワーク・デジタルカメラなど雑誌・Web媒体への企画提供・執筆を行なう一方、天文や生物など科学分野の取材記事も手がける。理科好き大人向け雑誌「RikaTan」編集委員。デジイチ散歩で空と月と猫を撮る日常。近著は「失敗の科学」(技術評論社)、「光る生き物」(技術評論社)、「これだけは知っておきたい生きるための科学常識」(東京書籍)、「科学実験キット&グッズ大研究」(東京書籍)、「やっぱり安心水道水」(水道産業新聞社)など。
この連載の記事
-
第133回
PC
Skyrimも快適? GeForce内蔵Ultrabook ASUSTeK UX32VD -
第132回
PC
写真やゲームをより美しく見せるナナオの液晶 FS2333 -
第131回
PC
デジカメとスマホを手軽に連携する無線LAN SDカード FlashAir -
第130回
PC
無線とタッチで使い勝手が進化したペンタブレット Intuos5 -
第130回
PC
スレートPCをCore i7で蘇らせたオンキヨー TW3A-A31 -
第129回
PC
店頭モデルも4コアCPUに パワーアップしたLets'note B10 -
第129回
PC
小型でも強力GPU搭載のゲームPC Alienware X51を検証 -
第129回
PC
Ultrabookと一緒に持ち歩きたい 超小型マウス「Cube」 -
第129回
PC
14型のUltrabookはアリか? デザイン重視のENVY 14 SPECTRE -
第128回
PC
WiMAXモバイルルーターの決定版!? Aterm WM3600Rを試す -
第127回
デジタル
高速SSDで起動・復帰が速いUltrabook Aspire S3-951 - この連載の一覧へ