路上から始めた「まだ見ぬ誰か」への発信
―― 学校を卒業してからは?
津久井 学校でやっていた事の延長として、音楽を作る小集団、今で言うサークルを組んでいたんです。クリエイターが二人いて。プロの方の仕事も徐々に始めながら、ボーカルさんを立ててネット上で発表するという活動を。
―― それはmuzieとか?
津久井 いえ、自分のサイトを立ち上げて。でもそんなに広がらないんで。路上ライブをやっていました、溝の口とか川崎の駅で。2003年くらいですね。今と違ってYouTubeもなかった時代なので。
―― 今でもあの駅の通路でやっている人たちはいますけど、あんな感じで?
津久井 そう、まさにあんな感じです。バッテリー駆動のアンプを持っていって、CD-Rに焼いたものを手売りしたり。不特定多数に聴いてもらっても、多分いいと言ってくれる人はいるという自信はあった。だからネットに引き篭っているより、外に出ていかきゃダメだと。それで出した結論は、路上でやってみようと。
―― 比喩として「ネットは路上だ」という人は沢山いるけど、本当に路上でやってる人は珍しいですね。
津久井 僕に言わせてもらえれば「何年も前からやってるよ」という感じなんです。それで路上でやってもアマチュアぶらないと決めていたんです。嘘でもプロぶって。線を引いてお客さんと接しようと。
―― 「プロぶる」というのは、線を引くということ?
津久井 友達同士になっちゃダメなんです。音楽を評価しなくても来てくれちゃうから。それはネット上の活動でも同じなんじゃないかと思ってます。
―― ネット上で距離感を保つための手法は?
津久井 本名を名乗っていることじゃないですか。そのせいか、他の方はコラボしましょうという流れが自然にできるんですけど、そこも線を引かれちゃってる。プロなんだけど、音楽でお金を稼いだりしているけど、皆と同じだから。
―― そこは逆に線を引かないでくださいと。コラボと言えば「金星ミク」※1の応援ソングを上げてましたよね?
津久井 これで打ち上げが楽しみになったり、金星について興味を持ってもらえるかも知れない。結果的にそうなれば、ということですが、その可能性を否定することはないと思いました。ただ、最終的に金星に落下して、最終的に塵になるだけらしいんですけど。
―― でも、万が一、そこに金星人がいたら!?
津久井 それはもういいリアクションがもらえると思いますよ、金星人から。
※1 金星ミク : JAXAは金星探査機に載せるメッセージを2010年1月10日まで公募。集まったメッセージはアルミプレートに印刷されて探査機と共に金星周回軌道上に送られる。そのアルミプレートを1枚借り切って初音ミクの絵を載せようというプロジェクトのこと。詳細は宇宙研究航空開発機構による金星探査機「あかつき」メッセージキャンペーン、金星探査機「あかつき」に初音ミク絵を搭載するプロジェクト
この連載の記事
-
第164回
トピックス
より真空管らしい音になるーーNutubeの特性と開発者の制御に迫る -
第163回
トピックス
超小型ヘッドアンプ「MV50」のCLEANは21世紀の再発明だった -
第162回
トピックス
欲しい音を出すため――極小ヘッドアンプ「MV50」音色設定に見る秘密 -
第161回
トピックス
最大出力50Wのヘッドアンプ「MV50」は自宅やバンドで使えるのか? -
第160回
トピックス
新型真空管「Nutube」搭載ヘッドアンプのサウンドはなにが違う? -
第159回
トピックス
開発で大喧嘩、新型真空管「Nutube」搭載超小型ヘッドアンプ「MV50」のこだわりを聞く -
第158回
トピックス
唯一無二の音、日本人製作家の最高ギターを販売店はどう見る? -
第157回
トピックス
「レッド・スペシャルにないものを」日本人製作家が作った最高のギター -
第156回
トピックス
QUEENブライアン・メイのギターを日本人製作家が作るまで -
第155回
トピックス
QUEENブライアン・メイのギターは常識破りの連続だった -
第154回
トピックス
てあしくちびるは日本の音楽シーンを打破する先端的ポップだ - この連載の一覧へ