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Windows 7対応の裏側に見た国内ISVの秘めた実力 第5回

エムオーテックス「LanScope」

Silverlight 3採用UIで5年間の操作ログを数クリックで分析

2010年01月08日 15時00分更新

文● 塩田紳二

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Silverlight対応の新マネージャで
最長5年のログを効率的に管理・閲覧する

―― 同時にSilverlightにも対応されたとのことですが、どのように取り込んだのでしょう?

中本 Silverlightは、クライアント側ではなく、状況などを表示するマネージャ側で利用しています。マネージャには、専用コンソール(ソフトウェア)とWebブラウザーから利用する「Webコンソール」の2つのインターフェースを利用できるのですが、このWebコンソールにSilverlightを取り入れました。両者は機能面で完全に同一というわけではなく、細かい設定などは専用コンソールを使う必要があるのですが、日常的な管理や状況把握といった用途では、どこからでも利用できるWebコンソールが使えるようになっています。

Silverlight版のLanScope Cat6の画面

Silverlight版のLanScope Cat6の画面。グラフの一項目をクリックすると、その詳細情報へと切り替わる。原因の究明など、思考のドリルダウンに役立つUIだ

 Silverlightを使うことで、たとえばグラフを表示させながら、グラフをクリックするとさらに詳細な情報にシームレスに切り替わるといったユーザーインターフェースを実現できました。LanScopeでは、ネットワーク上で行なわれる操作を評価し、危険の度合いをグラフで示します。そのグラフが大きく変化したところが、何か危険な操作が行なわれたタイミングとなります。その部分をクリックすると、ログ情報から実際の操作内容が呼び出され、さらにその操作ログをクリックすると、実行したユーザー名が表示されるといった具合です。

 従来のWebコンソールは各種情報が個別に表示されていて、画面を切り替えて使うものでしたので、Silverlightでより便利なユーザーインターフェースを実現できました。

 また、従来バージョンはログの保存期間を最大90日にしていたのですが、利用者からもっと長期間のログを管理したいという要望があり、最大5年間に拡張しました。これも、Silverlightを採用したことで、「大量のデータにいかに簡単にアクセスするか」という問題を解決できたわけです。

 HTML表示だけでは限界があり、グラフを手軽に表示させたり、そこから要素をクリックして詳細データを表示するといったことは困難でした。ある意味、SilverlightはWebアプリケーションに新たな表現力を持ち込んだ新技術といえるでしょう。

―― Silverlightはどのバージョンを採用したのでしょうか? また、その部分の開発にはどれぐらい時間や工数がかかりましたか?

井上和馬氏

System Center システム技術2部課長の井上和馬氏

井上 SilverlightはVer.3ベースで開発しました。当初はVer.2で進めていたのですが、マイクロソフトから新バージョン(Ver.3)がまもなく出るという情報を受けて、Ver.3対応にしました。開発期間は4ヵ月ほどですが、Ver.3への対応には1ヵ月ぐらいしか要しませんでした。もともと大きく違うものではなかったので短期間で対応できたのです。

中本 我々のソフトウェアは、ログを記録し、分析して、いかに判りやすく表現するか、ということに力点を置いています。単純に危険な操作を禁止するだけなら分析の必要はないのですが、我々のソフトウェアは、前にも申し上げたとおり、状況を把握して危険な操作をユーザーに伝えることで、操作自体を自主的に抑止するのが狙いです。

 このため、どの操作が危険なのかを判断し、それを分かりやすく管理者に伝える必要があるわけです。最終的にはPCを使うユーザー自身が危険を理解することで、たとえば情報漏洩の防止になるわけです。

 このソフトウェアでは、管理者に状況を伝え、ユーザーには「危険な操作はチェックされている」という認識を持たせることが重要です。どちらかというと、「ダミーの監視カメラ」のようなコンセプトです。カメラが置いてあることで、犯罪を抑止できるというわけです。

 もちろん、マネージャで設定して「危険な操作」、たとえばUSBメモリーの利用を管理者側で禁止することもできます。ですが、単に禁止事項を増やすだけでは、ユーザーの使い勝手を悪くします。LanScopeでは禁止機能についても運用を重視しています。たとえば、個々のUSBメモリーのシリアル別に禁止することができます。また、管理者だけでなく、上長がUSBメモリーの利用を可能/不可能に変更できます。このような権限委譲により、原則禁止でも柔軟な運用が可能になります。

Webベースの管理画面

Webベースの管理画面によって、たとえば会議中にも管理・監視の目が行き届く

―― おそらく、設計時にはFlashやAjaxも比較検討されたと思いますが、Silverlightを採用した決め手はなんだったのでしょう?

井上 我々の使い方という点で評価したとき、業務用のアプリケーションには、Silverlightのほうが向いているという結果でした。Flash以外にAjaxも検討したのですが、見栄えや我々が求める直感的な監視機能を実現するにはSilverlightが向いているようでした。Flashは機能的に落ち着いている感じを受けましたが、Silverlightはもうしばらく機能が拡張されていく、そんな印象もありました。

―― Silverlightの実装で、どこに一番苦労されましたか?

井上 開発には「Expression Blend」を使ったのですが、ロジック設計よりもデザインに苦心しました。プロトタイプをいくつも作り、それで社内で評価していくのですが、たとえば、グラフや文字の色ひとつ取ってもいろいろな意見があり、そこをまとめていくのが大変でした。その点でも、これまでのWebアプリケーションのように「Webだからできない」というケースを考えずに済むようになったのが大きな違いです。かなりデスクトップアプリケーションに寄ってきた印象を強く受けました。

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