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2009年のインフラまわりを総括する

2009年を振り返りつつ、ドッテクを読み込みたい年末年始

2009年12月29日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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世界的な不況に覆われた2009年は、IT業界にとっても必ずしもハッピーな年とはいえなかった。しかし、クラウドを軸に、興味深い技術や製品もいくつも現れている。各分野での注目記事とともに、今年を振り返ってみよう。

クラウドに対する期待と課題

今年ほどいろんな取材をした年は過去なかったです。みなさんありがとうございました

 2009年はまさに「クラウド一色」であったといえよう。コンピュータリソースをネットワーク経由で利用するクラウドは、SaaSや仮想化、グリーンITなど数々のキーワードを飲み込み、1つの時代を築こうとしている。大手通信事業者が仮想化前提のクラウドサービスを次々発表し、アプライアンスベンダーも仮想化アプライアンスやクラウドとの連携を模索。サーバーベンダーやSIerは、まさに「箱売り」から「雲売り(ソリューション販売)」へと大きく舵を切った1年であった。

 とはいえ、個人的にはまだまだクラウドへの懸念は払拭できない。ネットワーク雑誌をやっていた担当からすると、遠距離にリソースがあるオーバーヘッドやセキュリティをどうしても考えてしまうのだ。レイヤは薄い方がよいし、CPUは近くにある方がオーバーヘッドは小さい。セキュリティに関しても、単にSSLだから安心、データセンターだから安全という話ではなく、もっと根本的な課題、たとえばパスワード漏れたらどうするんだとか、サービスがダウンしたり、情報が漏えいしたら責任はどうするとかがクリアになっていない。

 そもそもIT予算の捻出に苦労している中小企業の現状と、クラウドの描く未来のITの姿に、どうしても大きな溝を感じてしまうのは私だろうか? アウトソーシングに対する心理的な抵抗感も、なかなかぬぐい去れないようだ。こうしたいくつかの事情により、少なくともパブリッククラウドのほうは一気に普及する状況ではない。むしろ気になるのは、システムと組織の障壁を取り払い、IT効率化を実現するプライベートクラウドのほうだ。導入しやすく、わかりやすいプライベートクラウドこそ、次のITの形ではないだろうか? 

 一方でこうしたクラウドの基盤となるサーバー、ネットワーク、セキュリティといったインフラ技術は、すでに円熟しつつあり、変化に乏しかったのが正直なところだ。

 サーバーに関しては、Xeon 5500の登場により、完全にコモディティ化したといえる。「みんな高速、みんな仮想化、みんな省エネ」になり、多くのSIerの社長をして「もはやサーバーはどれを買っても同じ」といわしめる状況に至った。サーバー市場に参入したシスコも、その売りは汎用性だったりする。今後はサーバーを部品としたソリューションの展開力が大きな鍵となる。

 ネットワークの分野を見てみると、確かにノーテルの破綻やHPのスリーコム買収、WiMAXスタート、11nの標準化完了といった業界動向はあるものの、IPv6への移行はまったく進まず。ネットワーク製品に関しても、FCoE製品がぼちぼち出てきたくらいで、大きな動きはなかったようだ。ネットワークの総合イベントであった「Interop」も来年から運営がナノオプトメディアになり、商業色が薄まっていくようだが、果たしてどうなるだろうか? 

 次にセキュリティはどうだったか? 確かにIT全般の投資額が落ちても、なかなかセキュリティのレベルは落とせない。2009年も三菱UFJ証券やアリコなど、情報漏えいの話題には事欠かなかったこともあり、セキュリティの分野でも数多くの製品が登場した。個人的には特集でも取り扱ったUSBメモリー、メールの誤送信、データベースなどのセキュリティが注目すべき技術として挙げられると思う。

 ただ、セキュリティに関しては脅威というか、攻撃する側の事情によるので、なかなか読みづらい。情報漏えいにせよ、感染被害にせよ、表に出てくることは少なくなるだろう。既存の製品の限界が叫ばれるなか、ブレイクスルーは果たして登場するのだろうか?

クラウドの構成技術で進化した分野は?

 そして今年一番進化を遂げた分野はなにかと聞かれたら、「ストレージ」と答えるだろう。私がネットワークマガジンを担当したこともあって、ストレージの技術が新鮮だったというのもあるし、今年の後半にEMCのストレージ連載を掲出したという事情もある。それにしても、各社のストレージの技術や製品は、目を見張るモノがあった。

 データの増大と分散という課題は、間違いなく多くの管理者の目の前に横たわっている。データ量に合わせたストレージの拡張と分散化が引き起こす管理コストの増大。データ消失やシステムダウンのインパクトは年々大きくなるとともに、バックアップやリカバリ、障害対策の課題はますます管理者を悩ますことになる。この問題は、社内にNASが散在し、統合しきれない弊社でも直面している。

 これに対して、特にエンタープライズストレージの分野では、仮想化やシンプロビジョニング、重複除外、階層化管理など、多くのソフトウェア技術が惜しみなくつぎ込まれている。

 こうした背景には、ストレージの世界ではまだまだ決定版となる標準技術が少ないという点がある。すでに長い歴史を持つRAID1つとってみても、RAID0~5以外のRAID 0+1やRAID-Z、RAID-DPなどが存在するほか、RAIDを用いない独自のディスクアレイも存在する。インターフェイスやプロトコルも、Ethernet+IP、Infiniband、FibreChannel、iSCSIなどがあり、FCoEも新たに加わってきた。その他、ファイルシステムやストレージデバイス、クラスタリングなどの技術もいろいろ。コモディティ化しつくしていない、多様性がストレージ業界をますます面白くしている。まあ、その分製品はやはり高価なわけだが……。

 こうしたストレージ技術を幅広く取り上げているのが、クラウドコンピューティングはもちろん、GPGPUやAndroidなどエッジな技術をディープに扱ってきた「ASCII.technologies」だ。最新号の特集1では「クラウド時代を支える先端ストレージ完全網羅」と題し、ストレージを40ページ強というまた長大なボリュームで取り扱っている。おもに物理的な技術を中心に取り扱っているが、前号の特集1「最新ファイルシステムの機能と特徴」と合わせて読むことで、現在のストレージ技術はレイヤの高いところから一気にわかるのではないだろうか? 幅広いエンジニアやITスタッフに読んでもらいたいところだ……というか、読み込むしかないだろう!

■関連サイト

 本年もご愛読ありがとうございました。「情報システム」は1月5日より更新いたします。

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