12月24日、JPドメイン名の管理運用を行なっている日本レジストリサービス(JPRS)は、ドメイン名やDNSを中心に今年起こったインターネットに関する重大な出来事を独自の視点で解説した「ドメイン名重要ニュース」を発表した。この発表をから、2009年のドメイン名事情を振り返ってみよう。
今年の話題のトップは、「IDN ccTLDの導入プロセスが開始」
JPRSが話題のトップに持ってきたのは、IDN ccTLDの導入に関する話題である。IDNとは「Internationalized Domain Name(国際化ドメイン名)」の略で、ドメイン名に世界のさまざまな言語を扱えるようにするための技術のことだ。IDN技術を利用することで、英数字に限定されないドメイン名が利用できるようになる。
現状での国際化ドメイン名は、たとえば日本語JPドメイン名の「アスキー.jp」のようにセカンドレベルドメイン名(SLD)から利用できる。これをトップレベルドメイン名(TLD)から使えるようにしようという動きが加速している。この動きを強く牽引しているのが中国やアラブの国々で、今後はそれらの国別ドメイン名(ccTLD)からIDN ccTLDが導入されていくことになる。日本人にはアルファベットに対する抵抗感はほとんどないが、IDNを強く推進している国々ではそうではないからだ。
しかし、そうしたドメイン名は利用者の言語圏を限定するというデメリットも持つ。たとえば、日本語が表示できない環境で「.日本」を見ると、おそらく「.xn--wgv71a」と表示される。これでは、利用者に対して安心を与えることはまず無理だろう。中国の言葉やアラブの言葉で作られたドメイン名も同様である。
また、これは推測だが、たとえば「.asia」のIDNは「.アジア」ではなく、おそらく中国語でアジアを意味する文字が使われると考えられる。そうなると、多くの日本人には馴染みのないドメイン名になるのではないだろうか。ここで重要なのは、IDNは利用者を選ぶということである。
現在、世界のドメイン名はgTLDで20(インターネットインフラで使われる.arpaを除く)、ccTLDで250強もの数が存在する。これらのドメイン名にすべてIDNを導入すると一挙に倍になり、合計600近くにもなる。こうなると、個々のドメイン名について理解していくのはほぼ不可能だろう。
JPドメイン名は世界でもっとも安全
そこで気になるのが、ドメイン名が持つ信頼性ということになる。話題の2番目、「.jp」が世界でもっとも安全なccTLDと評価されるは、JPRS的には一番でもおかしくないが、それは客観性を重視した結果であろう。しかし、これは日本の利用者にとっても重要な話題である。
順位 | ニュース |
---|---|
1位 | IDN ccTLDの導入プロセスが開始 |
2位 | 「.jp」が世界で最も安全なccTLDと評価される |
3位 | DNSのセキュリティ向上を図る「DNSSEC」導入が世界的潮流に |
4位 | 次世代のDNSサーバソフトウェア「BIND 10」開発開始 |
5位 | ICANNと米国政府の関係が新たな段階に |
もっとも安全というのは、コンピュータセキュリティ会社のマカフィーによる「危険なWebサイトの世界分布」という調査報告書の結果だ。一般にはあまり認知されていないようだが、ドメイン名はドメイン名ごとに管理会社が異なり、そこで運用されるルールも異なるという事実がある。
大雑把に傾向をいってしまうと、売り上げを優先し、安価な設定でろくな審査もせずに登録可能な運用をしているTLDほど危険だということだ。ある意味、これは当然の帰結で、フィッシングのような犯罪行為を行なおうという人々は、足がつかなくて、安上がりに済むほうが便利だからだ。
危険度の高いドメインを使っていると、その利用者まで信頼性が低いと見られる可能性がある。したがって、単に手軽で安価だからという理由でドメインを選ぶと、安心・安全に向かっているインターネット上で無意味に信頼を失いかねないというリスクを背負うことになるかもしれない。今後、ドメイン名を選ぶ際には、そうした点も重要な判断材料になっていくと考えられる。
5番目のICANNと米国政府の関係が新たな段階には、インターネットのドメイン名やIPアドレスといった資源の運用や調整を国際的に行なう組織であるICANNが、米国政府の管理下から独立するといった話題である。ICANNの目標の1つにTLDを増やすという方針があるので、今後はTLDのさらなる増加があるかもしれない。いずれにしても、インターネットにおけるドメイン名の動きには関心を持っておいたほうがよいだろう。
(次ページ、「より高い安全を実現するための動きが加速」に続く)
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