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2010年、Web業界のキーワードはコレだ! (2/4)

2009年12月25日 10時00分更新

文●ロフトワーク(http://www.loftwork.jp)

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2010年に進展するのはプロダクトの「サービス化」

諏訪社長

ロフトワーク代表取締役社長の諏訪光洋氏

諏訪 2010年は、サービス化が進展するでしょう。SaaSは、2009年ずいぶん進んだと思いますが、2010年はプロダクトもどんどんサービス化していくと思います。

中野 「プロダクトがサービス化する」とは?

諏訪 ものを買うことが減り、サービスを買う形になる。さまざまなプロダクトがコモディティ化しているので、所有の意味がなくなってくる。たとえばトヨタのプリウスがものすごく売れている。そうすると、どのプリウスに乗っても違いはないので、所有しなくてもかまわないと考える。このようなカーシェアリングが増えてきているのも、サービス化だと思うんです。所有のリーダーだったOLの皆さんも、ブランド製のバッグを月単位で借りる人が増えてきている。

IT の場合、社内でメールのシステムを立ち上げるとき、以前ならMicrosoftのExchangeのライセンスやサーバーを用意するので、初期費用で 1500万円くらい使ってましたが、いまなら「Google Appsでいい」となります。これもサービス化です。企業が動画配信を始める際にも以前なら「サーバーとインフラを準備」から始めましたが、今は YouTubeなど既存のサービスを活用する事がほとんどです。Web業界ではいち早く「サービス化」が進んでいますし、これからは他の分野でももっと増えてくると思います。

中野 Web業界で進んだ「所有から共有へ」の流れが、現実の世界にも延長されてくる、みたいなことですね。

諏訪 ええ。サービス化が進むときには、Webのインターフェイスが重要です。新しいサービスの申し込みのほとんどはWebかモバイル経由ですから、Web業界の人にとっても面白いキーワードになると思います。

中野 「ものの持ち方の形態が変わる」というところから、新しいビジネスができますね。

諏訪 以前なら、ソニーのウオークマンを、プロダクトとして買い、カセットを入れ替えて使っていました。でもiPodはコモディティ化し、iTunesと一緒になったサービスとして購入します。さまざまな分野でサービス化が進み、そこにビジネスチャンスを見つける人が増えてくるのではないかと思います。

中野 そこで使われるのはクラウドといっていいのでしょうか?

諏訪 はい。クラウドは立ち上げが早く、必要な部分だけ所有できます。今やWebを中心にシステムが高度になり、マネジメントも洗練されてきています。「集約して、分割して、売る」ことができるのは大きなメリットですね。

中野 もしかすると景気回復も、サービス化がポイントになるかもしれませんね。Webが便利なので、古いものを昔のスタイルでは使う人はいませんが、そういう古いものでも、うまくWebに載せ換えたら、「やはり便利だ!」と利用されるようになる。

諏訪 「米をサービス化するとどうなるだろう」「タイヤをサービス化したらどうなるだろう」そういう視点で新しいビジネスをつくってみる。サービス化から新しいビジネスが生まれ、景気が回復してくればおもいしろいのではないかと思います。その中でWeb業界にいた人の役割が果たせる役割は大きいと思います。Webのサービスの見せ方、CRM、情報の公開など、ユーザーとのコミュニケーションがサービス化モデルの成否を分けるでしょうね。僕が今独立するなら制作業界や広告業界というレッドオーシャンではなく、そういう「全くサービス化されていないプロダクト」をウェブやモバイルを使ってサービス化する事を考えます。

中野 2010年1月1日から、検索エンジンのキャッシュが国内で合法化されますね。かつて日本の電機メーカーも、 1995~1997年ぐらいまでは、自前の検索エンジンを公開していました。2010年は、以前とは違う形になるでしょうが、新しくまた、国内から検索エンジンが出てくることを期待しています。

諏訪 そのニーズは高いと思いますね。

中野 Google的な考え方は、キーワードに対して「どのくらい合致しますか?」という観点で情報をスコアリングします。しかし世の中はそれだけではない。ものを売っているところでは、何らかの価値観に基づいて、商品が並んでいるわけです。新聞なら分野ごとに大きなネタ順で記事が並んでいるし、ユニクロなら色やサイズで、ワインなら産地とかビンテージで分けられています。それぞれの業界で、それぞれ違った分類方法や、価値の付け方があります。そういうサーチエンジンとは別のところで培ってきた並べ方や分類の仕方を、ITに置き換えていけばおもしろいと思うんです。「業界別のサーチエンジン」が登場してもいいのではないかと思っています。

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