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四本淑三の「ミュージック・ギークス!」第11回

ソロデビュー20周年記念・平沢進ロングインタビュー【後編】

平沢進が語る、音楽の新しいスタンダード

2009年12月26日 12時00分更新

文● 四本淑三

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上手く行っているのは「フリーウェア」に見えるから

平沢 というのもネット上でのバリューが獲得できたからですよ。

―― それで驚くのは、平沢さんが今の若い子に知名度があることですよ。テレビよりニコニコ動画を見ているような層は、いろんな人のカバーやMAD動画なんかを通じて知るみたい。すっかり「ヒラサワ」がネットに根づいたというか。

平沢 それはおそらく「平沢を商材としてガッチリ押さえている機構」が私の背後に見えないからでしょう。ここはある意味ポイントです。音楽の「資本主義と相容れない性質」をある程度、体現できているということです。このポイントは私と観客とのコミュニケーションの「通路」だと思っています。それを嗅ぎとったユーザーがガンガン平沢を素材にする。そこから先は黙認ですよ。……あっ。



▲ニコニコ動画に投稿された、平沢進氏の「ハルディン・ホテル」ボーカロイドカバー曲。制作は人気のボーカロイド作家・ぶっちぎりP。現在16万再生

―― って、そんなこと言っていいんですか。

平沢 もう言ってしまったので。でもこの暗黙の了解は質の高いコミュニケーションですよ。ここでユーザーが悪意を持てばそれは崩壊します。現在の絶妙なバランスには、しばしば私も驚きますよ。加藤賢崇氏が「自分は観客として、80年代のP-MODELは観客が育てたという自負がある」と言っていたけど、今ネットの中でそれがまた起こっているようですね。

 平沢は「管理された商品」に見える一方で「フリーウエア」にも見えるという矛盾。ここにそういう現象の芽があると思えますね。

加藤賢崇(かとう けんそう) : 80年代の先鋭的ギャグユニット「ラジカル・ガジベリビンバ・システム」の一員として活動。漫画「いぬちゃん」や声優としての仕事でも知られる、サブカル界やテクノシーンともつながりの深いマルチタレント。

―― でも、それは狙ってはできないですよ。

DVDは公式サイトから購入可能。最新作は2008年11月の東京キネマ倶楽部ライブを収録した「PHONON 2551 VISION」

平沢 そういう質感を持たなけりゃいけないんだよね、ミュージシャンは。だって知ってる? 私のDVDってコピープロテクトしてないんですよ。……あっ。

―― ってまたそんな。今の書いてもいいんですか、もう。

平沢 だってコピーはするでしょ? 私はリスナーっぽいんだね。自分をリスナーが扱いたいように扱っていることを、人は嗅ぎとるんだと思う。

―― そういえばニコニコ生放送とかUstreamとかにご興味は? 馬の骨の一員として、ちょっと観てみたい気も。

平沢 何をしたらいいの?

―― うーん、制作中の様子を生放送とか。

平沢 そこが難しいところで、実体がないままに私のイメージが暴走しているわけでしょ? そこに実体が出てきたら、私だったらシラケるな。ヒラサワが怒るかも知れないし、怒らないかも知れない。そういうギリギリのところで成り立っている何かがあるような気がする。そこにヘラヘラと実体が出て行ったら、緊張感が壊れて彼らの創作意欲が萎えてしまうかも知れないでしょ。

―― そんなヒラサワは見たくないってヤツですね。確かに難しいなあ。

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