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PCだけでは終わらない ATOKが描くIMEの将来像

2009年12月25日 12時00分更新

文● 松本淳

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iPhoneで使える「ATOKアプリ」、登場はまだ?

佐藤 Google日本語入力の登場でにわかに注目を浴びていますが、実はまだインターネットのそれもコア層が取り上げているにとどまっていると感じています。一般の人たちはIMEの存在やそれを選べることさえ認識していません。そこには歯がゆさもありますね。

―― そういう意味では、一般層にもシェアを拡げつつあるiPhoneへの対応への期待は高く、それがきっかけになるのではないでしょうか?

佐藤 そうですね。すでに「まだ出ないのか?」というお叱りの声をいただいています(笑)。

iPhone版は、登場を待望するユーザーから「お叱りの声」まで受けているという

佐藤 iPhone上でパソコンと同じようなユーザーエクスペリエンスを提供しようとすると、なかなかハードルも高いのですが、別のアプローチでATOKの変換精度を活用してもらうこともできるのではないかと、様々な提供方法の可能性を考えているところです。

―― それはかなり期待が持てそうですね。

佐藤 パソコンの話に戻りますが、ATOKのユーザーさんには大きく2つの層があります。1つは古くからATOKを愛用していてその資産を活かしたいという方たち、もう1つはこれは最近のユーザーさんに多いのですが、電子辞書などを参照しながら日本語入力をしたいという方たちです。

井内 私も用例はよく調べますね。ある言い回しに続けるのに良い表現を入力中に調べながら文章を打ったりしています。

佐藤 実際のところATOKの購入者の約4割は電子辞書のついたプレミアム版を選んでいます。IMEというよりも統合的な日本語入力ソリューションを求めていることの現れなのかも知れません。

「翻訳ブレイン 実用翻訳2」。価格は9240円(税込)

―― ATOK 2010 プレミアム版では8ヵ国語ウェブ翻訳機能も搭載されます。Twitterの人気もあり、海外の人ともやり取りが増える際に役に立ちそうです。

井内 2011年5月までの期間限定ではありますが、弊社からリリースしている翻訳ブレインでもともと提携があったクロスランゲージさんのウェブと連携したサービスとなります。オンラインであれば、入力した日本語の文字列の変換結果を得ることができるというものです。

佐藤 オフラインでも利用したい、あるいは外国語を日本語に翻訳したい場合は「翻訳ブレイン 実用翻訳2」をおすすめします。


これからは「1本8400円」と「月額300円」が両立する時代に

―― 広い意味での信頼性や新機能に対するユーザーの期待もありつつも、これはソフト業界全体に言えることですが、無償で提供されるGoogle日本語入力に対して、有料パッケージは不利ではないでしょうか?

佐藤 確かに、すでに開発予定を明らかにしたAndroid版ATOKについてもどのような価格戦略で臨むかについて議論を重ねているところです。もともと無償で提供されるOSに対して提供するアプリケーションの価格がどうあるべきなのか。

―― 1つの考え方としては最近iPhoneのアプリでよく見られるようになった、アプリ自体は無料で提供して、付加サービスを有料とする方法も有効ではないでしょうか。たとえば辞書を追加する場合にはそれを有料とする、といったような?

佐藤 まだなんとも言えませんが、そういう選択肢もあり得ると考えています。パソコンの分野でも月額300円の定額制は好評です。かつてはパッケージでしかソフトウェアは売れないというのが当たり前でしたが、ずいぶんユーザーさんの意識も含めて変わってきました。ビジネスの観点からは、体験版や定額でソフトを提供することが、ユーザーの裾野を拡げることができるので全体としてはプラスです。そういった販売方法や決済手段なども大切で、クリアしなければならない課題は多いのです。

著者紹介――松本淳

 ネットベンチャー、出版社、広告代理店などを経て、現在は東京大学大学院情報学環修士課程に在籍。ネットコミュニティやデジタルコンテンツのビジネス展開を研究しながら、IT方面の取材・コラム執筆、映像コンテンツのプロデュース活動を行なっている。デジタルハリウッド大学院デジタルコンテンツマネジメント修士。著書に「できるポケット+Gmail」など。公式サイト 松本淳PM事務所[ampm]

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