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PCだけでは終わらない ATOKが描くIMEの将来像

2009年12月25日 12時00分更新

文● 松本淳

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個人だけではなく、法人向けのソリューションも

―― Google日本語入力はかなり絞り込んだ設計も相まって、動作速度が軽快に感じられます。ATOK 2010はいかがでしょうか?

竹原 変換精度を上げるということは、それだけ計算処理が多くなりますので、処理速度が下がってしまいます。しかし、Windows 7が、かなり動作が機敏になったということもあり、ATOK 2010ではプログラムを全面的に見直しました。

 特にプログラム全体をUnicode化した結果、プログラム内での文字列の受け渡しの際、文字種を変換する必要がなくなりました。その結果、約10%の処理速度の向上に成功しています。「今度のATOKは速い」と思っていただいて良いと思います(笑)。

―― インターネットからもう少し範囲を狭めたイントラネット、特定業種などの分野についてお伺いします。同じ会社の中でしか通用しない用語など、集合知からは辞書を生成しづらく、けれども特定のメンバーの中では登場頻度が高い言葉もありそうです。

ATOKビジネスソリューションの概念図(http://www.justsystems.com/jp/services/abs/product/images/index04.jpg より)

佐藤 「ATOKビジネスソリューション」がそれに対する答えになるかと思います。個々のパソコンにインストールされたATOKをクライアントと見立て、サーバーから辞書を配信する仕組みです。

 校正支援ソフト「Just Right!」もその共通辞書を参照することで、ドキュメントの用語統一もできます。たとえばジャストシステム社内では、社員の氏名で変換をかけると、メールアドレスや内線番号なども参照できるようになっているんですよ。

 変換効率はそのまま業務効率に直結します。「便利なことが、不便になる」というパラドックスに陥ることもビジネスの現場では起きますが、ATOKでは各種設定やソリューションパッケージによって、それを制御することもできるのが一つの強みです。

 制御という意味では、先ほど竹原も説明したUnicode対応が各所で進んでいますが、一方ではまだShift-JISの環境で統一している企業もあります。「Unicode環境でしか表示できない文字列を、そもそも変換候補に表示させないようにする」といった制御ができるのもATOKならではと言えます。社内専用の外字を変換対象として運用している例もあります。


ネットの「集合知」を最適化し、「個」に対する製品を提供

―― 「インターネットユーザーが使いやすい」という状態が必ずしも、「個々のユーザーにとって使いやすい」わけではない、と言えそうですね。

佐藤 実際、個々の嗜好や目的は様々ですが、ネットの集合知を最適化し、個に向けた製品として提供するのが、ATOKのミッションと考えています。

―― 個々への最適化がATOKの存在意義ということになるのでしょうか?

井内 最終目的ではありません。最も大切なのは「辞書の洗練」です。

竹原 使う人にとってノイズが増える場合もあるので、ATOKは「語彙が増えるほどいい」という方針をとっていません。簡単に辞書を切り替えられるので、用途にあった語彙を使うことが出来ます。

ATOK監修委員会は、座長に作家・評論家の紀田順一郎氏を迎え、辞書学者の鳥飼浩二氏ら4名を委員として監修にあたっている

佐藤 辞書を切り替えて使える、というのが我々の一つの答えと言えるかも知れません。

―― 確かに、ある一人のユーザーの1日の生活を考えても、日中は会社で専門用語の辞書を頻繁に使い、帰宅後オフタイムはカジュアルな辞書でくつろぐ、というスタイルをATOKで完結できるということにもなりますね。

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