SSDの特徴を生かすTrim機能
デフラグの自動実行停止はSSDのために用意された仕様だが、あくまで既存機能をオフにするだけで、SSDを生かして快適さを高めるものではない。Windows 7でSSDのために追加された機能としては、Trim機能のサポートがある。
Trim機能の説明をする前に、SSDの仕組みを簡単におさらいしておこう。SSDはフラッシュメモリーを記録メディアとして、ストレージデバイスを構成している。フラッシュメモリーはHDDとはまったく異なる半導体メモリーのため、磁気ディスクを回転して、記録するといったメカニカルな部分はない。そのため衝撃に強かったり、低電力で動作するというメリットがある。
フラッシュメモリーはデータの書き込み方が、HDDと異なる。フラッシュメモリーはデータを書き込むのに、「いったん消去してから、書き込む」という2段階の作業が必要になるのだ。パソコン用のストレージに使われるNAND型フラッシュメモリーは、複数のメモリーセルをひとつの配線(ビット線)に接続して作られている。そのため、NAND型フラッシュメモリーでは1bitごとの書き込みや読み出しができない。読み書きはページという単位でおこなわれるが、消去はページが複数集まったブロックという単位で行なわれる(ページやブロックの大きさは、使用されているフラッシュメモリーによって異なる)。
例えば、ページサイズが2KB、ブロックサイズが256KBというフラッシュメモリーの場合は、1bitでもデータを書き換える場合は、1ブロック(256KB)をいったんSSD内部のどこかにコピーして、次にフラッシュメモリーの1ブロックを消去して、その後データを再度書き込むことになる。そのため、SSD内部では、頻繁にデータの消去と書き込みが行なわれることになる。
フラッシュメモリーは電圧をかけて、データを書いたり消去するため、書き込みのたびに半導体が劣化していく。これが、フラッシュメモリーの寿命につながる。SSDのコントローラーは、同じメモリーセルが頻繁に使用されないように、全体を平準化して利用している。書き込みや消去の回数が制限されているため、特定のセルに書き換えや消去が集中すれば、その部分の寿命が早くきてしまう。そこでコントローラーが、平均的にセルを使うよう配慮することで、一部のセルだけが突出して使われないように管理しているわけだ。
こうした機能はSSD上のコントローラーが管理しているため、今までのOSはまったく関与していない。Trim機能は、OSがSSDの管理に少し関わっていこうというものだ。HDDの場合、OSがファイルの削除をリクエストするとすぐに削除される。しかしTrim機能に対応したWindows 7とSSDの組み合わせでは、SSD上のデータをすぐに消去・書き換えせずに、いったんメインメモリー上にそのブロックを取り込み、SSD上のブロックは消去しておく。
メインメモリー上に取り込まれたブロックは、どれだけデータが書き換えられても、SSDの寿命には関係ない。そしてブロック単位の変更が終了したら、実際にSSDに書き込む。つまりWindows 7のTrim機能では、細かなデータの書き換えはまとめてメインメモリー上で処理して、SSDへの書き込みはブロック単位で行なう。これによりSSDの寿命も延びることになる。
消去・書き換えに時間がかかるフラッシュメモリーにとって、書き換え回数が少なくなれば、全体として処理時間が少なくなる。つまり、パソコン全体の処理性能向上にもつながる。
現在、いくつかのSSDがTrim機能をサポートしている。例えば、高速性能で名高いインテルのSSD「Intel X25-M」は、12月に入ってTrim対応の修正版ファームウェアが提供開始された(それ以前に提供されたものには問題があった)。またインテル以外のメーカーでも、Windows 7のリリースに合わせるようにTrim対応のファームウェアをリリースしている。
しかし、Trim機能だけでSSDが効率よく利用できるわけではない。将来的にはSSDを前提としたファイルシステムを、Windows OSがサポートする必要があるだろう。また、SSD側でもコントローラーの強化により、まだまだパフォーマンスは上げられる。実際、OS側のTrim機能を使用しなくても、コントローラー内部でTrimと同じ機能サポートしているSSDも登場している。Windows OSでのSSDサポートは、Windows 7でまだ一歩を踏み出しただけだ。今後も大きく進化していくだろう。
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