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もはやサービス統合しても遅くならない!

UCもWLANも統合!可能性の塊「Cisco ISR G2」を探る

2009年12月14日 09時00分更新

文● 大谷イビサ/TECH.ASCII.jp

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「IOS」ユニバーサル化の意義

 そして、ソフトウェアであるIOSも最新の15.0(1)Mが搭載された。もとよりシスコのIOSはソフトウェアの安定版と最新機能を含んだフューチャーセットから、特定の顧客向けのカスタマイズ版まで非常に数多くのバージョンがある。2003年頃からこれらのIOSが統一する方向になり、「ISR以前で48あったフューチャーセットが、ISR G1で8に、さらにISR G2では4つにまで集約されました。そしてISR G2ではこの4つがユニバーサルイメージとしてまとめて収納され、ライセンスによってそれぞれアクティブになります」(本田氏)とかなり統合された。

現在とISR G2でのIOSソフトウェアのパッケージの違い

 ちなみにIOSは長らく12.xというバージョンで開発が進められていたが、一気に15.0まで上がったことになる(12系の最終版は12.4(T))。13.xや14.xがない理由については、西洋(13)・東洋(14)でそれぞれ不幸な数字だからといわれている。西洋だけではないのが、グローバル企業シスコらしい。

 ルーターのソフトウェアとしては円熟しきっているIOSだけに、基本機能での追加は少ない。15.0(1)MではBGPやOSPFのGraceful Restartの改良やBFD(Bidirection Forwarding Detection)の強化、ビデオや音声管理のためにRSVPの機能拡張などが施されている。1つの大きな試みは、15.0(1)Mから搭載されたService Advertisement Framework(SAF)という仕組み。これはEIGRPの技術を使い、ネットワークでサービス同士を結びつける仕組みを提供する。たとえば、ネットワークで呼制御サーバーの追加・削除した場合に、自動的にどこにつなげばよいかを発見するといったことが可能になる。ここらへんも未知数ながら、今後の拡張が楽しみな仕組みだ。

ルーターにx86サーバーを搭載する

 さて、今回のISR G2で特に注目したいのが、x86のサーバー自体をモジュールとして搭載できる「Cisco SRE(Services Ready Engine」であろう。

左がシングルコアCPU搭載のISMで、右がデュアルコアCPU搭載のSM

 冒頭に述べたとおり、さまざまなサービスを統合するのがISRのそもそもの役割だが、「ISR G1のときはモジュールとソフトウェアが一体化していたので、新しいサービスを導入する場合はハードウェアごと買い換えだったんです。しかし、ISR G2になってからは両者が完全に分離されました。統一したプラットフォーム上に、シスコやサードパーティのソフトウェアを自由に載せ替えられます」(本田氏)というのが大きい。リモートでのインストール・アンインストールも可能になったため、ソフトウェアをダイナミックに取り替えられる。新しいビジネスの可能性を感じさせる。

シスコのサービスを使ったり、サードパーティのアプリがSRE上に載せられる

ブランチオフィスに対して遠隔からサービスをインストールできる

 現在は1つのSREに対して、1つのソフトウェアだが、将来的にはハイパーバイザやWindowsサーバーなども載ってくる予定となっている。こうなるともはやブレードサーバーの自由度に近い。

ルーターから始まった「可能性の塊」

 さて、ISR G2の特徴をひとしきり見てきたが、シスコとして狙うのは、やはりインターフェイスやサービスの一層の統合化である。ISR G1のときもその実力は十分持ち合わせていたが、正直ISR G1のときはセキュリティ統合にとどまっていた。「ISR G2であれば、UC(Unified Communication)やワイヤレス(WLANや3G HSPA)、あとはAXP上のサービス統合が進むと見込んでいます。今のような経済状況だからこそコストを下げながら、サービスをリッチに展開できるISR G2の真価が発揮されます。ITインフラをアグレッシブに使っていただきた方にお勧めしたいです」と本田氏は統合によるメリットの高さをアピールする。

 確かにITのインフラはすごい勢いでデータセンターに集約されているが、一方でブランチオフィスからサーバーやネットワーク機器、セキュリティ装置、PBXなどを引きはがすのは難しいのも事実だ。であれば、拠点に必ず設置されるルーターにさまざまなサービスを載せ、管理を容易にするという選択肢はきわめて有効といえる。これがISR G1で提唱された「エンパワードブランチ」の発想だ。

 だが、実際問題としてサービスを複数動かすのは、パフォーマンスへの懸念もあるし、コストや管理の問題もあった。また、サードパーティのアプリケーション統合に関しても、ビジネスに結びつかなければ、なかなか進まない。

高いパフォーマンスを誇るミッドレンジモデルの「2911」の実機の前面とSM・ISM

 その点、ISR G2ではまず底力を持った潤沢なハードウェアを用意した。「ISR G2になってプロセッサも強化され、MGFのようなサービス統合に負荷をかけない仕組みを提供できました。ISMやSM自体も余裕のあるパワーを持っているので、 サービスを複数動かすような使い方が現実的になります」(佐藤氏)。また、リモートでの操作性も強化され、SREの提供や仮想化への対応により投資の有効活用も実現した。

 このように「可能性の塊」であるISR G2を活用する素地は整った。あとはサードパーティやSIerを育て、サービス統合を推進する仕組みを作るだけだ。ネットワーク最大手のシスコは、その力を持ち合わせている。

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