42型の液晶テレビが6500円!?
深センで見かけた、部品をつけて現場で作られるIT系製品は、ネットブック、携帯電話、そして液晶モニター、液晶テレビがあった。携帯電話はGSM形式なので日本では使えないので紹介は控えるとして、続いて液晶テレビの価格をチェックしよう。
42型の液晶テレビを例に出すと、ASCII.jp価格比較での最安値はバイデザインのハイビジョン液晶テレビが10万円をきる9万4418円。一方中国での価格はどうかと、淘宝網と阿里巴巴で「42寸液晶電視」(42型液晶テレビにあたる中国語)で検索してみた。
記事掲載当初、誤った写真を掲載しておりました。お詫びして訂正いたします(2009年12月8日)
淘宝網では、最安値は1320元(約1万7100円)からで、日本円にして2万円台のものがメーカー製のものを含めゴロゴロある。これだけでも驚きだが、阿里巴巴で同様にチェックすると、1個だけの購入はできないという前提だが、なんと最安値は580元(約7540円)から。42型の液晶テレビを購入しても1万円でお釣りがきてしまうのだ。ネットブックで免疫ができても、やはり驚愕の結果だった。
携帯電話の山寨機はまだ携帯電話を持っていない貧しい農村部の人々に受け入れられた。山寨機の拠点となる深センでは、海外への輸出も視野に入れている。そしてその深センでは、次のステップとしてか、ノンブランドのネットブックと液晶テレビ専門のフロアが市場にできている。中国ひいては途上国市場でこうした山寨機のネットブックや液晶テレビが普及する可能性がある。
中国では山寨機の急速な普及に対して、通信キャリアが携帯電話の利用料金をある程度前払いすることで端末を無料で提供するキャンペーンを行ない、メーカー製ローエンドモデルが生き残った。mp3プレーヤーは携帯電話の前に山寨機が多数登場し、ゲームもできる「プレイステーション・ポータブル」や、持てばステータスとなる「iPhone」や「iPod」を除いて、メーカー製のものはほとんど売れなくなってしまった。
山寨機の登場まで最も低価格でローエンドで付加価値のない機種ばかりのラインナップを擁した中国地場メーカーは、小さなメーカーから次々と淘汰された。山寨機のネットブックや液晶テレビが中国全土に普及するというストーリーになった場合、中国市場や途上国でひねりのないメーカーの製品は売れなくなるだろう。
中国のテレビメーカーを中心に、さらなる価格競争に巻き込まれ、相当なシェアを減らす可能性がある。今中国のテレビメーカーはネットもできるテレビなど付加価値をつけるのに躍起になっている。それはやがて来る山寨機対策のためもあるかもしれない。
山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター。中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強い。統計に頼らず現地人の目線で取材する手法で,一般ユーザーにもわかりやすいルポが好評。当サイト内で、ブログ「中国リアルIT事情」も絶賛更新中。最新著作は「新しい中国人~ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)

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