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検索データベースとの連携で最強のIMEとなるか?

Google日本語入力が描くIMEの未来像とは?

2009年12月04日 11時20分更新

文● 松本淳

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本当の意味での変換精度の向上はこれからに期待?

 かつてATOKのコマーシャルで「入れた手のお茶」という誤変換事例が紹介されていたのを覚えているだろうか? もちろん正しくは「入れたてのお茶」「煎れたてのお茶」などである。

 残念ながら、Google日本語入力で「いれたてのおちゃ」を変換すると「入れた手のお茶」となってしまう。これは変換精度が悪いわけではなく、コマーシャルで一世を風靡した文面であるため、サジェスト候補として上がってきてしまっている可能性もあると考えられる。クラウド型の変換エンジンでは世の中に広まってしまった誤用を使ってしまうリスクは残っていると言えるだろう。

 一方で、「にゅーそ」まで入力すると「ニュー速」がサジェストされてきたり、最近話題を集めている「蓮舫議員」も、こちらでは「れん」まで入力すれば真っ先に候補に現れる。まさに、ネットの「いま」に基づいた入力メソッドというわけだ。

 Google日本語入力の開発者のひとりは「もしかして……」機能の担当者だったという。

 「もしかして」機能では、誤った入力内容から、正しい候補を選ぶ作業が日々繰り返されている訳だが、それは、Googleに対して正しい候補が何かを、私たちが教えていることでもある。

 ただ、あまりにも「いま」を切り取ってくるサジェストは、ビジネスの現場では不都合があることもあるだろう。そういった場合には用意されている「シークレットモード」を有効にすれば、最低限の候補しか表示されなくなるので安心だ。


使う世代の変化が、パソコン向け入力メソッドに波を

 これまでのIMEは、基本的に1文(または複数の文節)を一気に打ち込むことで、変換精度を上げる点に力が注がれてきた。しかし、Google日本語入力はそんな従来のIMEとは基本的に違うパラダイムを提示しているように見える。

 それどころか、文節ごとの係り受けや文節区切りといった変換精度を高めるために重要とされてきた機能すら、そもそも想定していないと言ってしまうのは乱暴だろうか?

 タブキーを使って、どんどん推測変換を繰り出していく入力スタイルは、ある意味、携帯電話の感覚に近い。これまでのパソコンの日本語入力とはずいぶんと異なる操作感だ。直近に入力した履歴は当然のように学習されるので、頻繁に使用する単語や表現も気軽に呼び出せる。よりカジュアルな使い方が可能になる。

 推測変換自体は、ATOKなどほかの日本語IMEでも実現されているが、ブラウザーのアドレスバー上でURLが自動的に補完されていくように違和感なく使える点は大きな魅力だ。

 Google日本語入力は極めてネット的なIMEに感じる。ネット的なIMEである理由としては、まず辞書がネットの力で強化されている点、ネットに深く親しんだ若年層が慣れ親しんだケータイ的なインターフェースを持っている点が挙げられる。そして無料であることのインパクトも大きい。ユーザーが気軽に試し、一気に広がる可能性を秘めているからだ。実際、登場した当日にネットでは話題が広がり、すでにさまざまな情報交換が始まっている。そういう意味でもネット的なIMEと言える。

 これまで日本語入力の市場はWindows標準のMS-IME(Macで言えばことえり)と、精度向上に多大な努力を払い、定額制や企業向けネットワーク辞書共有システムの提供など様々な努力を払ってきたジャストシステムのATOKに二分されてきた。Google日本語入力の登場は、こうしたIME市場にどんな刺激を与えるのだろうか? できれば日本語入力環境の発展につながってほしいものだと思う。

松本淳

 ネットベンチャー、出版社、広告代理店などを経て、現在は東京大学大学院情報学環修士課程に在籍。ネットコミュニティやデジタルコンテンツのビジネス展開を研究しながら、IT方面の取材・コラム執筆、映像コンテンツのプロデュース活動を行っている。デジタルハリウッド大学院デジタルコンテンツマネジメント修士。著書に「できるポケット+Gmail」など。公式サイト 松本淳PM事務所[ampm]

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