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西田 宗千佳のBeyond the Mobile 第37回

ポメラの新機種「DM20」の「プレミアム」とはなにか?

2009年12月04日 12時00分更新

文● 西田 宗千佳

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目玉機能「QRコード連携」は実用性に疑問

 最後に残る大きな新機能は、「QRコード対応」だ。ポメラはUSBマスストレージクラスに対応しており、USBケーブルでパソコンに接続してファイルをやりとりすることで、編集結果をパソコンなどで活用できた。また、microSDカード経由で受け渡すこともできる。この点はDM10もDM20も変わりない。

microSDカードスロットも継承

パソコンとのデータ交換用に使えるmicroSDカードスロットも継承

 だが携帯電話など、特にiPhoneのようにmicroSDカードスロットを持たない機器と、連携するのが難しいのが弱点だった。そこでDM20では、編集中のテキスト文書(最大3200文字)をQRコードに変換し、画像として携帯電話へ送り込む機能が搭載された。

DM20でテキストをQRコードとして表示

DM20でテキストをQRコードとして表示した画面。長い文章は複数のQRコードに分割される

 実際に、iPhoneでQRコードリーダーアプリ「QuickMark」を使って読み取ってみたが、きちんと文字化できた。

QuickMarkを使い、QRコードを読み取ってみた

iPhone用QRコードリーダー「QuickMark」を使い、QRコードを読み取ってみた。きちんとテキストになっている

 まるでコロンブスの卵のような面白い機能ではあるが、実用性はと言えば、正直疑問である。

 QRコードは1単位で最大200文字までしか入れられないため、3200文字の文書を読み取る場合には、16回に分割して読み取る必要がある。しかも、大量の文字を埋め込んだ「大きく細かい」QRコードは、読み取りエラーの確率も高まる。事実iPhone 3GSでは、最大まで文字を入れたQRコードの読み取りを、頻繁に失敗した。

 しかも、読み取った文字は200字ずつ、携帯電話上でメーラーやメモソフトなどにコピーしてやる必要がある。そうなると、ポメラの操作性を生かしたテキスト、すなわち数百字よりは長いテキストを携帯電話に送ろうとすると、相当の作業時間が必要になる、ということになるわけだ。

 この機能がちょうどいいのは、Twitterのつぶやき程度か、百数十文字までのテキスト転送ということになる。その程度なら、さすがに携帯で打った方が速かろう。

 おそらく開発側も、この機能を「常時転送に使ってもらう」ために用意しているのではなく、「どうしても緊急に文書を送らねばならないが、QRコード以外に転送方法がない」場合を想定しているのではないだろうか。緊急避難的に時々使う、という前提ならば、こういった内容でもOKだろう。できないよりはできるに越したことはないからだ。

 そろそろまとめに入ろう。DM20は、非常に「正当」な進化を遂げた製品と言える。高機能化はしているが、DM10が持っていた特質は決して揺らいでいない。残念なのはDM10に比べて価格が高くなった点だが(DM10は2万7300円、DM20は3万4650円)、こういった使い方のできる「唯一無二」の製品であり、納得できる範囲の価格アップだと思う。

 ここまできたら、もっと「テキストを書く機械」としての洗練を目指してほしい。本当ならば縦書きでの編集機能も欲しいし、類義語辞書を呼び出す機能があるとなおうれしい。だが、これらの機能はマシンパワーを必要とするので、すぐには搭載されないだろう。

 DM20は、多くの人が「テキスト作成」に求める機能をきちんと搭載し、DM10以上に良いバランスの製品に仕上がっている、と言ってよさそうだ。


オススメする人
・即座に、いつでも使えるメモマシンが欲しい人
・DM10の編集機能に「窮屈さ」を感じていた人
ポメラ DM20 の主なスペック
CPU 非公開
メモリー 1ファイル/2万8000字を最大1000ファイル
ディスプレー 5型 640×480ドット モノクロ
サイズ 幅145×奥行き100×高さ33mm(折りたたみ時)
重量 約370g
バッテリー 単4形アルカリ乾電池×2 または単4形エネループ×2、コイン電池CR2032×1
バッテリー駆動時間 約20時間
対応OS(PCリンク時) Windows 7/Vista(Enterpriseのぞく)/XP 32bitのみ
価格 3万4650円

筆者紹介─西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、アエラ、週刊東洋経済、月刊宝島、PCfan、YOMIURI PC、AVWatch、マイコミジャーナルなどに寄稿するほか、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)、「クラウド・コンピューティング ウェブ2.0の先にくるもの」「クラウド・コンピューティング仕事術」(朝日新聞出版)。


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