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池田信夫の「サイバーリバタリアン」第95回

IT産業を救うのは「賢い消費者」だ

2009年12月02日 12時00分更新

文● 池田信夫/経済学者

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業者に食い物にされていることに気づかない役所

 行政刷新会議の事業仕分けをきっかけとして始まったスパコン騒動で、日本の役所が1200億円もの予算をいかに無造作に使っているかが明らかになった。刷新会議の議事録には、こういうやりとりもある。

仕分け人 (NECと日立が)撤退するときに、これは1154億で18年度から24年まで開発するときに、契約を組まれていると思いますが、何らかの撤退条項というのは入れていましたか。

文科省 そのような形では入れておりませんでした。

仕分け人 そうすると、これまで国費でお渡ししていた部分は今後どうなっていくんでしょうか。

文科省 あとは損害賠償の問題と考えております。

 驚いたことに、1200億円もの業務委託契約に違約金の条項がないため、これまでNECと日立に払った数百億円の税金は、国が損害賠償訴訟を起こさないと返ってこないのだ。そういう契約がなければ、訴訟を起こしても勝てるかどうかはわからない。ここに今回のプロジェクトが官民のなれあいで決まった事情が象徴されている。

 また「アメリカのスパコンのほうが安く買えるんじゃないか」という仕分け人の質問に、文科省は「ハードウェアを作る技術と、それに相まってソフトウェアを開発する技術がカップルで動く」ので、ハードウェアをもっていないとソフトウェアも開発できないと説明した。それなら自前のハードウェア・メーカーをもっていない欧州の研究機関は、研究ができないのだろうか。

 このようにハードウェア・メーカーが談合で受注して、その機種でしか使えないカスタム・ソフトウェアで役所を囲い込み、いつまでも高価な機材やソフトウェアで食い物にするITゼネコン構造が、日本では長く続いてきた。今度の事件で初めて、1200億円という価格がいかに国際価格とかけ離れているかを知って、文科省の官僚は驚いているそうだ。他人の金だから、気楽なものである。

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