Windows 7対応の裏側に見た国内ISVの秘めた実力 第3回
ネオジャパン「desknet's iCheck」
最新グループウェアはWebとオンプレミスのいいとこ取り
2009年12月03日 10時00分更新
Windows 7にいち早く対応したアプリケーションの開発について、メーカーに直接聞く開発者インタビュー連載。第3回は、Webブラウザーで日々のワークフローや連絡、情報共有などを実現するグループウェア「desknet's Ver.7」のネオジャパンに聞いた。
同社はWindows 7のリリースの少し前(2009年9月)に、無料のデスクトップクライアントツール「desknet's iCheck」をリリースしている。Webブラウザー型が主流のグループウェアを、あえてデスクトップに「回帰」させた理由とは?
インタビューに応じてもらったのは、マーケティング統括部プロダクトマーケティング担当執行役員部長の中沢 仁氏とマーケティング統括部プロダクトマーケティング担当の山田志貴氏(以下敬称略)。
Windows 7対応の必要は特になかった「desknet's Ver.7」
―― クライアントツールの前に、まずdesknet's本体について教えてください。

マーケティング統括部プロダクトマーケティング担当執行役員部長の中沢 仁氏
中沢 今年1月にリリースされた「desknet's Ver.7」が最新版となります。ポータル機能を強化したのが特徴で、Webサイトのさまざまな情報を、スケジュールなどのグループウェア情報と同様にポータル上に一覧表示して、情報の集約性を高めました。
ポータルサイトの概念や利便性はだいぶ普及してきましたが、大企業だけでなく中小企業の方にも安価に環境を構築して頂けるようになりました。また、インターネットで公開されている各種ガジェットも登録できるようにしています。
―― desknet's Ver.7そのもののWindows 7対応はいかがですか?
中沢 特に必要はありませんでした。もともとWindows VistaとInternet Explorer 7の組み合わせをターゲットに開発していたのですが、互換性には問題ありませんでした。ただ、(Windows 7の発売より前に)Internet Explorer 8のリリースに合わせた調整は加えています。具体的にはAjaxやJavaScriptに対応するため、リビジョンアップを行ないました。
山田 機能面での追加は特にありませんが、IE8になったことで(IE7と比べて)動きがきびきびした印象を強く受けます。desknet'sをIE8に最適化したわけではないので、IEそのもののパフォーマンスが上がったのだろうと。これは体感できるほどの違いです。
iCheckの開発当初はAIRの採用も考えていた!?
―― iCheckはいつ頃から開発を始めたのでしょうか?
中沢 2009年の第1四半期(1~3月)でした。社内的にWPF(Windows Presentation Foundation)への関心が高まっていたことがきっかけです。当初はAIR(Adobe Integrated Runtime)も考えていて、リッチコンテンツのサンプルを社内でいくつか試してみて、これはすごいと思いました。そこでAdobe Flexの開発環境などを調べてみたのですが、ビジネスとしてサポートを含めた体制を作るときにAIRでは若干不安がありました。今年1月時点でも情報が海外にしかなかったり、ビジネスアプリが少なかったりといったこともあり、結果的にWPFを選択することになりました。WPFの情報に関しては、マイクロソフトとのパートナーシップを活用して提供いただきました。また、マイクロソフトのエバンジェリスト・井戸氏に支援していただけたため、開発はスムーズに進みました。
山田 それ以前から、Webブラウザー以外で情報の新着が分かるようなツールが欲しいという声がユーザーさんからも届いていました。単純にポップアップを出すだけのアプリならすぐに作れたし、そういうソフトもあるのですが、それでは利便性向上にはなりませんよね。
新着情報の内容確認や返信といった――われわれは“簡単(シンプル)な作業”と言っていますが――その一連の操作をツール上でこなすことで、最終的に業務の効率化が図れる、作業時間の短縮につながる、ということをテーマに開発しました。実際に使われたお客様からも、「そこまで(iCheckだけで)できちゃうんだね」と喜んで頂いています。
―― iCheckでは、スケジュールの閲覧・追加・変更、メールの閲覧・返信など多くの機能が盛り込まれていますが、開発に当たって苦労された点はどこですか?
中沢 今回はデザインとプログラム開発を分けて進めたのですが、両者のすりあわせに苦労しました。WPFの開発スタイルそのものには問題ないと聞いていますが、デザイナーの仕上げた内容に対して、ビジネスロジックを作っている者が、最終的にはデザインを自分で変更して作ったというところがありました。本来は役割を分けて進めるべきところなのですが。
デザイナーもユーザーの利便性を考えてデザインしたはずですが、次回以降は上流工程から綿密にすりあわせて、情報を整理していけば生産性もあがると思うのですが。なにぶん、いままでそういう手法でやってこなかったので、今回はその点、手探り状態で苦労しましたね。
従来HTML(Webベースのクライアント)の画面を設計するデザイナーですから、WPFベースのクライアントアプリとは動きが違うんですね。紙芝居的に1ページずつ表示を切り替えていくHTMLではなく、クライアントアプリは連続した操作に合わせた画面変更が求められますよね。ビジネスロジックを作る方は「(ユーザーの操作に合わせて)画面がこう動いていくだろう」と理解しているのですが、デザイナーはどうしてもHTML的に考えていたようで、WPFで用意されているコントロール(画面に動きを付けるライブラリー)をあまり使わなかったり、と。
そのあたり、ロジックを書いているほうが先に理解して、「このほうがいいよ」と手直したこともありました。デザイナーにはHTML的な考えにとらわれるのではなく、次の世代(リッチクライアント時代)の新しいインターフェースを考えていってほしいですね。
―― 開発ツールは何を使われたのですか?
中沢 デザイナーは「Blend」(編集部注:Microsoft Expression Studioに含まれるUIデザインツール)だけで作ったと言っています。扱えるフォントの種類をもっと増やしてほしいな、という注文はありましたが、Blendそのものの使い勝手は高く評価していました。
―― iCheckは、当初からWindows 7をターゲットに作られたのでしょうか?
中沢 いえ、Windows Vistaをターゲットに開発しました。Windows 7での動作検証はセルフテストツールを使ったのですが、結果としてはまるで面白みがないくらい(笑)、当社としては何もWindows 7用に改良したところがないんです。簡単にロゴが取得できました。

マーケティング統括部プロダクトマーケティング担当の山田志貴氏
山田 (iCheckにおける)Windows 7が登場したメリットは、.NET Frameworkのランタイムが標準搭載されていることですね。お客様の環境やセキュリティーポリシーによっては、自分でランタイムを入れることが難しいというケースも多いんです。「これを入れてトラブルでないの?」「ほかのアプリが動かなくなっちゃうんじゃない?」などと心配される声も聞かれます。その点でWindows 7が.NET Framework(3.5.1)を標準搭載したことで、こちらとしても気兼ねなくWPF対応のアプリケーションが提供できるようになったし、今後はマネージドコード(編集部注:.NET FrameworkなどのCommon Language Runtime環境で実行されるプログラムコード)を開発していけると実感しています。
中沢 先日ご訪問したお客様のところもそうなのですが、今動作しているPC環境を変えたくない、という思いは強いですね。なので、Windows 7が本格普及するのは来年になると思いますが、一日も早く普及してもらいたいと思っています。

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